ときめきトゥーシューズ #毎週ショートショートnote
約400字・ショートショート
押し入れの隅っこで、古い靴箱を見つけた。
中には、ふにゃふにゃの靴があった。何度も縫った跡があって、触ったらザラザラした。
「これ、ママの靴?」
ママは少し照れた顔で笑った。
「そうよ。バレエのトゥーシューズ。これを履いてた頃は毎日がときめきの連続だったなぁ」
その時のママの笑顔は、お花みたいに綺麗だった。
ある日、私はママに内緒でその靴を履いてみた。
私の足には大きくて、パタパタとうるさい。
お姫様みたいになれるかと思ったのに、ママの言う「ときめき」はどこにもなかった。
頑張って踊ってみたら変な体操みたいになってしまって、そのとき。
ガチャリと玄関のドアが開いてパパが帰ってきた。
「ただいまー。えっ、な、なんで!?」
仕事の鞄をドスンと床に落として、パパが崩れ落ちた。
それからパパは両手を握りしめて、「んあああ! 娘が可愛すぎるぅぅ!」と叫んだ。
そうか。
このトゥーシューズは、私じゃなくてパパをときめかせる靴だったのか。

