江戸・明治に学ぶ、旅の楽しみ(⑧2年間・2拠点居住のすすめ)
江戸・明治時代の人たちは、時間はかけても、お金はかけずに、心に刻まれる旅をしていたようです。前の記事では、それをふまえて、現代の旅行スタイルを7種あげました。本記事では、そのなかで、定年退職した私のおすすめ、2年間・2拠点居住の旅について詳述します。
(ヘッダーは、滞在先の散歩コース)
1.なぜ2拠点か、なぜ2年間か
私は千葉の自宅とは別に、長野県松本市でアパートを借りています。
通過する旅よりも滞在する旅をしたいと考え、自宅とは別に松本に拠点をもちました。松本からは信州だけでなく、千葉からは遠い飛騨や北陸へも日帰りでアクセスできます。
観光に加え、その地域の文化、とくに私のライフワークである「日々の楽しみ方のいまと昔を知る」ことが狙いです。
2年間の滞在にしたのは、シンガポールでの駐在経験からです。
駐在1年目は年中行事や現地の習慣に戸惑い、あっという間に過ぎてしまいました。2年目は春節の準備がはじまったなあ、春節はブギスの街で迎えようかなあ、など現地の暮らしに溶け込め大満足でした。
四季がはっきりしていて年中行事が多い日本では、2年間の滞在はさらに有意義。1年目で知った行事や地元ならではの行楽先を、2年目は計画的に訪ねられるのです。
2年目になると、モノの見方の解像度が高まり、深い旅になります。
私が住む地区の人たちは、下記のように、季節ごとの行楽が決まっています。鉄板の遊び方ですね。真似しています、
暖かくなると山菜採りに出かけ、地元の春祭りに参加し、梅雨時になると新タマネギを買い、夏になると花火見物。
そうこうしているうちに、米の収穫。
ブドウのできぐあい、松茸の生育が話題にのぼりはじめ、松茸を買い込んだらすき焼きや松茸ご飯をつくります。
新蕎麦祭りや秋祭りに出かけ、11月に入ると農家では冬に備えて野沢菜を漬け、干し柿をつくります。
稲藁でしめ飾りをつくって正月を迎え、あめ市で縁起物の飴を買い、正月が明けると三九郎(どんど焼きに相当する行事)でしめ飾りを燃やします。
冬は日本海側にカニを食べに行き、春がくると山菜採り。
山菜を採りに行く場所、カニを食べに行く宿もおおよそ決まっています。
1年目は珍しさが先で情報収集レベルでしたが、2年目は計画的に出かけています。2年目になると「おいしい店は見つかった?」などと地元の人に質問されるレベルになりますよ。
3年目は残念ながら新鮮さがなくなるので、旅と位置づけるなら、ほかの土地へ行ったほうがよいでしょう。3年目からは恒久的な2拠点居住(別荘生活)であって、旅ではないと思っています。
ところで、私が移住をしないのは、地元(千葉県)との長いつながりを失いたくないからです((随想)地元の集まりの大切さ)。松本は長期の旅先であり、私の居場所=地元は千葉と決めています。
2.2年間・2拠点居住の How To
(1)候補地を決める
誰にも住んでみたいなあと思う場所があるのではないでしょうか。
その場所が候補地です。
私の候補地は、高い山がそびえる松本盆地でした。
(2)短期滞在で居住場所を絞る
候補地を決めたら1週間ほど滞在して居住場所を絞りましょう。
松本盆地といっても広く、北の大町市から南の塩尻市まで6市町村あります。私はシェアハウスに泊まり、生活情報を収集し、居住場所を安曇野市と松本市に絞りました。
(3)お試し居住をする
つづけて、候補地の両市でウイークリーマンションを借り、2週間ずつ過ごしました。たった2年間とはいえ、引っ越してから「あら、違う」では残念ですから。
(4)物件を決める
私がこだわったのは、北アルプスが見えることと温泉が遠くないこと。
第一候補にした安曇野市で目をつけていた物件は空室が出ず、松本市の温泉銭湯が徒歩圏内にあるアパートにしました。
住んでみると、地元の人が石けんやシャンプーを持って通う温泉銭湯が大正解。入浴料は回数券利用で350円(2025年)。いいことがあってもなかっても、1日のおわりに温泉に入れるのが非常にありがたく、温泉が近い物件は本当におすすめです。知り合いもできます。

