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天の道~真実の行方17話

       2章ー➅

気分が海へと誘われる陽光のせいもあり、趣味を通した久しぶりの海での物色に、瞳は夢中になっていた。
どこかに……朽ち果てそうな命(貝殻)はないか、視線は砂浜に注がれ
そんな物を探し求めていた矢先、異様な物体が瞳の目に飛び込んで来た。

その形から、一瞬何であるかも容易に飲み込めず、よく確かめる為にと距離を縮めても、理解するまでに時間の間が必要な程だった。
と、言うより、目にした物に対して理解や判断力の思考回路が遅れてついてくる、、以前、悪夢の中で経験した現象に似ていた。

そんな筈ない、これは何かの間違いだ!
「大体、こんな所に、そんな物がある筈がないのだ」
との否定の要素が大きく、最初、人形のものだと思おうとしたが
紛れもなくそれは、人間の手だった。

波の層で出来たこんもりと盛り上がった砂浜の中から、肘から上の部分が
剝き出しに真っ直ぐに伸び、掌を開らいている状態の手だった。
白くふやけて、開いた汗腺からうっすらとした産毛まであっては、もう疑う余地もない、、これほど精巧に出来た人形はいない。

人形位の大きさの……小さな赤ちゃんの手だ!爪まで生えている!
立ちすくむ瞳だったが、辺りを見回しても人影はなかった。
「どうしたら……いいの?」
警察?とも考えたが、
「信用して貰えるの?」
「産毛まであるけど本当にそう(人間の)なの?」
「その(警察)前に、もっと確かめなくていいの?」

頭がぐちゃぐちゃで、とにかく纏まらない。警察に届ける前に、信用して貰う為に、もっと確かめなければいけない、、気がした。
砂浜に埋もれたこの手の下は、、繋がっているのだろうか?
再び、しばし立ちすくんだ。

「どうする……?」
……そうは思っても、体が拒否して動けない。
確かめる行動に移すには、気持ちの整理が必要みたいだ。
どんどん、暮れ始めてきた……
肌の感触を触って確かめるか、砂浜を掘り起こすか、証明するには、どちらかだと思うが、頭同様、身体は尚も硬直して動かない。

薄暗い闇が、少し恐怖心をも与え始めていた。
誰かと一緒だったら、それが出来るかも知れない……
「そうよ、、何も、今、確かめなくても良い事だわ」
鈍くなっている判断力ながら、その場を逃れる口実が閃き、取り合えず正確に場所を覚えといて……明日でも出直せばよい事だわ
「明日来て、、まだこれがあったら、その時こそ本物って言える事だわ」

何度も後ろを振り返り、それがあるのを確かめながら、その場を後にした。
「不思議だわ、こういう事ってあっていいのだろうか?」
時間が経つと、瞳自身、半信半疑に思えてくる。出来なかったくせに、、
「やっぱり、ちゃんと確認すべきだった」と後悔してきた。

もし波打ち際に打ち上げられたのであれば、それまでの間、岩に叩きつけられ、或いは、海の生物の餌食にされた可能性もあり、それらで仮説を立てれば、下が繋がっている保証はない。
元々其処に埋められ、寄せては返す波のせいで剥き出しになったとしても
綺麗な片手だけ……伸びたあんな状態が有り得ない。

今なら、、しかっりと開かれた掌が、何かを掴もうとしていたような、、
無念の現われのようにも感じられてくる。
辺りが暗くなって来た事に恐怖は覚えたが、その『手』自体に不思議とそれ程の恐怖が湧かなかった。なのに何故、確かめられなかったのか。

さすがに、、砂浜の下の最悪の事態は、その場で想像したりしたけれど、、
『手』の持ち主は、どんな事情で、あの状態になったのだろうか
そもそも、あんな所に存在する事態が、おかしな話で。
頭がいっぱいになって来た瞳だが、夜から降り出した激しい雨に
「こんなに降ると、、あれは流されてしまうのでは」

と心配になり、確固たるものに至らなかった自分の行動が余計、悔やまれた
降り出した雨は、結局、それから幾日も幾日も降り続き
「あー もうあれは、完全に流されちゃったなぁ」
と思う諦めが、二度と瞳をその場所へと向かわせなかったのである。

結果的に、確定に至らないまま、『見た』事実だけが出来あがってしまった形の砂浜体験は、後から、ゆっくりと掘り起こしてみても、とても理屈で割り切れるものではなかった。そもそも、その場で確かめなかった事で、帰ってすぐから、半信半疑に陥ったりしたものだが、それを最後まで確かめずに済ませた自分の行動が、今を以って、瞳は腑に落ちなくなって来ていた。

あの時、緊迫した何かが欠けていた、、いや、それを与えられなかった、と言う方が相応しいような気がしていた。
自分の『確かめる』という気持ち以上に、『行かせない』とする自然の力の方が強く働いていたような……気がしてならなかった。

あの砂浜体験は、自分に『見せる』という、その為だけに作られた実在しないもの、、その内、こう考える方が、いとも簡単に成り立ってしまうと思えて来た。理屈で割り切れない何かは、そんな発想を生み出し、当初、予想もしなかった方向へと、じわりじわり向きを変え、瞳を動かし始めていたが
あくまでも非現実的な仮想の下でしかない、、
瞳は、僅かに残る常識の壁を乗り越えられずにいた。

#ミステリー小説部門

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