ショーケースのスラブの裏に――委託品に込められた想い
ショーケースの中に並べられているコインは、大きく二種類に分類できます。
一つは会社所有のコイン。
もう一つは、コレクター様からお預かりして並べている「委託品」と呼ばれるコインです。
私はスラブケースの裏に、小さな丸いシールを貼って区別していました。
⸻
お客様がそのシールのついたコインを気に入られた場合、
まずはコレクター様にご連絡を差し上げます。
「今、お考えくださっているお客様がいらっしゃいまして
お値段交渉に入っているのですが
このまま予定通りの価格で販売してもよろしいでしょうか?」
コレクター様のお考えによっては、
「少し値引きしてもかまわないのでできるだけ早めに販売してほしい」とおっしゃられることもありました。
けれど、多くの場合は「お任せします」とお答えくださいます。
そのお言葉が、何よりプレッシャーでもありました。
ですが同時に――それだけご信頼をいただけているという証でもあります。
だからこそ、再考を重ね、自分なりの答えを出してご説明させていただくのです。
⸻
欲しくなるコインというのは、単に「値段」だけの問題ではありません。
やはり「ご縁」あってのことなのだと思います。
私の場合は、最初から良いものを扱わせていただいているという
「仕入れに対する信頼」がありました。
ですから、さらに価値を詳しくご説明させていただくことはあっても、
お値引きすることはほとんどありませんでした。
ご納得いただいたコインは、すでにお客様とのご縁が繋がっているように感じます。
⸻
お客様は、そのコインの背景や価格の意味を知りたいのであって、
単に「値引き」を求めていらっしゃるのではない――
私はそう感じています。
私たちコインコーディネーターの役割は、
お客様が何に不安を感じ、どこで迷っていらっしゃるのかを
お話の中からつかみ取ること。
ご質問を重ね、的を得たお応えを返していく。
その積み重ねの先に、ご信頼をいただき、
お任せいただける関係が生まれていくのだと思います。
⸻
委託品も仕入れ品も、どちらもご縁あって
私の手元からお客様へ「お嫁入り」することに変わりはありません。
ただ、委託品の場合は「お預かりして販売代行する」という立場から、
まるで“養母”のような気持ちで、その役目を果たしてきたように思います。
どちらのコインも、末永く大切にしていただけることを願ってやみません。
