見出し画像

【試写】軍艦島よ 永遠に(NHKアーカイブス)より「緑なき島」と捏造問題

NHKが捏造報道によって国益を損ねた「緑なき島」問題を巡って新たな動きがありました。元島民らが主体となって、検証番組を制作するクラウドファンディングを開始したのです。

私も早速、なけなしの1万円を寄付しました。

と同時に、以下のようなコメントを残しました。

本来はNHKの職員・OBが自費で制作すべきです。特に、当時を知るはずのOBはなぜ沈黙し続けるのでしょうか?応援していますし、可能な限り制作実務のサポートもします。

私のコメント

なぜ私がこんなことをコメントしたかというと、NHKが会長の謝罪を報じないばかりか、職員もOBも検証番組を制作しようとさえしていないことに苛立ちを感じていたからです。

NHKは「日本の視座」を伝えることを経営計画にも明記していますが、この問題は明確に「日本の視座」に反している上に、国益を大きく損ねてもきました。

受信料を徴収しておいて捏造報道で国益を損ねるなどあってはならないことで、放送から何十年経とうと責任の所在を明らかにするのが報道機関に本来求められる責任の取り方のはずです。

「緑なき島」とは

この「緑なき島」を論じるにあたり問題がありました。一体、どんな映像だったのか確認しようにも試写するすべが無かったのです。

途方に暮れていたところ、思わぬ形で事態が解決しました。

Amazonマーケットプレイスに3万円で出品されていたのです。

実は、これはNHKエンタープライズ(NEP)が軍艦島・廃墟ブームに乗じて2015年末に発売した正規版のセルDVDで、件の「緑なき島」と、1979年に放送された「科学ドキュメント 風化する軍艦島」が収録されています。

ちなみに、「緑なき島」は昭和30年(1955年)11月17日にNHK総合テレビで放送されたと表記されています。

当時は、電気洗濯機、電気冷蔵庫、テレビが「三種の神器」と呼ばれ、日本初のトランジスタラジオが発売されたころ。NHK関係者で言えば、悪名高き専務理事・竹村範之の生年でもあります。

戦後復興が加速し、社会の歪みも次第に表出し始め、少年の自殺が相次いだとも言われています(「はだしのゲン」の後半のころですね)。

そんな時代に作られた映像だという前提で、読者の皆さんも以下をご一読ください。

番組総評

NHK短編映画「緑なき島」

正確性:★☆☆☆☆
速報性:★☆☆☆☆
公平性:★☆☆☆☆
演出的工夫:★★☆☆☆
NHKらしさ:★★★☆☆

合計:8/25点
オススメ度:★★☆☆☆

かつて海底炭鉱で栄えた長崎県の端島(通称:軍艦島)における住民の生活を記録した映像。

日本の近代化、戦後復興を支えた石炭産業の最前線であった端島を舞台に、自然から切り離された特異な環境下で営まれた人々の日常生活、労働の厳しさの中に垣間見える細やかな喜びや自然への憧憬を対比させながら映像は進行する。

道がすべて舗装されており、雑草も生えないことが「緑なき島」の所以だという。

映像冒頭は、長崎から南西17kmの海上に浮かぶ、完全に人工的に造成された島の姿から始まり、戦時中にはその密集した高層アパート群の外観から米軍に軍艦と誤認されたという逸話が紹介される。

さらに続くナレーションではこの島がただ海底の石炭を採掘するためだけに存在すると位置付け、以後、島での生活の過酷さとわびしさにフォーカスを当て続けるのが本番組の特徴と言える。

