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Charlotte発、世界へ:DaBabyとMr.Beast、地方都市が育てた二つの巨人

Charlotteという街の磁力

ヒップホップの地図を広げたとき、最初に目に飛び込む都市は決まっている。New York(ニューヨーク)、Los Angeles(ロサンゼルス)、Atlanta(アトランタ)、Houston(ヒューストン)、Chicago(シカゴ)。これらの都市はジャンルの歴史と不可分に結びつき、特定のサウンドや美学と同義語になっている。

ではCharlotte(シャーロット)はどうか。North Carolina(ノースカロライナ州)最大の都市であり、Bank of America(バンク・オブ・アメリカ)本社を擁する金融の中心地でもあるこの街は、人口約90万人を抱える大都市でありながら、エンターテインメントの世界地図上ではlong shots、つまり「意外な場所」として扱われてきた。しかし今、この街はジャンルを超えた二人の巨人を同時に世に送り出している。ヒップホップのDaBabyと、YouTubeのMr.Beastだ。

DaBabyがBootleg Kevとのインタビューで、Mr.Beastとのコラボレーションに意欲を示したことは、単なるリップサービスではない。それは、同じ地方都市を拠点に世界のトップに立った二人が、まだ直接交差していないことへの素朴な驚きと期待の表れだ。本記事では、このインタビューでの発言を手がかりに、Charlotteという都市が育んだ二つの成功モデルを比較・考察する。



DaBabyのCharlotte:ヒップホップ不毛の地からの出発

Baby JesusからDaBabyへ:名前が街に刻まれるまで

DaBabyの出発点を語るには、彼がまだ「Baby Jesus」という名義で活動していた時代まで遡る必要がある。South by Southwest(サウス・バイ・サウスウエスト)、Texas(テキサス州)Austin(オースティン)で毎年開催される世界最大規模の音楽・テクノロジーの祭典、でおむつ姿で走り回るという過激なゲリラプロモーションを行っていた時期、Charlotteのラッパーが全米の注目を集めることは極めて稀だった。

https://x.com/djvlad/status/844390687491657728

名義を「DaBaby」に変更した際も、すでに「Baby Jesus」として積み上げた認知をリセットすることへの不安はあったはずだ。インタビューで彼はこう振り返っている。「すでにあれだけの仕事を積み上げていたのに、名前を変えるなんて。でも俺は『よし、やるなら派手にやってやろう』と思った」。おむつ姿のプロモーションで培った型破りなマーケティング感覚が、名前のリブランディングにも活かされたのだ。

このエピソードは、DaBabyの成功戦略の核心を端的に表している。大手レーベルのバックアップや大都市のシーンに頼るのではなく、「自分で注目を集める」ための独自の方法を編み出す。Charlotteにヒップホップのインフラが整っていなかったからこそ、彼は自らインフラを作り出すしかなかった。その「ないなら作る」精神こそが、DaBabyの原動力なのだ。

ゲリラマーケティングの達人

DaBabyはインタビューの中で、音楽ビジネスの表舞台から一時離れていた期間にも、「ゲリラマーケティング」、予算をかけずにインパクトの大きなプロモーションを仕掛ける手法、に回帰していたことを明かした。「俺のやり方に戻った。フリースタイルの連投、SNSでの直接的なファンとの交流」と彼は語る。

これは、大都市の音楽シーンに身を置くアーティストとは根本的に異なるアプローチだ。Atlanta(アトランタ)やNew York(ニューヨーク)のアーティストであれば、地元のクラブDJ、ラジオ局、レーベルのネットワークを通じて楽曲をプロモートできる。しかしCharlotteにはそのような既存のエコシステムがほとんど存在しなかった。DaBabyは必然的に、SNSと自身のカリスマ性だけを武器にした「一人軍隊」としてのプロモーション手法を発達させた。

この「地方発ゲリラマーケティング」モデルの成功は、後にCharlotteから出てくる次世代のアーティストたちにとっても、一つのロードマップとなっている。

Mr.BeastのCharlotte:YouTubeの帝国を地方に築く

「あいつは施設を丸ごと持っている」

DaBabyがインタビューでMr.Beastに言及した際のトーンは、率直な羨望と尊敬が混じったものだった。「あの規模の施設を持っている。まさに自分もそういうものを作りたいと思っているんだ」。この一言は、DaBabyがMr.Beastのビジネスモデルに強い関心を抱いていることを示している。

Mr.Beastは、Charlotte近郊のGreenville(グリーンビル)、厳密にはNorth Carolina州の東部に位置する都市を拠点に、世界最大のYouTubeチャンネルを運営している。彼がLos AngelesでもNew YorkでもなくNorth Carolinaに自身の制作拠点を置き続けていることは、「成功するためには大都市に移住しなければならない」という従来の常識を覆す象徴的な事例だ。

Mr.Beastの複合施設には、大規模な撮影スタジオ、倉庫、オフィススペースが含まれており、数百人規模のスタッフがコンテンツ制作に携わっている。DaBabyが「あの規模を見ると、自分も同じようなものを作りたくなる」と語ったのは、音楽活動の枠を超えた総合的なエンターテインメント事業への野心の表れだ。

地方を選ぶ合理性

DaBabyとMr.Beastが共通して示しているのは、「地方にいること」がハンディキャップではなく、むしろ競争優位になり得るという事実だ。

大都市に比べて生活費や事業運営コストが低いNorth Carolinaでは、同じ投資額でもより大きな施設を確保でき、より多くの人材を雇用できる。Mr.Beastがあの規模の制作拠点をLos Angelesに構えようとすれば、コストは何倍にも膨れ上がるだろう。DaBabyにとっても、Charlotteに根を下ろし続けることは、音楽ビジネス以外の投資や事業展開において合理的な選択である。

