掌編連作【今日も平和に愛でてます】11.「眠り姫」
「眠り姫」
世の中は
太陽さえも
忙しく活動している時間
…ふぅ
ガチャ…
仕事からの解放感と共に
静かに玄関のドアを開ける。
静けさが響く
…誰もいない
そう思い、家に入っていく
リビングへ目を向けると、
ソファーで眠っている奏斗くんの姿があった
「あ……寝てる」
思わず
小さく息が漏れる。
起こさないように、
些細な音まで小さくなる
自室に目線を移動させる途中…
テーブルの上に広げられた紙が目に入った
走り書きの言葉
何本も引かれた線
書いては消した跡
(歌詞…みたい…?
なんか作ってるのかな…)
仕事の痕跡が、
そのまま置いてある感じがして、
少しだけ胸が緩む
音を立てないよう、
自室に荷物を置いて
私は洗面所へ向かう。
手洗いとうがいをして
部屋着に着替えて、
ようやく肩の力を抜く…
ふぅ、と息を吐いてから、
もう一度リビングを覗いた。
呼吸に合わせて
ゆっくり動く奏斗くんのTシャツ
深い眠りの中にいる奏斗くんへ
そっと近づく…
(……かわいいそばかす)
寝顔をまじまじと見て
…なんとなく
得した気分になる
(…そばかすとか…
私は隠すの必死ですけど…)
心の中だけで小さく返して、
寝顔を眺める。
長いまつ毛
整いすぎてる造形
静かな寝息
(んふっ…眼福です…)
見てるだけで、
仕事で味わった緊張が
ゆっくり解けていく
私はそっと立ち上がり、
キッチンへ向かった
ケトルのお湯が、
静かに湧いていく。
部屋には、
穏やかな生活音だけが流れていた。
ーfinー
