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「飲む権利」と「移動の責任」


重度訪問介護の現場から見える社会課題

私は重度訪問介護の仕事をしています。
日常の支援の中で、電動車椅子を使う方が夕食時にお酒を飲む姿は、特別なことではありません。

それは「問題行動」ではない。
それは 普通の生活 です。

しかし社会はどう見ているでしょうか。

「危ないのでは?」
「介助者が止めるべきでは?」
「事故があったらどうするのか?」

こうした声が、当事者の自由を無意識に縛っています。

今日はこの問題を、単なる安全論ではなく、社会課題として考えたい と思います。


1. お酒を飲むことは“健常者だけの権利”なのか?

電動車椅子を使っている人が飲酒すると、
なぜか特別視されます。

しかし考えてみてください。

健常者は、
・仕事終わりに一杯
・友人と乾杯
・家族との晩酌

それを誰も止めません。

なぜでしょうか。

自己決定権があるからです。

では、障がいのある人には自己決定権がないのでしょうか?

答えは明確です。
同じようにあります。

日本は 国際連合 が採択した
障害者権利条約 を批准しています。

この条約の中心思想は、

障がいがあっても、他の人と同じ生活を送る権利がある

ということ。

つまり、
「飲む」ことも生活の一部なのです。


2. では安全はどうするのか?

ここが誤解されやすい部分です。

自由を守ることと、安全を守ることは、
対立するものではありません。

電動車椅子は法律上、歩行者扱いです。
酒気帯び運転の対象ではありません。

しかし、

・判断力低下
・反応速度低下
・平衡感覚の不安定

これらは医学的事実です。

特に高齢の方やフレイル傾向の方は、

転倒 → 骨折 → 寝たきり

という連鎖が現実にあります。

だからこそ重要なのは

禁止ではなく、調整です。

・移動は控える
・介助者が付き添う
・屋内での飲酒にする
・量をコントロールする

これが“支援”です。


3. 本当の社会課題はどこにあるか

問題は「飲むこと」ではありません。

問題は、
障がいがあると

✔ 危険だからやめなさい
✔ トラブルになるから我慢しなさい
✔ 介助者が責任を負うから控えなさい

と、過剰に制限される構造 にあります。

これは、
保護という名の管理です。

重度訪問介護の現場では、
利用者は「生活者」です。

患者ではありません。
管理対象でもありません。

社会がまだそこを理解していない。

それが大きな課題です。


4. 介助者のジレンマ

現場の介護者は葛藤します。

・事故が起きたらどうなるのか
・世間はどう見るのか
・責任は自分に来るのか

その不安が、無意識の抑制につながる。

しかし支援とは、

「止めること」ではなく
「一緒に考えること」です。

リスクをゼロにすることはできません。

健常者も同じです。

事故はゼロではありません。

それでも社会は
健常者の自由を奪いません。

なぜなら、

リスクと共に生きるのが人間だからです。


5. ノーマライゼーションの本質

ノーマライゼーションとは、

「特別扱いしないこと」ではありません。

「同じ選択肢があること」です。

・飲むか飲まないか
・外出するかしないか
・夜に移動するかどうか

選べることが、尊厳です。

安全の名の下に
選択肢を奪うことは、

結果的に社会参加を奪うことになります。


6. 健常者に必要な理解

健常者に必要なのは、

「危ない」ではなく

「どうすれば安全に楽しめるか」

という発想です。

例えば、

✔ バリアフリーな飲食店
✔ 見守り体制のある地域
✔ 歩道環境の整備
✔ 近距離移動の安心設計

社会が整えば、
個人の自由は守られます。


7. だれモビ的視点で考える

移動は単なる移動ではありません。

・社会参加
・自己表現
・生きがい

その延長に、
「一杯のビール」があることもあります。

それを奪わない社会をつくる。

そのために必要なのは、

✔ 理解
✔ 環境整備
✔ リスクマネジメント
✔ 支援の再定義

です。


8. 結論

電動車椅子を使う人が酒を飲むことは、

権利です。

しかし、

安全配慮もまた必要です。

大切なのは

禁止か自由か、ではない。

「どう共に支えるか」です。

障がいがあっても、
普通に飲み、笑い、帰宅する。

それを当たり前にできる社会。

その理解が、まだ足りない。

重度訪問介護の現場から見えるのは、
制度の問題だけではありません。

社会の意識の問題です。

私たちは、
守るために奪うのではなく、

支えるために考える社会へ。

それが、本当の共生社会だと
私は思っています。


だれモビプロジェクト

奇天烈企画
代表 白川 薫
介護福祉士・コンサルタント・電子書籍・プランナー
名古屋市名東区亀の井1-18 101 908
お問い合わせ
daremobility@gmail.com
www.daremobi.net


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