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天の道~真実の行方 4話

     ターゲット ① 

子供の出来ないまま、10年間の結婚生活に幕を閉じ離婚してから5年。
将来を考えると不安を感じる事もあるが、今の生活が定着しつつあり
当分はこのスタイルを壊す勇気がないと思っている瞳。
好きな事が出来て、食べたい時に食べ、寝たい時に寝るという
自由を満喫している。

ある意味、不規則なナースの仕事をやりながら、あれも、これもと
全て完璧にこなそうとして、肉体的にも精神的にも疲れてしまい
最終的には行き場の無い所まで追い込まれてしまった
苦い過去の反動なのかもしれない。

休日にゆっくり体を休めた瞳は3日後、元気に日勤業務に携わっていた。
昼間の勤務はどうしても必然的に、あの小早川との関わりが多い。
でも、日中体を動かし、夜に寝るという人間の一般的な習性の面から言えば
やはり、この勤務帯の方が理想であり、長年、夜勤をこなしてきた瞳の身体も圧倒的にこっちの方が楽だと感じる。

本来、夜勤を必要以上は好まないナースが多い中
この部署は、例外的にそれを好むナースが多いのは、こうやって小早川と
直接、接する機会を少しでも減らしたいが為に他ならない。

スタッフ間の話題に登場する時は、名前を聞くだけでも拒否反応が
起こるからと、『爺』(ジィ)というあだ名で呼ばれるボスの
存在する小さな独特の世界。一度、獲物とされると当分は執拗で陰湿な嫌がらせを受ける羽目になる……そのボスのターゲットは最近、スタッフのひとり……では無く、別のものに向けられていた。

近頃、小早川は診察前に、外来カルテの中身を入念にチェックしている。
院内で統一されている一般的な記録用紙の綴り方を、自分の使い勝手の良いように変えて貰ったのだが……それが、ちゃんとなされているかどうかを調べているのだ。

全ての科目のカルテ作りを一手に引き受け、日に何百と出るカルテの中で
この部署だけ違う形式で用紙配置をしなければならないのは、次から次に訪れる外来患者の対応に追われながらの受付にとって、細心の注意が必要とされる。そして、受付全員にこれが統一され、定着したかと思われる頃
またしても新たな並び替えを提案し……定着までの間に生じるミスを、その都度たしなめる事を、最近の喜びと感じているような小早川の今日この頃。

診察の為に呼ばれた外来クランケを目の前の椅子に座らせたまま
「案の定……」
と、呟きながら、みるみる顔を上気させ自ら受付に連絡を入れる。
「このカルテを作ったのは誰だ?ちょっと上がって来い」
果たして……現れたのは、入職3年目の若い男子職員、中水拓哉だった。
表情からして、叱られるのを覚悟の上、出向いて来たものと
推測がつくほどすっかり、しょげかえっている。

中断された診察室から聞こえてくる罵倒の数々。
物品を取りに行くふりをして瞳は中の様子を伺った。
「申し訳ありません」
を、繰り返す拓哉。ばつが悪そうに下をうつむいている待たされたクランケと、診察介助に就いている新卒間もないナースの小川由美。ちょうどこの時、口任せに出た小早川の言葉に、またもや呆気に取られてしまった瞳。

「こんな、くだらない事で、わしの手を休めさせるな!」
「お前らと違って、わしは時給何万の仕事をしているのだぞ!」
(瞳の心の声)
「く~っ!これが言いたい為に、こんな事やってんのか~!?大体、こんなくだらない事って……それを仕向けてるのは自分じゃねぇか!!」
瞳はこの先、どんなに時間を掛けて、この人間を理解しようと心がけても
それはもう一生無理なように感じられた。







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