約18分オールコメント。

試写した上での感想

正直に感想を述べると、これまでの報道から抱いていたイメージとは全く異なる番組だった。

戦中の話はほとんどなく、戦後復興が進む中、石炭採掘のためだけの島に押し込められた人々の侘しさにフォーカスを当てた番組だとは思っていなかった。

また、18分オールコメントというのも異様だ。住民のインタなど、本来あるべき素材が全く無い。

NHKのロケクルーと島民の間には明らかに距離感がある。

特に島内の雑感カットは、ほとんどズーム(長玉)で隠し撮りしたものばかり。終盤に差し掛かって、手元のアップ等も少しずつ増えてくるが、NHKのロケクルーが歓迎されていなかったことだけはよくわかる。

問題の「捏造」映像

件の映像は番組開始8分頃から始まるシーンに含まれている。

炭鉱内部を紹介する過程で、坑道の狭さを伝えるナレーションと共に、窮屈な炭鉱内で石炭を掘る坑夫や、発破のための穴をドリルで空けるシーンが描かれる。

確かに窮屈そうな鉱山の映像ではある。しかし、悲壮感は無い。

「黒く輝く素晴らしい石炭を掘る坑夫の顔は、さすがに喜びに満ちています」とナレーションは謳いあげる。

ただ、確かに映像には違和感がある。

例えば、外光のカットでさえもかなり暗いのに、炭鉱のシーンは比較的明瞭に映っていて、明らかに照明を仕込んでいることが窺える。

また、ドリルで穴をあける部分の音声は後付けで、現場収録のものではない。

冒頭から映像見ている限り、恐らく軍艦島(端島)坑内の撮影許可が降りなかったか、上手く撮影できずに別の炭鉱でアップのカットだけ撮ったと考えられる。

擁護するわけではないが、「イメージ」と入っていないだけで、この手のカットを再現で見せることは決して奇妙ではない。特に、炭鉱の内部に大きなバリエーションがあるとは、当時の制作者には考えられなかっただろう。

放送倫理も未発達な中、今の時代で言えばアップのカットを別撮りしてインサートする程度のことだったのではないかと私は想像する。

韓国の主張の奇妙さ

正直、「緑なき島」の映像を抜き出してきて、戦時中の朝鮮人労働者への扱いの過酷さを描くのには無理がある。

映像自体、どこからどう見ても昭和30年(1955年)ごろの撮影であり、戦時中の資料にするのは不可能だ。

敢えて理屈を考えるなら、「戦後10年経ってもあれほど過酷だったのだから、戦中はより過酷だったに違いない」ということだろうか?

いずれにせよ、仮に戦中・戦前の軍艦島の労働環境が過酷だったとしても、それを伝える映像として「緑なき島」が相応しくないことは明白だ。

仮に私が制作者だとしても、それはさすがに想定しえないことで、NHK側が頑なに謝罪を拒んだのも一定理解はできる。

実際、「視聴者と語る会」でNHK理事の中嶋は次のように述べている。

(筆者注:「緑なき島」は)捏造ではないかというご指摘ですが、軍艦島を取り上げた「緑なき島」の話については、昭和30年にNHKが出した短編の放送で、これは韓国、朝鮮の方のことを伝えるものでは一切なくて、当時の軍艦島で暮らしていた方々の生活ぶりを放送した風土記的な放送でありました。NHKでは、映像を提供する場合は、きちんと契約を交わして、目的外に使用しないということを明確にしています。

 「緑なき島」の件については、随分以前の話なので、韓国では著作権がもうNHKにはなくて、対処法がとても難しいですが、KBSが、この放送をイベント等に使った際に、目的外使用ではないかと伝えています。ご指摘ありがとうございました。

https://www.nhk.or.jp/keiei-iinkai/hearing/houkoku/2023_02.html

番組自体は確かに中嶋の言う通りであって、幹部連中が不慮の事故かのように振る舞うのも無理はないかもしれない。

NHKの責任

では、NHKの責任はどこにあるのか?