さらに、地方を拠点とすること自体が「物語」になる。「Charlotteから世界のトップへ」というナラティブは、大都市出身のアーティストには決して語れないストーリーだ。DaBabyもMr.Beastも、この「地方発」というブランドを意識的に活用している。

Charlotte Hornets:地元愛が交差するアリーナ

DaBabyとHometown Pride

DaBabyの地元愛を最も端的に表しているのが、Charlotte Hornets(シャーロット・ホーネッツ)。NBAに所属するCharlotteのプロバスケットボールチームへの熱狂的な愛着だ。

インタビューの中で、2025年1月にHornetsがNBA全体で月間最多勝を記録したことが話題になった際、DaBabyの興奮は隠しきれないものだった。「俺たちはまだ負けてないんだ」と誇らしげに語り、チームの最近の快進撃を自分の帰還と重ね合わせるかのように「俺がCharolotteに出てきてポップし始めてから、負けてないぞ」と冗談交じりに述べた。

ジャージーの話題になると、DaBabyの選択は興味深いものだった。現役選手ではなく、Larry Johnson、Alonzo Mourning、1990年代のHornets黄金期を支えた伝説的な選手たちのジャージーを買うと語ったのだ。Larry Johnsonは190cm超の体格から繰り出すパワフルなプレーで知られた万能型ばんのうがたフォワード、Alonzo Mourningは威圧的なブロックショットで恐れられたセンター。いずれもCharlotteのスポーツ史に深く刻まれた名前であり、DaBabyが「現在」よりも「歴史」に対する親和性を示したことは、彼の地元文化への根深い愛着を物語っている。

一方で、Dell Curry、Stephen CurryとSeth Curryの父親であり、Hornets史上最高の控え選手の一人として知られるシューティングガード、の背番号引退についても触れられた。DaBabyは「Curryファミリーにはいつも会うたびに温かくしてもらっている」と語り、Charlotteのスポーツコミュニティにおける自身の存在感を示した。

スポーツとヒップホップの結節点としてのCharlotte

Charlotteは近年、スポーツの文脈でも注目を集めている。NBAのHornetsだけでなく、NFLのCarolina Panthers(カロライナ・パンサーズ)、MLS(メジャーリーグサッカー)のCharlotte FC、さらにNASCAR(全米自動車レース協会)の本拠地としても知られる。

DaBabyがHornetsの試合に頻繁に姿を見せ、チームの応援を公にすることは、Charlotteにおけるヒップホップとスポーツの接点を強化する行為でもある。多くの大都市では、ラッパーとプロスポーツチームの結びつきはすでに確立されている(Jay-ZとBrooklyn Nets、Drakeと Toronto Raptorsなど)。DaBabyは同様の関係をCharlotteで築こうとしているのだ。

二人の交差点:コラボレーションの可能性とCharlotteの未来

異なる分野、共通するDNA

DaBabyとMr.Beastを比較したとき、一見すると接点は「同じ地域の出身」ということだけに見えるかもしれない。しかし、彼らの成功戦略には驚くほどの共通点がある。

ゲリラマーケティングの精神。 DaBabyがおむつ姿でSouth by Southwestを駆け回り、Mr.Beastが初期に「10万ドルをばらまく」動画で注目を集めたように、二人とも「型破りで、低コストだが高インパクトな方法で注目を集める」という戦略を出発点としている。

量と質の両立。 DaBabyはデビューから1年で3枚の全米1位アルバムを出し、Mr.Beastは週に複数の大型動画を公開し続けた。二人とも、圧倒的な作品量でアルゴリズム(音楽チャートであれYouTubeの推薦システムであれ)を味方につけた。

地元への投資。 DaBabyがCharlotteを離れず、Mr.BeastがNorth Carolinaに巨大施設を建設したように、二人とも成功後に大都市に移住するのではなく、地元にリソースを投じている。

実現すれば何が起きるか

DaBabyが「あの人とコラボしたい」と語ったことは、単なるリップサービスとして片付けるべきではない。音楽とYouTubeというプラットフォームの垣根は年々低くなっており、Mr.Beast自身もコンテンツの中で音楽やエンターテインメント要素を積極的に取り入れている。

仮にDaBabyがMr.Beastの動画に出演する、あるいは共同でCharlotteを舞台にしたプロジェクトを立ち上げるといったコラボレーションが実現すれば、その影響は二人のファンベースの相互流入にとどまらない。「Charlotteからこれだけのことができる」という強力なメッセージとなり、この街を拠点とするクリエイター、起業家、アーティストたちに新たなインスピレーションを与えるはずだ。

地方都市の逆襲は始まっている

DaBabyとMr.Beastの成功は、「地方都市からでも世界の頂点に立てる」という命題の、最も説得力のある二つの証明だ。ヒップホップとデジタルメディアという異なる分野で、二人は同時期にCharlotte圏から世界的な影響力を獲得した。

DaBabyがインタビューで見せた地元への愛情、Hornetsへの熱狂、90年代の名選手への敬意、Charlotteに施設を建てたいという野心は、成功しても自分のルーツを忘れない姿勢の表れだ。Mr.BeastがNorth Carolinaに複合施設を構え、地元に数百の雇用を生み出しているのも、同じ精神の異なる表現と言えるだろう。

"Be More Grateful" というアルバムタイトルが「自分を育てた場所への感謝」をも内包しているとすれば、DaBabyにとってのCharlotteは、感謝の対象であると同時に、次なる挑戦の舞台でもある。この二人の巨人が本当に手を組む日が来れば、Charlotteという街の名前は、ヒップホップの地図上にもデジタルメディアの地図上にも、消えないしるしとして刻まれることになるだろう。

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