建築家が語る|あの日、施主さんの見積書を見て「300万円、損するところだった」と気づいた話
はじめに
今日は、少し前の話をさせてください。
いつもの「教える」記事でも、「失敗事例」でもありません。ただ、あの日のことが、今でも頭に残っているので。
最初の相談
ある日、開業を考えている方から連絡をいただきました。
「すでに他の業者から見積もりをもらっているんですが、高いのか安いのかわからなくて。一度見てもらえますか」
よくある相談です。見積書を持って、事務所に来てくださいました。
テーブルの上に置かれた見積書を、ざっと見た瞬間——正直、手が止まりました。
見積書を開いた瞬間
金額は、約1,800万円。
規模感からすると、決して高すぎる数字ではありません。でも、内訳を見ると、気になる点がいくつもありました。
「内装工事一式 ¥8,400,000」
「一式」という表記が、何箇所もある。㎡数も、使用材料も、施工範囲も、何も書いていない。
諸経費が、工事費の約28%。
「この見積書、少し確認させてください」
そう伝えて、項目をひとつずつ精査しました。
1時間後
1時間ほどかけて、一緒に内訳を確認しました。
わかったことがいくつかありました。
「一式」と書かれていた項目を分解すると、同じ作業が別の名目で二重計上されている箇所がありました。諸経費の中に、通常は別途請求されない項目が含まれていました。坪単価の計算に、本来含まれるはずの設備工事が含まれておらず、後から追加になる構造になっていました。
「これ、このまま契約していたら……」
施主さんが、静かにつぶやきました。
概算で、約300万円。精査前と精査後の適正金額の差です。
そのとき思ったこと
「300万円」という数字を聞いて、施主さんはしばらく黙っていました。
怒っているのか、安心しているのか、よくわからない顔でした。
「知らなかったら、そのまま払っていました」
その一言が、ずっと頭に残っています。
知らなかったら、払っていた。
それは、この方だけの話ではありません。見積書の読み方を知らないまま、何百万円もの差に気づかずに契約している人が、この業界には少なくない。
私がこのnoteで「内装業者が言わない見積もりの裏側」を書いているのは、あの日のことがあるからです。知識があれば、防げることがある。それを伝えたくて、書き続けています。
施主さんのその後
この方は、最終的に私たちに工事をご依頼いただきました。
完成した日、「ここで、頑張ります」と言ってくださいました。その言葉が、また頭に残っています。
でも、もし私のところに来ていなかったとしても——見積書の読み方さえ知っていれば、あの300万円は守れたはずです。
だから、この話を書きました。
見積書で確認すべきこと(実践編)
語りだけで終わるのは、私らしくないので。
あの日の経験から、見積書を受け取ったときに必ず確認してほしいことを3つだけ。
ひとつ、「一式」表記はすべて分解してもらう。㎡数・材料名・施工範囲を明記してもらう。「一式」のままにしておくと、後から「含まれていませんでした」が起きます。
ふたつ、諸経費の内訳を必ず聞く。相場は工事費の5〜15%程度。それ以上なら理由を確認する。「現場管理費・交通費・廃材処理費」など、具体的に出てくるはずです。
みっつ、坪単価に何が含まれるかを確認する。空調・電気・給排水・看板が別途になっていることが多い。最終的な総額で比較することが重要です。
詳しくは、先日公開した「内装業者が絶対に言わない見積もりの裏側」もあわせて読んでみてください。
おわりに
あの施主さんは今も、あのお店を続けています。
たまに「調子はどうですか」と連絡をくれます。
この仕事を続けていてよかった、と思う瞬間のひとつです。
開業を考えている方、見積書を前にして不安な方——もし「見てほしい」という方がいれば、メンバーシップでご相談ください。あの日と同じように、一緒に確認します。
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建築士・電気工事士・管工事施工管理技士等、有資格者が多数在籍する建築会社を15年経営。飲食店・クリニック・美容室・士業事務所など施工実績多数。現場目線の店舗・施設内装情報を発信中。