私は、韓国らに隙を与えた点があったとすれば、「緑なき島」に通底するNHKの冷笑主義だと思う。

とにかく、「緑なき島」のナレーションは悪意に満ちている。

・砂浜もなく 緑の木もなく ただ切り立ったコンクリートの岸壁が冷たく船を迎えるばかりです
・わずかな岩間にやっと生き残っているススキも寂しそうです
・緑のない島には小鳥さえも寄り付かず 籠の鳥だけが友達です
・子供たちも嬉々として遊んでいます 谷底のような日の当たらない場所

「緑なき島」ナレーション

いずれも、今の時代に放送したら間違いなくハレーションするような内容のオンパレードだ。

これほど辛い環境だと軍艦島が演出されていたからこそ、「戦時中はもっと辛かったはずだ」と思わせる余地が生まれたのではないか?

往時の軍艦島は、さまざまな証言を総合するに、悲壮感ばかりが際立っていたわけではないようだ。

労働環境は過酷でも、それは復興期の日本全国共通のこと。男たちはカネになる石炭採掘でもって暮らしを支え、女子供は束の間の娯楽に心を躍らせるというのも、ありふれた日本全国で風景だったはずだ。

軍艦島の特異性を描きたいがために、歪んだ自然礼賛の思想のもと、過剰にバイアスをかけて制作したPD・CPのスタンスにこそ責任があるのではないだろうか?

OBの責任

では、この「緑なき島」問題を防ぐ手立てはあったのか?

恐らくチャンスは2回あった。

1回目は、私が購入したDVDにも収録されている「科学ドキュメント 風化する軍艦島」だ。

急速に進む軍艦島の風化を取り扱った1979年の放送だが、この中で「緑なき島」の採掘シーンも資料映像として長く使われている。

このとき、「もしかして、この映像は別撮りでは?」と疑うことができれば、24年前に放送された「緑なき島」の制作関係者は間違いなく存命であり、「イメージ」等のテロップを加えることができたはずだ。

そして、2回目は2015年のDVD販売だ。

軍艦島ブームに乗じて、何も考えずに旧作をアーカイブ化したわけだが、この時にも1カットずつ点検していれば注釈を加える程度のことはできたはずだ。

しかし、NHKアーカイブスの担当者も、NHKエンタープライズの担当者も疑うことさえなく右から左にスルーした。

いまや、「証言」や「伝承」さえも、制作者はその真正性を検証する義務を負うべき時代にあって、たかが20分も無い旧作のカット・ナレーションを総点検する程度のことを怠ったのは明らかな過ちだ。

旧友会の沈黙

加えて、もうひとつ指摘したいのが、OB組織「旧友会」の無責任ぶりだ。

やろうとすれば編集マン・PD(ディレクター)・CP(責任者)を探し出した上で、なぜあんな捏造が起きたのかを明らかにすることだってできたはずなのに、「旧友会」でそうした動きが起きた形跡は無い。

一部、YouTube等の映像で元職員カメラマンやPDが証言しているものがあるが、和田政宗氏が問題提起した程度で、定年退職したOBたちが国益を損ねるほどの罪を清算しようと動いた形跡は無い。

問題がハレーションし始めたとき、即座にOBたち(特に局長級以上)が動けばここまでの事態には発展しなかったのではないか?

私たちの世代が将来受け取るのとは全く比にならないほどの高額の年金を受け取って悠々自適の暮らしを送っているのなら、せめて、少しくらい責任を果たそうとして欲しいものだ。

【メンバーシップ】「緑なき島」台本(AI活用)

最後に、私が再構成した「緑なき島」の台本をメンバーシップ領域に掲載しておきたい。

ここから先は

209字 / 1ファイル

■表向きはどんなメンバーシップか 主にNHK職員(番組制作)などオールドメディアに勤める転職希望者向…

スタンダードサポートプラン

¥500 / 月

メディア関係者のための生成AI活用法 ※コード・プロンプト付

¥1,000 / 月

もし宜しければチップ(サポート)を頂けると幸いです。取材費などNHK健全化の為の取り組みに活用させて頂きます。