愛妻家のコイン選び

ある日、60代の男性のお客様が初めてご来店くださいました。
ご自身でお仕事をされている方で、物腰のやわらかい、とても誠実そうな方でした。

お話をうかがっていく中で、3年前に最愛の奥様を病気で亡くされたことを、静かに語ってくださいました。
それ以来、毎日、奥様の好きだった薔薇の花をお仏壇にお供えし続けていらっしゃるとのこと。
その想いの深さに、私は胸がぎゅっと締めつけられるような気持ちになりました。

そんな中、初めてのコインを選ばれる際に、その方はこんなふうにおっしゃったのです。

「この薔薇の花がデザインされたコインにします。
これを仏壇に供えて、家内には綺麗に輝くコインの中の薔薇を、いつでも眺めていられるようにしてあげたい。」

その言葉に、私は言葉を失いました。
こんなに深く、やさしい愛し方があるのだと、心の底から感動しました。

そして帰り際に、少し照れたように笑いながら、こう続けられました。

「これで、生花の薔薇を供えるのは、お役御免にしてもらいますよ。」

選ばれたのは、金色に輝くモダンコイン。
近年発行された記念コインで、薔薇の花が美しくデザインされた一枚でした。

モダンコインは、比較的新しいものが多く、デザイン性に優れたものも多いです。
特にゴールドの輝きは、現代的な美しさと重厚感があり、お仏壇にお供えするにふさわしい品格があります。

コインを「お供え」として選ばれる──
その発想は、私にとって初めてのものでしたが、
奥様への深い想いが伝わってくるようで、心が温かくなったのを今でもよく覚えています。

ご夫婦の愛の形が、こうして一枚のコインに込められたこと。
それをそっとお手伝いできたことを、私はとても光栄に感じました。

奥様も天国でお喜びのことと思います。

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