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なぜ、流れを戻せず迷走してしまうんだろう?~小さな変化のつもりだったのに~

崩れる前へ一度戻せるDJと、次々に変えてしまうDJの違いという仮説

延べ1000回以上クラブへ通い、客として多くのDJを聴いてきた中で、上手いDJほど、意外なほど大きく変えないように感じることがあります。

もちろん、まったく変化がないわけではありません。むしろ細かな変化は、ずっと起きています。

ただ、フロア全体から見たときに、その変化が一つの流れとして受け取れる範囲に収まっている。

そのように感じるのです。

一つの時間で扱う大きなテーマは、せいぜい二つ

私がこれまで体験してきた中では、上手いDJほど、一つのセッションで扱う大きなテーマが少ないように感じます。

たとえば、

プログレッシブハウス → ヒップホップ

というような、誰が聴いても分かる大きな変化があったとしても、せいぜい二つ程度です。

一方で、

ジャンルA → ジャンルB → ジャンルC → ジャンルD → ジャンルE → ジャンルF → ジャンルG

というように、短い時間の中で次々と大きな方向転換が起きることは、あまりありません。

私が上手いと感じるDJの時間は、むしろ次のような印象です。

ジャンルA → ジャンルA → ジャンルA → ジャンルA → ジャンルA → ジャンルA

明確な区切り。そして

ジャンルB → ジャンルB → ジャンルB → ジャンルB → ジャンルB → ジャンルB

へと移っていく

もちろん、これは実際に同じ曲や、まったく同じ音が続いているという意味ではありません。

客側から見たときに、同じ大きな流れの中にいられるという意味です。

同じジャンルの中でも、音はずっと変化している

同じジャンル内で進んでいるように感じても、細かな要素は変化しています。

  • キックの硬さや重さ

  • BPM

  • ベースの動き

  • シンセの音色

  • ハイハットの有無

  • 音の密度

  • 明るさと暗さ

  • 浮遊感

  • ボーカルの有無

  • ブレイクの長さ

  • 音の広がり

  • 緊張感

  • 解放感

挙げ始めれば、ほかにも無数にあると思います。

私はDJ技術の専門家ではないため、ブース内で何を操作し、どのような技術判断をしているかは説明できません。

ただ、客として聴いていても、曲が変わるたびに何らかの違いが生まれていることは分かります。

すべての要素が一切変わらないまま進むことなど、ほとんど不可能でしょう。

つまり、同じ大きな流れの中でも、微弱な変化は常に起きている。

上手いDJは、その微弱な変化を積み重ねながら、時間を前へ進めているのではないでしょうか。

問題は、小さな変化のつもりが大きく届いたとき

フロアに違和感が生まれるのは、変化そのものが起きたときではありません。

変化量が、客の身体にとって大きすぎたときではないかと思います。

DJ本人としては、小さな変化のつもりだったのかもしれない。

同じジャンルの範囲内だと思っていたのかもしれない。

前の曲とのつながりも、十分にあると考えていたのかもしれない。

しかし客側では、

「急に違う場所へ連れていかれた」

と感じることがあります。

さっきまで自然に動いていた身体が、一瞬止まる。

次にどう踊ればよいか分からなくなる。

周囲を確認するように、視線が散る。

それまで音へ向いていた集中が、会話やスマートフォンへ移る。

少しずつフロアから離れる人が出てくる。

こうした変化は、必ずしもジャンルが大きく変わったときだけに起きるわけではありません。

キック、BPM、音の密度、明るさ、展開速度など、複数の細かな違いが重なり、客側では大きな変化として届く場合もあるのではないでしょうか。

変化が大きくても、予兆があればついていけることがある

変化量が大きければ、必ずフロアが崩れるとも思いません。

かなり大きな方向転換が起きたのに、不思議と身体の流れが途切れないことがあります。

その場合、変化の前に何らかの予兆が用意されているように感じます。

  • 少しずつ音色が変わっていた

  • リズムの取り方が変わり始めていた

  • 音の密度が調整されていた

  • 一度、区切りとして受け取れる時間があった

  • 次の方向を受け入れるための準備が、数曲前から始まっていた

客側では、何が起きるかを正確に予測しているわけではありません。

それでも、

「そろそろ何かが変わりそうだ」

という感覚が身体の中に生まれることがあります。

その準備があると、大きな変化でも自然に受け取れる。

反対に、変化量がそれほど大きくないはずなのに、予兆がないために唐突に感じることもあります。

問題は、単純な変化量だけではありません。

変化量と、その変化を受け取るための準備の組み合わせなのかもしれません。


一流と三流を分けるのは、崩れた後ではないか

どれほど上手いDJでも、すべての変化が想定どおりに届くとは限らないと思います。

客層も違う。

時間帯も違う。

前のDJが作った流れも違う。

音響や混雑具合も違う。

DJ本人が小さな変化だと思っていたものが、客側では大きく感じられることもあるでしょう。

だからこそ、差が出るのは、フロアが崩れ始めた後ではないかと思います。

客の身体が止まった。
集中が散った。
前方の人数が減った。
変化についていけない空気が生まれた。

そのとき、一度戻せるのか。

それとも、次々に変えてしまうのか。

ここに、一流と、まだ改善の余地があるDJの大きな違いが表れるように感じます。

一度戻すDJ

上手いDJは、流れが崩れ始めたとき、一度戻しているように感じることがあります。

