月光
窓ガラスの向こうに、透明な灯りが浮き出ている。
夜中に目覚めたとき、カーテンを引かない部屋に、あるいは引いたはずの隙間から、そっと流れ込んできた白い光。それは街全体を覆っていた。月が、とても高いところから、平等に降らせている灯り。冷たくて、それでいて柔らかい。
街は冴えていた。建物も、道路も、一本一本の街路樹さえも、その輪郭が明らかに見える。昼間とは違う。昼間の光は物を照らすけれど、この透明な灯りは、すべてを無色透明に変えてしまう。何もかもが、本当の姿を見せている気がした。
初めて息をのむような月の夜を見たのは、いつだろう。
覚えているのは、その瞬間の沈黙だけだ。音も消えて、世界が息を止めているようだった。窓枠の向こう、月は動かず、光だけが静かに降りてくる。私は、その下にいるのか、その上にいるのか、わからなくなっていた。
あれ以来、月の光を見るたびに、その夜に連れ戻される。
