武器輸出解禁:扉を開けることと、売れることは別の話だ
艦船は例外かもしれない。でも、ほかはどうなのか?
防衛装備移転三原則の改定で賛否が荒れている。
けれど、僕がまず気になるのは賛成か反対かではない。
そもそも日本に、海外に売って回せる防衛装備と、その後を支える産業基盤がどれだけあるのか、という現実の話だ。
今回の改定を肯定的に見る人も多い。
安全保障環境が厳しくなる中で、日本もようやく現実を見た、という言い方もできるだろう。
それ自体は分かる。僕も、防衛装備の海外移転という発想そのものを頭ごなしに否定したいわけではない。
ただ、そこで話を止めると、かなり雑になる。
法の扉を開けることと、実際に装備を売って回せることは別だからだ。
高市政権がここを意図的に混同しているのか、あるいは本気で同じだと思っているのかは分からない。
だが、今回の改定にはどうしてもそこへの違和感が残る。
もちろん、まったく勝ち筋がないわけではない。
艦船には、少ないながらも実績があり、例外的に広げていける余地はあると思う。
造船という分野では日本にはまだ強みがあるし、アメリカの造船・整備能力の不足を考えれば、日本がそこに食い込む余地もあるだろう。
豪州向けの案件などは、その意味で今後を占う試金石になるはずだ。
でも、だからといって全体が見えるわけではない。
むしろ厄介なのは、その艦船という例外があるせいで、全体まで何となく行けそうに見えてしまうことだ。
実際には、艦船以外の分野になるほど、整備、補修、部品供給、訓練、技術移転、そして長期的な運用支援のハードルは一気に上がる。
兵器は、売って終わりの商品ではない。
納めたあと、ちゃんと回り続けることまで含めて商品だ。
艦船でも受注は成功ではない。
ここを履き違えると、かなり危うい。
契約を取った。
それは確かに一歩だ。
だが本当に問われるのはその先だ。
納期を守れるのか。
現地生産や技術移転を回せるのか。
補修やアップデートを詰まらせずに継続できるのか。
使う側にとって、本当に扱いやすい装備として定着するのか。
そこまで行って、初めて実績になる。
逆に言えば、受注だけ先に積み上げて、あとで支えきれなくなれば、それは単なる失敗では済まない。
「日本は制度は変えたが、売った後を回せない国だ」という印象が残る。
それは一案件の不採算より、ずっと痛い。
期待を持った相手国も失望するし、日本企業も防衛輸出は結局政治の打ち上げ花火だと見て、長期投資をためらうようになるだろう。
受注=成功ではない事例として、兵器ではないが象徴的なのはMRJ計画の失敗だろう。
多くの受注と期待を集めながら、納期の延期を繰り返し、最終的には計画は頓挫した。
これが日本の航空産業の信用を大きく毀損したことは、日本の兵器移転が簡単ではないことを考える際の参考になるだろう。
仮に今回の改定が、日本経済や安全保障にとって方向としては正しいのだとしても、実態の伴わない看板先行はむしろ長期的にはマイナスではないか。
僕はそこがいちばん気になる。
要するに、今回問うべきなのは、武器輸出に賛成か反対かという話だけではない。
高市政権は本当に、どの分野を、どの順番で、どう育て、どう支えるのかというロードマップを持っているのか。
工程表と補助線のある戦略としてこれをやっているのか。
それとも、支持層を喜ばせるために大きなアドバルーンを上げただけなのか。
沖ノ鳥島でのレアアースの試掘成功の件など、高市政権には、可能性の段階にある話を、あたかも実現が目前であるかのように大きく見せる癖がある。
今回の改定にも、同じ種の政治的演出が混じっていないかという疑念は拭えない。
たしかに艦船には例外的な可能性がある。
そこまではいい。
だが、例外があることは、全体が成り立つことの証明にはならない。
今回の改定を見ていると、どうしても後者に見えてしまう。
もし本当に中身があるのなら、政権はまず看板ではなく、工程表を見せるべきだ。
そうでなければ、これは国家戦略というより、少し派手な政治的身振りにすぎない。
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