つなぎの美学丨毎週ショートショート note
部室。
古い机の上にジェンガの塔が、異様に安定して立っている。
窓から春の柔らかい光が差し込み、桜の花びらが時々舞い込んでくる。
二人が向かい合って座り、交互にブロックを抜いている。
つむぎ
(塔をじっと見つめて)
「高校野球始まるな」
心春
「1点をもぎ取る試合展開が、私は好きです。」
つむぎ
「バントと足で繋ぐ機動力野球やな」
(少し間)
「……これ、なかなか崩れへんな、
こんなことある?」
心春
「高校野球と同じです」
つむぎ
「どこがやねん」
心春
「無理に崩さず、繋いでいく」
つむぎ
「ジェンガやぞ
積み木やぞ?」
心春
「はい」
つむぎ
「崩すゲームや」
心春
「……崩れませんよ」
つむぎ
「なんでや」
心春
「ボンドで止めてます」

つむぎ、ポンと手を叩き、
「それは崩れへんな!
ディズニーキャストの笑顔と身だしなみみたいやな!
…ってアホ!
ジェンガで夢守るな!」
心春
「せっかく二人で
積み上げたものを崩すのは
忍びないです」
つむぎ
「ゲーム否定すな!!」
心春
「野球も同じ?」
つむぎ
「違う!!」
心春
「つなぎの美学?」
つむぎ
「まだ言うてる!!」
(塔は微動だにせず、静止したまま。)
つむぎ
「……もうええわ。
今日の勝負は心春の勝ちや」
(暗転。
ジェンガの塔は、部室の片隅にそのまま残っている)
(513字)
今回参加させていただいたのは
田原さんのこちらの企画です。
