天の道~真実の行方 7話
解き放された秘密 ②
全てを話し終えた由美は、グラスを持つ手が小刻みに震えていた。
閉じ込められていた過去の忌まわしい記憶が、呼び戻されたゆえの恐怖心からか、それとも、一度は封印していたショッキングな内容を、喋る事によって解き明かさなければならなかった自責の念から来る現れだろうか。
「すみません・・・私ひとりの胸にしまって置くつもりだったんですけど」
「あの時、一緒だった伊藤さんは、この事が原因で辞めちゃってるし
私もこれでいいのかな?と、ずっと引きずってて」
そして、こうも続けた。
「この仕事、何も知らなくて傍から見ていた頃はもう少し、やりがいのある仕事だと思ってました」
由美がそう呟くのも仕様がないと納得してしまう瞳。
「小川ちゃん、大変な経験しちゃったんだね」
こう答えるのが精一杯だった。
酔いはすっかり醒め、二人はそこから先、いくら飲んでも酔えない酒を
味わっていた。
それぞれの想いの交差する会話は、言葉少ないものとなり、どちらかが発するひとつひとつを、その都度噛み締めながら飲んでいたが、程なく閉店を告げられ店を出た。
「飲めば飲むほど何だか切なくなってくる……今日はもう、これ以上飲めないわ」
明らかにいつもの、はしご酒のパターンには結びつけられない、そんな心境だ。
「とにかく結論を急がないで。早まった事、考えちゃ駄目よ」
うつむき加減の由美の顔を覗き込むようにして、コクンと頷いたのを確認すると
「どうしたら一番ベターなのか、考えよう?一緒に」
瞳は念を押した。再び頷く由美を見届けて、そのまま二人は別れた。
こういう時のお酒はとにかく後から効いてくる。
部屋に着いた途端、気の緩みも伴い、瞳はベッドへ倒れ込んだ。
このまま、眠れなくも無い。だが、考えさせようとするひとつの、ある意識が走馬灯のようにグルグルと回りだし、、そのうちそれは
夢ともうつつとも分からないような世界へと瞳をいざなった。
その世界では、白衣を着けた瞳と由美がいた。
何かを見つめ、途方にくれている。
此処は? NICU(新生児集中治療室)だ!
そして二人の視野に入っているのはクベース(保育器)に入れられている
赤ちゃん……だが、その赤ちゃんは
あ、いけない……色が悪い……泣き声が弱々しい
二人は、この赤ちゃんの事を案じている。
「あれ?これって……」
小川ちゃんが話してくれた状況そのままじゃん??
それに、何で私がいるの?
この瞬間、酔いで思考の乱れた瞳の頭は整理され、一人歩きしていた意識(魂)が、ようやく白衣を着た瞳と一体化されて、本格的な眠りの中へ落ちていった。由美から聞かされた信じ難い物語とも言える出来事は、此の後
瞳の夢の中で再現される事となる。
