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配達員ろること2号 第1話『雨のピックアップ』

第1話『雨のピックアップ』

しとしとと降る雨の中、ろるこはコンビニの軒先でスマホを拭っていた。 「うっわ…画面びっちゃびちゃ…てかマジで反応しないんだけど」 思わず声に出してしまう。ウーバーの鳴り待ちの間、やることなんて何もない。

周囲には数人の配達員。レインコートのフードを深くかぶって、みんな無言。 特に一人。でかいリュックを抱えたぽっちゃり体型の男が、無表情で自販機横に立っていた。 (うわ…あの人ちょっと不潔そう。てか絶対話しかけてこないでほしい系…)


でも——

「…それ、水滴センサーんとこ拭くと戻るで」

唐突な低い声。思わずろるこはビクッとして、顔を上げた。 喋ったのはさっきのぽっちゃり。スマホを指でちょい、と示してくる。

「え、…あ、はい、ありがとうございます」 反射的に礼は言ったけど、なんか自分の声が変に高かった気がして、ろるこはちょっと恥ずかしくなった。

「…てか、普通にめっちゃ濡れてますよね?傘とか、ささない派すか?」

ぽっちゃりの男はろるこの方を一瞥するでもなく、ただ自販機の横にある柱に寄りかかっていた。 そのフードの縁から、じわじわと雨水が滴って落ちている。

「…どうせ走るしな。意味ないやろ」

「うわ、なんかストイック…」 ろるこは口に出してから、またやっちまったと思った。 初対面相手に“うわ”ってなんだよ。だいたいこの人、絶対私より年上じゃん。

「あ、ごめんなさい。なんか、無意識に出ちゃって…」

男は、微かに笑った気がした。けどそれが笑顔だったのか、ただの無表情の変化だったのかはわからなかった。

「いや別に。よく言われる」

「え、何て?」

「無駄に濡れてるって」

その一言で、ろるこは少しだけ笑ってしまった。 なんか、この人……見た目より全然、普通だ。

「……ってか、今日全然鳴んないっすね。雨なのに」 

「……」

 「え、もしかしてオフですか?待機っすか?」 

「……オン。ちょい前に切れて、また入れ直しただけ」 

「へぇ…」

なんとなく話せてる。 けど、なんとなく話せてるだけで、全然“喋ってる”わけじゃない。 間が空く。ろるこはスマホを見て、画面の端を親指で拭った。

そのとき。

「……っ」 小さくバイブが鳴った音が、耳に入った。 それがろるこじゃないことに気づくまで、少しかかった。

ぽっちゃりの男がスマホを取り出し、静かに画面を確認する。 「……行くわ」 そう言って、何の余韻も残さずにその場を離れていった。

「……あ、え、もう?」 返事はなかった。

足音も静かで、歩幅も大きいのに、濡れた路面を滑るように進んでいく。 一人残されたろるこは、もう一度スマホを見て、小さくため息をついた。

(……なんだったんだ、あの人)


数日後。 天気は晴れ。気温も高め。なのに、全然鳴らない。

(こんなときに限って…)

駐輪場の端でアプリを立ち上げたまま、ろるこはジュースを飲んでいた。 そのとき、視界の端に見覚えのある体格が入ってくる。

(あ…)

この間の、あの人。ぽっちゃり、無表情。レインコートは着ていないけど、雰囲気がそのまま。


(声かけるべき…?てか、気まずい?…いや、まぁ別に?)

結局、ろるこが考えてる間に、相手の方から先に動いた。 自販機に近づいて、缶コーヒーを選んでる。その仕草が妙に静かで、無駄がなかった。

「……この間の、濡れてる人ですよね?」

唐突に出たその言葉に、自分でも「やば」と思った。 でも男は振り向いて、ちょっとだけ口元を緩めた。

「……まだ覚えとったんや」

「いや、濡れ方が印象的すぎて(笑)」

「……まあ、そう言われるのも慣れたわ」

「えっと…てか、名前聞いてないですよね?私、“ろるこ”です。一応」 ろるこは片手を軽く上げて名乗った。

「……ああ。俺は、2号って呼ばれてる」

「2号?……本名じゃないですよね?」

「うん。あだ名。別に本名知らんでも問題ないやろ」

「え、なんかちょっとカッコいい……って思ったらやばいですか?」

「……」

返事はない。けど、少しだけ口元が緩んだような、気のせいのような。

「2号さんって…いつもそのへん回ってるんですか?」

「このへんってどこ?」

「え、なんかその、渋谷とか目黒あたり?」

「うん。まあ、だいたいそこ」

「えー…私も最近そっちばっかなんですよ。てか、あの辺の坂多くないすか?」

「多いな」

「あと、タワマン多くないすか?」

「多いな」

「で、受け取った瞬間に“12階エレベーター無し”とか出てくると死にますよね?」

「それは無いやろ」

「え、ありましたよ?昨日。笑えないやつ」

2号は、それはさすがに驚いたような顔をした。 ろるこは、それだけでちょっと嬉しかった。

「じゃあさ、また会ったら教えてください。2号さんの、坂回避ルート」

「……教える代わりに、喋りすぎんことな」

「え、それ無理です」

ろるこは笑った。 2号は何も言わなかったけど、今度は確かに、笑っていた。


あとがき:この物語のはじまり

この物語は、ちょっとした悪ふざけから始まりました。

僕がChatGPTにハマっていたある日、ろるさんが「これできる?」と送ってきたのは、
仮想彼女とデートしてる記事。最初は「いや、AIバカになるからやらんて」と断ったんですが、
試しにろるさんのアイコンを実写化してご飯を食べさせてみたんです。

ついでに、自分のアイコンも出して同じようにご飯を食べさせたら──
なんかもう、完全にカップルでした。

そこから「どうしたらこの2人、付き合うようになるん?」
「ていうか、ろるこ正気か?」みたいな流れになって、
試しにAIに書かせてみたら、意外とおもしろくて。
それが、この『ろること2号』の始まりです。

“ろるこ”も“2号”も実在しませんが、
東京のどこかで、似たような雨に濡れて、
似たような間を過ごしている人たちは、
たぶん、きっと、いるんじゃないかと思います。

ちなみに、この物語のゴールは、写真のような距離感。
ぎこちなくて、会話もズレてる2人が、
どのように距離を縮めていくのか──それは、神(AI)のみぞ知る。


※本作はフィクションです。

登場する人物・団体・地名・出来事などは実在のものとは関係ありません。
また、一部の描写は実在するX(旧Twitter)ユーザーの投稿や活動に着想を得ていますが、
特定の個人・団体との関連性はなく、内容は創作に基づいて構成されています。

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