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天の道~真実の行方 5話

    ターゲット ②      

今の時代、如何なる職業も、対等なそれぞれの専門職と考える世の中に在って、この人の頭の中は一昔前の医者様様で、踏ん反り返ったまま止まってしまっている。きっと、中水拓哉のプライドは、ズタズタに傷ついているに違いない。

それでも、言いなりになっているかのように見えるその態度を
瞳は立派だと思った。吠えようと思えば簡単な筈……
しかし、こんな心の貧しい者を相手に吠えてしまう人は
もっと浅はかに等しい。
所詮、もの申したところで通用する相手ではないだろう。

小早川の毒舌に耐えかね反論した職員は、それと引き換えに職場から姿を消す事となる。丁寧に詫びを入れ、診察室を出て行った拓哉の取った行動も
ひとつの選択肢の現れと言えよう。

小早川の怒鳴り声を聞く度に、それが自分に向けられたものでないにしろ
同じように心を痛め、後味の悪い想いを互いに嚙み締めあうスタッフ達。
明日は我が身と小早川の顔色を伺う毎日。
大人の世界にも苛めがあるとすれば、場所を変え、人を変え
聖域と言われる医療界の裏側に、舞台が作られつつあった。

しかし、絶対服従のように見えたそれも、心まで支配される筈もなく
順子や瞳の言うように、こんな歪んだ形でしか人を繋ぎとめる術を知らない小早川もまた、病んだひとり……と思えば接していけないこともないと考えるスタッフは、少なからずいた。

理性のある者を゛おとな”と呼ぶのであれば、その理性のある
者たちによって、堪え難きを忍んでまで、守らなければならないものが
あったからに他ならない。

此処は時として命を預かる神聖な領域……
その域に於いて、小早川を不愉快に感じる邪悪な魂が生じようとも、それを瞬間的なものとして置いて行かなければ、とても進んで行けるものではなかった。命を尊び、病める人を助けるという使命、それが、ナイチンゲール誓詞を唱え今日まで歩いてきた『白衣の天使』達の医療従事者としての誇りだった。

この捉え方を観点にすると、自分の配下を自由に動かしていると思い込んでいる小早川自身、実は反対に動かされている事など知る由もなく、その我儘ぶりは留まる事無く続いていくのであるが、抑圧された環境が、人間形成にどれほど影響を与えていたかを問う、ある出来事が待ち受けている事など
スタッフの誰ひとり予測出来なかったのであった。


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