ここでいう「戻す」とは、まったく同じ曲へ戻すという意味ではありません。

崩れる前に客が身体を預けられていた、

  • リズム

  • 強さ

  • 音の密度

  • 分かりやすさ

  • 安心感

  • 大きなテーマ

のどこかへ、一度戻るという意味です。

客の現在地まで戻り、再び足場を作る。

身体がもう一度動き始めるのを待つ。

フロアの集中が戻ったことを確認する。

そのうえで、改めて次の変化へ進む。

客側から見ると、立て直されたことすら強く意識しない場合があります。

気づけば、また自然に踊っている。

気づけば、さっきの違和感が消えている。

そして後から振り返ると、別の場所まで連れてこられている。

一度戻ることは、後退ではないのでしょう。

もう一度前へ進むために、フロアとの接点を作り直すことなのだと思います。

迷走するDJ

一方で、フロアの反応が弱くなったとき、次々に別の可能性を試し始めるDJもいるように感じます。

この曲ではない。
では、もっと強い曲を。
それでも反応が弱い。
では、有名な曲を。
まだ戻らない。
では、別のジャンルへ。
さらにマイクであおる。
もっと大きく身体を動かす。

客側から見ると、何を基準に踊ればよいのかが、ますます分からなくなっていきます。

ジャンルAからBへ移ったことが問題だったとしても、その直後にC、D、Eと変えてしまえば、どこで接点が切れたのか分からなくなります。

DJ本人も、何が届き、何が届かなかったのかを確認できなくなるのではないでしょうか。

変化を重ねるほど選択肢は増えているように見えます。

しかし実際には、原因を見つけるための情報が失われていく。

これが、私が感じる「迷走」です。

強い曲で上書きすることと、立て直すことは違う

フロアの反応が弱くなったとき、強い曲を出せば、一瞬大きな反応が起きることがあります。

有名曲で歓声が上がる。

ブレイクで手が上がる。

MCの声に合わせて客が反応する。

しかし、その直後に身体の動きが止まり、また人が離れていく場合もあります。

これは、立て直せたというより、崩れを一瞬だけ見えなくした状態なのかもしれません。

本当に立て直されたときは、一瞬の歓声だけではなく、

  • 身体の動きが自然になる

  • 踊りが数曲続く

  • 視線がフロアへ戻る

  • 周囲へ参加が広がる

  • 前方へ進む人が増える

  • フロアへ戻ってくる人がいる

といった変化が起きるように感じます。

大きな反応を起こすことと、フロアとの接点を取り戻すことは同じではありません。

戻るためには、自分の失敗を認める必要があるのかもしれない

一度戻るという判断は、簡単ではないのかもしれません。

自分が進めようとした方向を、いったん止める必要がある。

選んだ曲や展開が、今のフロアには届かなかった可能性を受け入れる必要がある。

予定していた流れよりも、目の前で起きている現実を優先する必要がある。

客の反応を、自分への否定として受け取ってしまえば、戻ることは敗北のように感じられるかもしれません。

だから、さらに強い曲を出して証明したくなる。

もっと大きな変化を入れて、状況を上書きしたくなる。

しかし一流のDJは、届かなかったことを自己否定ではなく、現場から返ってきた情報として扱っているのではないでしょうか。

戻ることは、自信がないからではない。

現実を見たうえで、最も早くフロアとの接点を回復させる判断なのかもしれません。

変化が少ないのではなく、変化を細かく扱っている

上手いDJは変化量が少ない。

最初は、そのように見えていました。

ただ、より正確に言えば、変化が少ないのではないのかもしれません。

大きなテーマを頻繁に変えず、その中で微弱な変化を細かく積み重ねている。

そして一つ一つの変化が、フロアへどのように届いたかを見ている。

想定以上に大きく届いたときは、一度戻す。

接点が戻ったことを確認してから、改めて進む。

変化を起こす力だけでなく、変化量を測り、戻し、再び育てる力まで含めて、流れを作る力なのではないでしょうか。

崩れたとき、戻せるか

変化すること自体が問題なのではありません。

同じジャンルの中でも、音は常に変わっています。

ジャンルを大きく変えることが、悪いわけでもありません。

問題になるのは、自分では小さな変化のつもりだったものが、客側では大きな変化として届いたとき。

その変化を受け取るための予兆が足りなかったとき。

そして、フロアとの接点が崩れ始めたあとです。

そこで一度戻れるのか。

崩れる前の足場を見つけられるのか。

客が再び身体を預けられる状態を作れるのか。

それとも、答えを探して次々と変え、さらに現在地を見失ってしまうのか。

一流と三流を分ける違いの一つは、流れを変えられることではなく、崩れた流れを一度戻して立て直せることにあるのではないか。

現時点では、私はそう考えています。


異なる体験や視点を教えてください

これは、延べ1000回以上クラブへ通ってきた一人の客として、複数のフロアを比較する中で生まれた観察と仮説です。

私はDJ技術の専門家ではないため、DJがブース内でどのような判断や操作をしているのかは分かりません。

また、フロアの反応には、ジャンル、時間帯、音響、客層、前後のDJなど、別の条件も影響している可能性があります。

DJ側から見たとき、フロアとの接点が崩れたことを、どのような変化から感じ取るのでしょうか。

そして、一度戻す判断と、そのまま進む判断を、どのように分けているのでしょうか。

異なる経験や、今回の仮説に当てはまらない事例も含め、ぜひ教えてください。

音好きにとって、たまらないフロアがもっと増えていくことを願っています。


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