東京コイン商初訪問シリーズ第1話 一本の電話から動き出した旅
アンティークコインショールームの電話予約を受ける。
実は以前の私にとって、とても好きな仕事の一つでした。
初めてお電話をくださるお客様は、こちらの反応を全身で受け止めようとしてくださっている。
私はいつも、そう感じていました。
だからこそ、お姿が見えなくても誠意が伝わるように。
安心していただけるように。
そんな思いで、一件一件のお電話に向き合っていました。
「伝わった。」
そう感じられた瞬間は、何より嬉しい時間でした。
だからこそ、今度は私が予約のお電話をかける立場になったとき、その第一歩は想像していた以上に大きなものでした。
私でも予約はできるのだろうか。
どのように伝えればよいのだろう。
何から話し始めればいいのだろう。
こちらのことは、どこまでお伝えすればよいのだろう。
そもそも、初めて訪問する人は、どのように予約を取っているのだろう。
考えれば考えるほど、電話をかける指が止まってしまいました。
最初の一本をかけるまで、実は一か月ほどかかりました。
けれど、考えているだけでは何も始まりません。
「聞いてみなければ、わからない。」
そう自分に言い聞かせ、伝えたいことをメモにまとめました。
そして、深呼吸をひとつ。
平常心を心がけながら、ゆっくりと電話をかけました。
最初にお伝えした言葉は…
「アンティークコインには
初めてに近いくらいの知識しかありませんが、実物を拝見してお話を伺うことは可能でしょうか。」
すると、お電話口の担当様は、たどたどしい私の言葉にも、とても優しく対応してくださいました。
こちらの不慣れさを急かすことなく、落ち着いて受け止めてくださったことが、まずありがたく感じられました。
さらに予約時間についても、会社としてのご事情を丁寧にご説明くださり、そのうえでこちらの希望にも耳を傾けてくださいました。
一方的に決められるのではなく、こちらの事情も大切にしてくださったことに、深い安心感を覚えました。
そのやり取りの中で、私は自然と、
「このようなところなら、実際に行ってみたい。」
そう思わせていただきました。
もし伝わらなければ、それもまた勉強。
次のお店で学ばせていただこう。
そんな気持ちで思い切ってかけた一本の電話でしたが、実際には、その瞬間からすでに温かい学びをいただいていたのだと思います。
電話でお話ししているうちに、予約を受けていた頃の記憶が自然によみがえってきました。
私は、お客様からのお電話を受けていた頃、これほど緊張していたのでしょうか。
忘れていただけで、きっと同じように緊張していたのかもしれません。
でも、その緊張以上に、
「今日はどのようなお客様とお話しできるだろう。」
「どのようなご質問をいただくだろう。」
「どうすれば安心していただけるだろう。」
そんなワクワクした気持ちが、いつも勝っていたように思います。
電話をかける私と、電話を受けていた私。
二つの記憶が重なり合い、あの頃の自分と再会したような、不思議で懐かしい感覚に包まれました。
電話を切ったあと、思わずほっと胸をなで下ろしました。
第一関門突破。
少し大げさに聞こえるかもしれません。
けれど、私にとっては、それほど大きな一歩でした。
この一本の電話が、東京コイン商初訪問の物語の、本当の始まりだったのです。
次回は、いよいよ初めて訪れたコイン商で感じたことを綴らせていただきます。
dear antique coin
アンティークコインコーディネーター
開堂 あおい
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