訪問看護│ベッドの下の女の子
こんにちは。
訪問看護をしている看護師です。
私はさまざまな疾患を持つ利用者さんのお宅へ訪問していますが、その中にはパーキンソン病の方もおられます。
パーキンソン病とは、脳の神経伝達物質であるドーパミンが減少することで、体の動きに関わる神経回路がうまく働かなくなる進行性の神経疾患です。
パーキンソン病は、お薬のコントロールがとても難しい疾患で、その影響もあり幻視が現れることがあります。
幻視とは、実際には存在しないものが見えてしまう症状で、他の人には見えないものがはっきりと見えています。
幻視が見られた場合は主治医へ報告し、内服薬や貼り薬の量を調整していただきます。
ただ、お薬を減らすと今度は体が動かしにくくなってしまうため、内服コントロールは簡単ではありません。
しかも、同じ量のお薬でも、その日の体調によって効果が変わることも珍しくありません。
これまで、たくさんの利用者さんからさまざまな幻視のお話を聞いてきました。
「ネコがいる。」
「おじさんが立っている。」
「飛行機が飛んでいる。」
「小人が歩いている。」 等々
先日、理学療法士が私と一緒に担当しているパーキンソン病の利用者さんを訪問した時のお話です。
利用者さんが使用しているベッドサイドの床に、パンとりんご、牛乳を乗せたトレイが置いてあったので「どうしてそこに置いているんですか?」そう尋ねると、利用者さんはこう答えたそうです。
「ベッドの下に女の子がいるから。」
その話を聞いた理学療法士は、怖くてベッドの下を覗けなかったそうです。
幻視はレビー小体型認知症でも見られる症状として知られていますが、その利用者さんには認知症はありません。
次は私が訪問する曜日でした。
理学療法士の話が気になっていた私は、利用者さんのお宅へ伺いベッドの下が気になりつつも、いつものようにケアを終えました。
昼間なのになんとなく怖い雰囲気がありましたが、まさか実際に女の子がいるはずありません。
もしかしたら女の子の人形が置いてあるかも知れないなんて想像しながら恐る恐るベッドの下を覗いてみました。
すると、ベッドの下には女の子が!
白いブラウスと赤いワンピースを着た、おかっぱ頭の女の子が!
ベッドの下の女の子は床とベッドの狭いすき間に寝転んだまま、こちらをゆっくり振り向いたあと…
私と目が合う。
たぶん3歳くらい。
やはりベッドの下に女の子が
ベッドの下には女の子が…
ベッドの下には女の子がいま…
いませんでしたー
すみません。
「ゴチ」のピタリ賞の羽鳥さんのマネをしてみました。
やっぱりベッドの下には誰もいませんでした。
ベッドの下は段ボールや小さな箱で埋め尽くされていて、女の子が入れるようなスペースはまったくありませんでした。
ベッドの下に空間があれば、「そこにいるように感じるのかな」と想像できますが、隙間すらない場所に女の子を想像するのはちょっと難しいように感じました。
それが幻視なので、私の想像を超えてきます。
その利用者さんは女の子だけではなく、ネコやおじさんも見えていて、「気持ち悪い」や「怖い」とおっしゃっていました。
でも、今回は食事を用意したくなるほどのリアルでかわいい女の子が現実に存在しているように見えていたのだと思います。
幻視がどのような内容になるのかは、脳の働きだけではなく、その人の記憶や感情も影響しているのかもしれません。
本当のところは分かりませんが、そう考えると、毎日好きなことや楽しいことを思い浮かべて過ごす時間も大切なのかもしれません。
現在、iPS細胞を用いたパーキンソン病の治療は臨床研究が進められており、実用化への期待が高まっています。
一日も早くより良い治療が広まり、利用者さんが少しでも楽に生活できるようになることを願っています。
