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社労士にとっての「給与計算業務」を受託するメリットとは

うちの事務所ではお客様の給与計算の代行業務も受けています。

開業当初は、期日に縛られる給与計算はなるべく受けたくないなと考えていましたが、実際には想像以上に依頼が多かったため今は毎月数十社の給与計算業務を受託しています。

当初はあまり乗り気ではなかった給与計算業務ですが、実際に仕事を受けてみると顧問先の給与計算業務を受託することは社労士事務所にとってもメリットが大きいことが分かってきました。

これから社労士事務所を開業される方のご参考になればと思います。


メリット①労働時間制を正しく理解し、実務に落とし込むことに慣れる

社労士試験で勉強した「一年単位の変形労働同時間制」「一か月単位の変形労働時間制」「フレックスタイム制」。

制度を導入するにはどのような手続きの必要があって、法定外労働時間はどの部分が該当するか、必死に覚えたのではないでしょうか。

ところが、いざ社労士としてこの変形労働時間制に向き合うと、試験で得た知識をどのように実務に落とし込んでいくのかを結びつけるのが非常に難しいのです(少なくとも私はそうでした)。

給与計算をしていれば、一年単位の変形労働時間制を採用している顧問先の残業時間の抽出、年途中退職者の残業代精算、変形カレンダーの組み方など変形労働時間制の仕組みを実務に落とし込んでいく作業がおのずと必要になります。

変形労働時間制への理解が深まりますし、一社対応ができればその他の会社にも変形労働時間制の導入を提案できるようになります。


もっと基本的なところで言うと、「法定休日」「所定休日」「休日振替」「代替休日」など、法的な制約がある休日のルールに加え、会社が独自で設定している休日ルールを整理し、規則に沿って給与計算に反映していくことになります。

このように労働法の規定を実務に落とし込んでいく過程を経験することができますので、特に実務経験なしで開業された社労士にとって給与計算代行業務は本当に勉強になることばかりだと思っています。


メリット②従業員の属性を覚えられる

顧問社労士として、顧問先にはどんな年齢層の従業員がいるのか、誰がどんな働き方をしているのかはおおまかに頭に入れておきたい情報だと思います。

毎月給与計算をしていると、誰がどのような属性なのかはだんだんと覚えてくるものです。

そうなると、顧問先からの労務相談があった時に「ああ、もう入社してだいぶん長いあの人ですね」とか、「こないだパートから正社員になったあの人ですね」とか、「そろそろあの人定年ですね」など、大まかな属性と名前が頭にすぐに浮かんでくるようになります。

さすがに従業員さんのお顔までは存じ上げないですが、このような大まかな属性が頭に入っていることで、労務相談もスムーズに進みます。

おそらく、データとして従業員さんの基本情報を持っているだけでは、このように名前を聞いて属性をぱっと頭に浮かべるということは難しいのではないかと思います。

もちろん、その属性情報が社労士にどれほど重要か?という議論はあるかもしれません。
私の場合は、顧問先にとって「従業員の名前を出してもすぐに分かってくれる」という関係性の社労士になりたかったので、とりあえずはこの方針でいっています。


メリット③残業手当の正しい計算方法や社会保険料・税金の仕組みを知れる

社労士として、顧問先に未払賃金がないかどうかは必ず確認をしておきたい事項の一つだと思います。
給与計算をしていると、自分が勤怠と残業代を把握しているためその点では安心感があります。

自社で給与計算を行っている状態を確認させていただくと、割増賃金を支給すべき時間が抽出できていなかったり、残業の基礎となる割増単価が正しく計算できていなかったり、割増率が誤っていたり何かしら誤りがあるものです。

現時点では何も問題がなかったとしても、何かの拍子にトラブルが表面化ししないよう、給与計算を適正な状態に整えることは顧問社労士にとっても会社にとっても大きな安心です。

また若干余談ではありますが、社労士試験では勉強しない源泉所得税や住民税の仕組みも給与計算を通して知ることになり、知識の引き出しが一気に増えたというメリットを感じたことは言うまでもありません。


メリット④長時間労働などの労務リスクを早期発見できる

給与計算をするときは必ずその月の勤怠を確認しますから、「今月この人残業多かったですよ」とか、「36協定の上限の時間ギリギリでしたよ」とかいった情報を社労士が把握できることになります。

そうすると、社労士側から「健康診断勧めてみましょうか」とか「残業が多くなっている原因は何でしょうね。何かシステム化機械化で解決できることであれば助成金も案内できます」とか、色々と提案するきっかけにもつながっていきます。

さらには、「今月はこの人欠勤が多かったですが、どうなさったんですか」などと声をかけると「この人ちょっと辞めそうで・・」なんて話に繋がったりもします。
そうすると「何かこの人と揉めているのかな」となり、詳しくお話を聞いてトラブルを未然防止するために早めに手を打つことだってできます。

このように、給与計算で得られる情報から顧問先のお客様の隠れた労務リスクを察知できるということも、社労士が給与計算業務を受託することの大きなメリットです。


メリット⑤顧問契約を切られにくくなる。単価上げにつながる。

最後は少し経営的な目線でのメリットです。

正直なところ、社労士と顧問契約を締結していただいていたとしてもすべての会社が毎月何らか相談事項が発生する、ということもありません(もちろん毎月社労士に相談してくださる会社もあります)。

組織として安定している会社であれば、毎月人の入れ替わりがあるとも限りませんし、そうすると「社労士に毎月何かしてもらっているわけではないけど、顧問料だけかかってしまう」という気持ちをお客様に持たせてしまいかねません。

忙しい経営者は、社労士側からの不急・不要のコンタクトを求めていないという方もいたり、せいぜい改正情報や助成金、人事労務ニュースなどを配信する程度になってしまうこともあります。
私はこういった状況がどうにも居心地が悪く感じてしまうのです。

そういう時、給与計算を受託していれば少なくとも月に一度は会社とコンタクトをとることが出来ますし、少なくとも「何もやってもらっていない」と不満に思われる状況を回避することができます。

実際、ルーティーン業務である給与計算業務を受託することで顧問契約を切られにくくなるというメリットは、数年開業社労士をやっている私としてはすごく感じているところです。


また、うちの事務所は給与計算については基本的に社労士顧問のオプションとしてお受けしていますので、単純に契約の入り口で顧問料の単価アップにつながります。

顧問料を高く設定するより、どうしてもマンパワーが必要な給与計算業務をセットにして総額が高くなるほうが、お客様の立場からしても納得感はあるのかなと思っています。

結果的に業務量はさほど多くはなかったというお客様には後々値引きをさせていただくなど柔軟に価格調整をしながら、互いに納得感のある契約体系を整えていくようにしています。


給与計算業務は、一度受託すると毎月の業務が確実に増えるある意味リスクの高い業務です。
しかし同時に、開業社労士が顧問先のお客様のことを深く理解するために非常に重要な業務でもあります。
ご参考いただければ幸いです。