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現場で役立つ塗装不良対策《第16回》粉体塗装での塗膜性能確保対策【後編】

本コーナーでは、工業用塗装と関連装置の開発・製造を主力とする埼玉県川越市の専門塗装メーカーである㈱トップ工業の塗装品質改善分科会が、工業塗装の現場で役立つ知識・アドバイスを伝授します。

※本記事は「塗装技術」誌に掲載されたものです

前編では、粉体塗装の初期塗膜性能である「外観」と「密着性」について解説した。後編では、塗装製品の信頼性能である「耐食性」と「耐候性」について紹介する。


耐食性

塗装品の耐食性能は促進腐食試験装置を用いて評価する。塗板にクロスカットキズを入れ、塩水噴霧試験などを行い発錆や塗膜剥離の状態を観察する。

〈試験方法例〉
・クロスカットを入れた塗板を塩水噴霧試験装置に入れる
・規定時間後の腐食状態を判定する(カット部片側腐食幅3mm以内)

塗板の耐食試験例(写真)

【対策事例】

耐食性不良の発生原因と対策表

⑴ リン酸亜鉛処理と耐食性
冷延圧延鋼板(SPCC)と合金化溶融亜鉛メッキ鋼板(GA材)のTPを用いて、塗装前処理をアルカリ脱脂のみ品と[アルカリ脱脂+リン酸亜鉛処理]品を試作。これにポリエステル系粉体塗料を50μm、200℃ ×20minにて焼き付け硬化させ、素地に達するクロスカットを入れた。
この塗板を塩水噴霧試験装置に入れ、500時間経過後に粘着テープによる密着試験を実施した。その結果、脱脂のみの試料では明確な赤錆や塗膜のフクレ・剥離が発生したが、後者ではフクレや剥離の発生は認められなかった。リン酸亜鉛処理は、塗膜の密着性や耐食性を確保するために重要な塗装下地処理であることが確認できた。

リン酸亜鉛処理有無と耐食性評価結果

⑵ エッジ部の耐食性
エッジバリが多い被塗物では、溶剤型塗装より粉体塗装のほうが厚膜であるためエッジカバー性に優れる。
腐食試験でも溶剤型塗装はエッジ部から早期に錆が発生する傾向があるのに対し、粉体塗装は発錆を遅延させる効果が確認されている。

塗装別エッジのカバー量比較図

耐候性

屋外で使用する塗装品の耐候寿命を求めるため、促進耐候性試験や屋外暴露試験を行って塗膜の耐候性能を評価する。

〈試験条件例〉
キセノンウェザーメーターに塗板を入れ規定時間経過後、初期塗膜との色差、光沢変化、チョーキング発生の有無を判定する。

耐候性試験前後(写真)

【対策事例】

耐候性不良の原因と対策表

⑴ 焼き付け硬化温度と耐候性
一般に焼き付け温度が高いほど光沢は下がり耐食性は向上する。
耐候性は焼き甘であると低下し、過度な高温に晒されても樹脂が劣化することで耐候性は低下する。良好な耐候性を得るには最適な焼き付け条件に設定し安定維持することが重要。

⑵ 塗料樹脂別膜厚減少量
屋外において素地が露出しているエポキシ系樹脂塗装品を目にすることがある。これは紫外線の影響を受けて塗膜表面が劣化とチョーキングを繰り返し、次第に膜厚が薄くなって被塗物が露出したものと推定される。
実証実験として、エポキシ樹脂粉体塗料とアクリル樹脂粉体塗料にて塗板を作製し、JISD 0205に基づくサンシャインカーボンアーク式耐候性試験機に入れ、200時間ごとに塗面上を紙ウエスで10往復させて表面の汚れ(チョーキング)を除去した。
その際、膜厚を測定し、膜厚減少量の推移を表したのが下のグラフである。

膜厚減少量推移グラフ

エポキシ粉体は試験時間が進むごとに膜厚が減少し、1,000時間を過ぎると10μm以下の薄膜になり、被塗物の素地露出が再現した。
これに対しアクリル粉体は数μm程度の膜厚減少量でチョーキングも認められず、耐候性が優れていることを確認できた。


粉体塗装の特徴を整理すると以下のようになる。

粉体塗装の特徴

粉体塗装は厚膜による耐食性やエッジカバー性に優れる一方、塗料樹脂や焼き付け条件によって塗膜性能が大きく左右される。
粉体塗装の特性を理解し、適切な塗装仕様設計と工程管理を行うことで安定した塗膜品質を確保することができる。また粉体塗料はVOC削減の観点から今後さらに需要増加が期待される塗装方式である。

参考文献

  1. 日本粉体塗装工業協会(編)『粉体塗装技術要覧』,塗料報知新聞社,1994年

  2. 坪田 実『よくわかる最新塗料と塗装の基本と実際』,秀和システム,2016年

  3. 日本油脂塗料事業部 『やさしい技術解説シリーズ・新編1 概説自動車塗装』,日本塗料新聞社,1995年

㈱トップ工業…1955年10月に東京都豊島区で創業。その後川越へ移転し、現在は川越の本社工場と児玉郡美里町の美里工場を運営。主な事業は、金属塗装(抗菌加工可能)、樹脂塗装(抗菌加工可能)、電着塗装、塗装装置および関連装置、システムの開発。塗膜剥離受託事業への新規参入により、塗装以外のサービス展開も加速中。


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