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映画「10ダンス」と「Shall we ダンス?」のはなし2

さて約束通り、映画『10DANCE』の話をしよう。

まずはご存知の方も多いだろうが、基本的な情報を軽くまとめておく。
Netflix映画『10DANCE』は著名俳優を主役に起用し、配信初週で週間グローバルTOP10(非英語映画)4位、日本では配信翌日にデイリー1位の記録を出した。
競技ダンスの世界という題材選びと主演俳優の美しさ、LGBTQを絡めた物語性が見事に噛み合ったのが理由の1つだと思われる。
素直に数字だけ見ればヒット作と言っていいだろう。

ただ、僕が最初にやろうとしたのは前回の記事で書いた平成と令和の興行成績比較だった。
そしてまず平成の『Shall we ダンス?』と並べようとすると最初につまずく点があった。
実はこの2本は同じ土俵の数字を持っていない。
少し考えれば当たり前だったのだが、片方は映画館のデータをもとにした配給収入16億円という絶対値、もう片方はネットフリックスが初期に公表した順位が「ヒットした程度」の指標なのだ。
映画『10DANCE』には映画館で上映した結果としての興行成績が存在しないので、数字の比較そのものが成立しない。
我ながら調べる前にすぐ気がつくべきであった。

その上で業界の人間として言っておきたいことがひとつある。
映画『10DANCE』に初心者は1人も出てこない。
登場するダンサーは皆が皆、完成された状態での美しさを披露している。
お互いの技術交換という要素はあれど初心者が成長する物語ではなく、出来上がった美術品を眺める感覚に近いため同じ社交ダンス映画でも『Shall we ダンス?』とはアプローチがほぼ真逆と言って良い。
最もわかりやすいのは主人公が誰かという点で、平成は素人のおじさんなのが令和はラテン日本チャンピオンとスタンダード日本チャンピオンかつ世界2位となっている。
前者は自己投影の、後者は憧憬の対象であり、役としてのビジュアルもこれを反映して全く異なる。

僕は役所広司さんはかなりカッコいい人だと思うが、映画の主役としての役どころは日常に空虚感を覚えた中年サラリーマンであり、どこかくたびれた雰囲気を感じさせるものでなければならなかった。
そうでなくては不特定多数の人に「あるある」と感じてもらえないからだ。
対して、竹内涼真さんや町田啓太さんは「この人たちを格好悪いと言う人がいたらぜひ教えて欲しい、理由を聞きたい」と思う位のビジュアルの持ち主である。
役どころとしても日本や世界のトップと言う扱いであるゆえ、近寄りがたさや威厳、美しさといったものが存分に表現されるものであったと思う。
こういう美しい人間同士の絡みが熱狂の対象として見られると言うことだ。
そしてこれは「配偶者以外の異性と踊る社交ダンスが恥である」という価値観が「同性同士の踊る社交ダンスは美しいもので恥でもなんでもない」という価値観へ変化したという背景がなければ成立しない話でもある(ようやく前回のまとめの引き継ぎ)。

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