見出し画像

📘 文徳高校文芸部大喜利研究会――出囃子が出来たんだって!――

部室。

午後の光が縦長の窓から差し込んでいる。

心春はノートに何かを書いている。

ガラッ。

勢いよく扉が開く。

つむぎ
「心春〜!!」

心春(顔を上げずに)
「……はい。地震ですか?」

つむぎ
「違うわ!出囃子できた!」

心春
「……出囃子?」

つむぎはスマホを突き出す。

つむぎ
「画面押したら飛ぶで」

心春
「……どこへ?」

つむぎ
「部室の外」

つむぎ
「おお!うちら動いとる!」

画面には、暗い舞台。
足のリズム。

たん。
たん。
たん。

心春
「……鼓動ですね」
つむぎ
「そう!鼓動!からの、いくぞ!」

心春
「いくぞ……?」

つむぎ
「私らの出囃子や!」

部室が静まる。

心春
「……なぜ、この曲なんですか?」

つむぎ
「“中学12年生”やから」

心春
「……終わっていない」

つむぎ
「そう。途中や。
大人でもない。子どもでもない。
でも、止まってもない」

心春は小さく頷く。

心春
「私たちも、途中ですね」

つむぎ
「完成してから出るんちゃう。
未完成のまま、出る」

心春
「だから、鼓動から始まる」

つむぎ
「いきなり喋らん。
まず、足」

心春
「言葉より先に、身体」

つむぎ
「“まだ途中やけど、行くぞ”や」

心春はスマホを見つめる。

心春
「……少し、怖いですね」

つむぎ
「何が?」

心春
「言葉が、部室を出ていく感じがします」

つむぎ
「いっぱい笑わせようや」

心春
「……Instagramを使って」

つむぎ
「動画で出す。
リールで出す。
そんで気になった人が」

心春
「……部室まで辿り着く」

つむぎ
「そういうことや!」

心春、静かに微笑む。

心春
「では――」

つむぎ
「ん?」

心春
「Instagramで、"途中"の私たちに会ってください」

つむぎ
「ちょっと有刺鉄線張っとるけどな!」

部室に、少しだけ笑いがこぼれる。

窓の外では、夕日が沈みかけている。

まだ、途中。

でも、

いくぞ

いいなと思ったら応援しよう!