文徳高校 狂騒曲:ストロベリー色のアイツー毎週ショートショート
文徳の春はやかましい。
ピンクで大渋滞だ。
入学式。
初々しい新入生が坂を上り、
文徳の門をくぐる。
校庭には大きな桜が植えられ、
新しい文徳生を迎えてくれる。
文徳の制服は、
鮮やかなタータン柄のスカートもさることながら、
ストロベリー色の甘いセーターが最大の推しポイントだ。

そのセーターが、
舞い散る桜とよく似合う。
女子たちは
「キャー!かわいい!」
「一緒に撮ろう!」とスマホを構え、
桜とセーターのコラボにキャッキャとはしゃぐ。
——だが、しかし!
文徳は共学!
男子もこのセーターを着るのだ!!

最初は、
少しだけ照れながら
袖を引っ張っていた。
けれど、
一週間もすれば慣れる。
セーターの色が春の陽射しに映えて、
なんだか自信すら与えてくれる。
そして、ある朝から、
廊下でお決まりの現象が始まった。
「トゥース!」
「トゥース!」
「トゥース!」

最初は、一人。
次に、二人。
そして、三人。
誰も教えていない。
ただ、その甘いストロベリー色には、
その挨拶がやけに似合った。
誰一人、外れることはなかった。
よく、揃っていた。
そして、
緩やかに、優雅に。
歩行スピードも落ちていく。
廊下は大行列。

つむぎ
「あー!うるせえ!!ここは春日の養殖場か!?」
心春
「……あ、鬼瓦」
つむぎ
「誰がや!!」
窓の外では、
まだトゥースの合唱が続いている。
桜の花びらが、
ストロベリー色の海の上を
ゆらゆら漂う。

文徳の春は、やかましい。
でも、そのやかましさは、
なんだか少し甘くて、笑える。
おわり
(604字)
今回参加させていただいたのは
田原さんのこちらの企画です。
