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無防備と完全(万全)武装、そしてその間

 軍備というものを考える時、そもそも軍備は必要なのか不必要なのかという根本問題がある。しかし、それは、「性善説と性悪説」「理性と反理性」といった二元論に帰結してしまいがちだ。

 今の世界の中の日本で、「軍備」を考える最初の一歩として、「完全無防備」と「完全武装(もしくは万全武装)」の両極を並べて、どちらに与するのか、あるいは両極の間のどこが現実的と思うのかといったところから考える必要があると思う。

 そこで、両極論をあげてみる。

完全無防備主義(究極の非武装平和主義)
 自衛隊すら廃止し、日本は一切の軍事力を放棄する。「武力は一切使わない」という立場を徹底したもの。

●主な内容・政策
・自衛隊の完全廃止(陸海空すべて解体)
・憲法第9条をさらに強化し「いかなる場合も武力による威嚇・行使をしない」と明記
・敵が攻めて日本に上陸しても武力抵抗せず、即時降伏・非暴力抵抗のみ
・全国すべての都市を「無防備都市宣言」し、ジュネーブ条約に基づく保護を求める
・核兵器を含むすべての兵器の製造・保有・研究を永久禁止(法律で禁止)
・防衛予算をゼロにし、その財源を教育・医療・福祉に全額振り向ける
・日米安保条約の即時破棄(米軍は「日本を守るための軍事力」なので不要)
・国連や国際司法裁判所への絶対的信頼(紛争はすべて国際法で解決)
・徴兵制どころか、自衛のための武器所持(拳銃すら)も禁止

この立場の主張例:
「日本が完全に無防備になれば、侵略する側に道義的責任が生じ、国際社会が必ず守ってくれる」
「死んでも戦わない方が、長期的に人類の平和に貢献する」

万全武装主義(完全軍事大国路線)
 日本は「いついかなる脅威にも即座に圧倒的に対処できる軍事大国」になるべきだという立場。憲法第9条は完全に改正し、普通の国と同じ軍隊を持つどころか、超一流の軍事力を目指す。

●主な内容・政策
・憲法第9条の完全削除または「自衛権の行使に一切の制限なし」と改定
・陸海空+宇宙軍+サイバー軍+ミサイル軍による「六軍」体制の構築
・核武装の実行(最低でも数百発の核弾頭を保有、潜水艦発射核ミサイルも配備)
・敵基地攻撃能力どころか「先制攻撃能力」の明記(脅威があれば先に叩く)
・徴兵制の復活(18歳以上の男女に2年間の兵役義務)
・国防予算をGDPの5~7%(現在約1%→約50兆円超)まで引き上げ
・日米同盟は維持しつつ、日本が主導権を握る(米軍は日本を守るのではなく、日本軍と共同作戦)
・独自の軍事衛星網、ステルス爆撃機、空母打撃群×3~4群、極超音速ミサイルなどの最先端兵器を大量配備
・「日本が攻撃されたら相手国の主要都市を壊滅させる」と明言する報復戦略

この立場の主張例:
「日本が核武装し、圧倒的な軍事力を持てば、中国も北朝鮮もロシアも絶対に手を出せなくなる」
「平和を望むなら、戦争に勝てる準備をしておけ。それが真の抑止力だ」

【追記】

歴史的に見た両極の立場の国家の運命

 前回の二つの極論(完全無防備主義 vs 万全武装主義)を歴史的に検証すると、純粋な極論を貫いた国家は極めて稀です。
 ほとんどの国は「ある程度の軍事力は持つが過剰度はしない」という中間路線を取っており、両極端は現実的には「成功例が少なく、失敗例が多い」のが実情です。

① 完全無防備主義(軍隊すら廃止・徹底非武装)に近い例

成功例(現在も存続・繁栄している)

•  コスタリカ(1948年~現在)
1948年の内戦勝利後、新大統領ホセ・フィゲーレスが軍を完全廃止し、憲法で永久に禁止。防衛予算を全額教育・医療・環境に振り向けました。
→ 結果:中米で最も安定した民主主義国家・幸福度世界トップクラス・平均寿命も高い。75年以上一度も侵略されていません。
(ただし米国との密接な関係・地理的要因・近隣国がそれほど脅威でないことも大きい)

•  アイスランド・モナコ・アンドラ・リヒテンシュタイン・サモア・ツバルなど21カ国
現在軍隊を持たない国々はすべて侵略されずに存続しています。
理由:①小国・島国である②大国(米国・フランス・スイスなど)と防衛協定がある③経済的価値が低い・侵略するメリットが少ない

失敗例(ほぼ存在しない) 現代史で「軍を完全に廃止した後に侵略・征服された国家」はゼロです。

「だったら無防備でいいじゃないか」と思われるかもしれませんが、実際には誰も本気で試していないのが実態です。中国やロシアに囲まれた位置で軍を廃止した国は歴史上存在しません。

近い例として挙げられるのは

•  1950年のチベット
実質的な軍事抵抗を放棄(ダライ・ラマは非暴力を徹底)→ 中国人民解放軍にほぼ無抵抗で占領・併合され、現在も実効支配されています。

•  1940年のデンマーク
軍はあったが圧倒的に弱く、実質的な抵抗を即座に放棄 → ドイツに数時間で降伏・占領(ただしユダヤ人の9割以上が生き延びたという皮肉な結果)

結論:完全無防備主義は「大国に守られているか、侵略する価値のない小国」でしか成功していません。地政学的に危険な場所では誰も試していない=試したら即滅亡する可能性が極めて高い。

② 万全武装主義(軍事優先・核武装・巨額軍事予算)に近い例

失敗・崩壊例(圧倒的多数)

•  ナチスドイツ(1933~1945)
超軍事大国化(GDPの20%以上を軍事費に)・先制攻撃能力・報復戦略を徹底 → 12年で欧州征服→連合軍に完膚なきまでに叩き潰され、国家自体が消滅(現在は分割統治から復活したが軍事力は大幅制限)

•  大日本帝国(1930~1945)
「富国強兵」→ アジア最強の軍事大国・空母打撃群・極超音速兵器に相当する技術も保有 → 結局アメリカに完敗・首都壊滅・原爆2発・無条件降伏・軍隊永久放棄(現在の平和憲法の原点)

•  ソ連(特にブレジネフ~ゴルバチョフ時代)
GDPの15~20%を軍事費に投入・核弾頭3万発以上・世界最大の戦車軍団 → 経済が完全に破綻・1991年国家崩壊・15カ国に分裂

•  スパルタ(古代ギリシア)
全市民が生涯軍人・徴兵制・被征服民(ヘロット)を10倍以上抱えた極端な軍事国家 → テーバイに一戦で敗北→ その後二度と復活せず消滅

「成功」しているように見える例(ただし国民は苦しんでいる)

•  北朝鮮(1995年~現在、先軍政治)
GDPの25~30%(推定)を軍事費に・核武装完全達成・徴兵制10年・国民皆兵状態
→ 結果:誰も侵略できない「抑止力」は完成
しかし国民は慢性的飢餓・経済は50年遅れ・大量の餓死者・脱北者続出
「国家体制は存続しているが、国民の生活は地獄」という極端な例

•  パラグアイ(フランシスコ・ロペス時代 1864~1870)
南米最強の軍事大国化(人口の8割が成人男性を兵士に)→ 三国同盟戦争で挑発 → 人口の60~90%が死亡(史上最悪レベルの人口減少)・国家ほぼ消滅

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