見出し画像

幼馴染はじめましたーー毎週ショートショートnote

幼稚園の頃から、私はクラシックを聴かないと眠れなかった。
お昼寝の時間になると、先生にお願いする。

「今日はカノンで。」
先生は困っていた。

近くには、
「『ありがとう浜村淳です!』を流して!」
と毎日騒ぐ男の子がいた。

変な子だった。

小学生になった。
遠足のおやつは、毎年ハーゲンダッツだった。
もちろん溶ける。
でも、溶けてからが食べ頃だと思っている。

近くには、うまい棒を十本ともバキバキに折って持ってくる男の子がいた。

変な子だった。

中学生になった。
世界地図は覚えるより描いた方が早い。
気がつけば、フリーハンドで描けるようになっていた。

近くには、竹馬でギネス記録を目指している男の子がいた。

変な子だった。

高校生になった。
校庭いっぱいを使って、ピタゴラスイッチを作った。
先生にはものすごく怒られた。

近くには、ポッキー束ね折り選手権三連覇の男の子がいた。

変な子だった。

大学。

曲がり角。
私は遅刻しそうで走っていた。
溶けたハーゲンダッツを食べながら。

向こうから。
大量のポッキーを抱え、竹馬で走る男の子がいた。

ぶつかる。
世界が、スローモーションになる。

カノンが流れる。
ドロドロのハーゲンダッツが宙を舞う。
バキバキのうまい棒が砕け散る。
世界地図が風に広がる。
竹馬が転がる。
ポッキーが一本、また一本と宙を舞う。
男の子のイヤホンが外れた。

♪ありがとう〜
 ありがとう〜
 らららんらんらんらーん

二人の目が合う。
お互いを指差した。
「あーっ!」


あの日から。
あの人のバキバキに折れたうまい棒を、私が食べるようになった。
私のドロドロのハーゲンダッツは、二人で食べるようになった。
世界地図には、いつの間にか二人の線が混ざるようになった。
竹馬は二人乗りになった。
ピタゴラスイッチは、一人では完成しなくなった。
カノンが流れる横で、浜村淳がしゃべっていた。
ポッキー束ね折りは、最後まで意味が分からなかった。

結婚式。
会場にはカノンが流れている。

その隣で、あの人が小さな声で口ずさむ。
「♪ありがとう〜 ありがとう〜」
思わず吹き出した。

変な子がいた。
知らない子だった。

大学でぶつかった、あの日。
時計は、過去と未来を同時に走り始めた。

こんな私たち、幼馴染始めました。


今回参加させていただいたのは
田原さんのこちらの企画です。

いいなと思ったら応援しよう!