(5)2拠点居住を楽しむ
通り過ぎる旅では味わえない楽しみは、
・天気を選んで上高地などの観光地へ行ける、
・地元の旬の食材を、地元の方法で食べられる、
・年中行事を見尽くせる、
・地元のイベントに参加でき、知人ができる、ことです。
旅に出て、「晴れていたら絶景のはずなのに」とか、「そんなお祭りがあるんだあ」とか思ったことはないでしょうか?
そのような残念さを解決できるのが滞在する旅です。
食事はときどき蕎麦屋などへ行く程度で、直売所で買ってきた地場の食材を自炊しています。信州に限らず、朝採れの野菜はおいしい!
食事や観光以外の時間は何をするか。
自宅に居るのと同じく、仕事・家事・趣味の時間になるのです。
私の仕事(日本語教師)は週2日、オンラインで完結するので場所を選びません。もちろん、晴耕雨読と決め込んで、天気がよければ出かけ、悪ければ家にいるのもありだと思います。
趣味は地元とのつながりを強めるチャンスになり、積極的に地元の集まりに参加するのがおすすめ。私は太極拳サークルと博物館友の会に参加しています。自宅に居てはできない「広がり」ですね。
ところで、不思議なことにアパートにいるだけでも旅をしている気分になります。
外に出てウォーキングすると、自然豊かな風景ときれいな空気に出合えてすっかり旅行気分。日常生活と旅が混ざり合っていて、日々が新鮮なのが2拠点居住の旅だと思います。
(5)2年間2拠点居住の費用
費用はピンキリなので2LDKのアパートを借りた私の例を記載します。
・初期費用はアパート契約、家電品と家具の購入、引っ越し代で77万円でした。
・家賃は駐車場代などを含め年間93万円(2024年実績)。ジュニア・スイートの広さともいえる58㎡でも、1泊あたりの部屋代は2500円。
・退去費用は20万円ほど見ています。
合計すると2年で約300万円。電気の基本料金など細かい出費もあります。
夫婦で海外旅行すると何回かで、クルーズなら1回で使ってしまいそうな金額ですが、あなたは高いと思うでしょうか、高くはないと思うでしょうか?
(6)2拠点居住の注意点
・本拠地(地元)との関係維持:サークルにスポット参加する、親戚付き合いを続けるなど、関係維持には多少の努力が必要ですね。
・地元に帰るための時間と費用:私は月に一度、3泊ほどで自宅に帰ります。遠隔地だと私の予算ではオーバーです。
・現地対応の費用:千葉では不要な冬用タイヤなどが必要になりました。
・居住地の自治体のサービスが限定的:住民票を移していないので、市のバスツアーなどには原則的に参加できません。ただし、図書館は公共料金の領収証で居住を証明すれば利用できます。
・親族や友人が訪ねて来ます。善し悪しですけどね。
上記が私の2年間限定2拠点居住の実態です。おすすめですよ。
まとめ
居住地を定められていた昔の人たちにはできない長期滞在型の旅。名所旧跡と食事を楽しむだけなく、その土地の人たちの楽しみ方を真似し、取り入れることもできます。知人ができれば第2の故郷にもなることでしょう。気分転換のレベルを越えた得るものが多い旅であることは保証できます。

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■私の書籍 2025年出版。本記事は「第5章 旅の楽しみ」の一部です。書籍では現代への応用に重きを置いて書いています。

Amazon(Kindle版)のサイトでは「はじめに」が、下の出版社のnoteでは「第1章 どうする定年後、あなたは何してる?」が公開されています。
■私のブログ (つたない英語に日本語を併記しています)
