選挙のために災害を利用する議員たち
台風の接近や大地震の発生時、昨今の熊出没時の注意喚起。
SNSを開くとタイムラインを埋め尽くす議員たちの投稿。
「命を守る行動を!」「避難所の確認を!」といった、お決まりのフレーズ。そして、ヘルメットや防災服を着用した議員たちの、どこか神妙な面持ちの自撮り写真。
災害という「非日常の有事」は、一部の地方議員にとって、手軽に存在感を誇示できる格好の「やってますアピール」の場と化している。
普段の議会活動が目立たない議員にとって、災害時の発信には都合の良い条件が揃っており、まず、「避難してください」という発信は100%正しい正論であり、政策論争のように反対派から批判されるリスクがなく、役所の対策本部周辺の写真をアップするだけで、有権者に「危機に直面して働いている」という強い視覚的印象を植え付けることが可能だ。
誰もが情報を探す災害時は、アルゴリズムの恩恵も受けやすく、普段の政治的主張よりも圧倒的に多くの「いいね」やシェアを獲得しやすい。
1.情報の二番煎じと現場の足手まとい
しかし、こうした「やってますアピール」の多くは、住民の命を救うどころか、むしろ現場の足引っ張りになっている。
行政の公式発表を数時間遅れでコピペしただけの投稿は、タイムラインのノイズとなり、デマや情報の錯綜を生む原因になり、さらに深刻なのは、「状況を確認しに来た」と称して、ただでさえ修羅場と化している役所の窓口や被災現場に乗り込む「議員視察」だ。
過去の震災や豪雨災害でも繰り返されてきた問題だが、現場の職員に声をかけ、作業を中断させ、自分のための「寄り添う写真」を撮影して帰る行為は、実質的な足手まといでしかない。
東京の官邸で不自然に防災服を強調する演出や、被災地で長靴を履かずに職員におんぶされた過去の政務官の例など、パフォーマンスが先行する姿は、有権者に強い不快感と冷ややかな目で見られる結果となっている。
一方で、SNSのすべてが悪というわけではない。
行政のフォロワーが少ない地域において、独自の地元ネットワークを駆使し、「〇〇避難所はすでに満車」「あの道路は冠水で不通」といったリアルタイムの補足情報を流す実務型の議員も存在する。
また、被災者の「物資が足りない」という声を裏方で吸い上げ、行政との調整役に徹する議員の存在は貴重なのだ
2.アピール型と実務型を見分ける
では、有権者は「自分の宣伝のために災害を利用する議員」と「本当に地域のために動いている議員」をどう見分ければよいのだろうか?
ポイントは発信の「中身」にある。
パフォーマンス優先の議員
発信内容
公式情報の単なるコピペや「気をつけて」という精神論。
ビジュアル
自分の顔や、自分が写っているポーズ写真がメイン。
災害の後日
喉元過ぎれば熱さを忘れる。日常に戻ると防災の話はしない。
3.有権者に求められる「平時の目」
目立つパフォーマンスや、威勢のいいSNS発信が選挙で票に結びつきやすい構造がある以上、議員達の「やってますアピール」が自然に消えることはあり得ない。
だからこそ、有権者のリテラシーが問われることになり、災害時に「動いている風」の姿だけを見て評価するのを止めるべきなのだ。
本当に大切なのは、その議員が「平時にどんな政策を掲げ、議会でどんな発言をし、具体的に予算確保や条例改正という成果を出しているか」という、地味な日常活動だ。
災害時は特に、「自分が目立つこと」ではなく「住民が助かること」が最優先されるべきで、被災者の苦境を自身の存在証明に利用するような政治家を淘汰し、裏方で地味に成果を出す仕事を正当に評価できる「冷徹でスマートな有権者の目」こそが、地域の防災力を高める最大の防衛策となる。
