晴れ 時々 嵐 (創作) 16
「抱っこしてみるかい?」。
大人しいまるちゃんの様子を見て安心したのかおばちゃんが声をかけてくれた。
「抱きたい!抱きたい!」
由貴也とサキは喜びながらも小声で言った。
ここでまるちゃんを驚かしてはいけないことを知っているのだ。
そう、ロックは私にはすぐに慣れたけれど、猫なで声で近づきいきなり大声を出したり、体中のすべてのものを吐き出すかのようなくしゃみをしたりする父には最後まで慣れなかった。
小さな動物は人を見る。
上から見下すような人にはなつかない。
常に周りに気を遣う人なら安心して近寄ってくる。
私達は代わる代わるまるちゃんを抱かせてもらった。
関心がなさそうにしていた晴美も、サキが抱っこしているまるちゃんの背中を愛おしそうになでていた。
おばちゃんは「見ててごらん」と、得意げにまるちゃんを五郎の背中に乗せた。そして「さんぽ!」と号令をかける。
まるちゃんは五郎の背中にしっかりしがみつき、五郎は五郎でのそりのそり、ゆっくりと歩く。
苺のビニールハウスが並ぶ通路を進み、駐車場へ行く。
五郎の真っ白い毛の中に、まるちゃんの薄茶色の毛玉がちょこんと乗っている。
五郎と一体化したまるちゃんは五郎のブチの模様のようになっていて、それがなんとも自然な状態なのだ。
二人ともバランスを取りながら、でも悠々と歩いている。駐車場を一回りにして戻ってきた五郎とまるちゃんに、私達は拍手を送った。
まるちゃんはもうびっくりしなかった。
「どうもありがとうございました。生まれて初めて苺狩りをしました。
何から何まですっかりお世話になっちゃって。子ども達も喜ばせていただいて、感謝しています。
おばさん、またきっと来ますね」
晴美は、私がどちらかと言えば苦手な挨拶をきちんとする。
私はだから、隣でへらへらお愛想笑いしているだけで済む。
お辞儀だけ深々とすると車の運転席に乗り込んだ。
「ばいば~い!まるちゃん」
「またね~、五郎」
子ども達は後部座席から身を乗り出して手を振った。
「よっしゃ、次は露天風呂じゃ?!」
さっきの裏声とはずいぶん違う声で晴美が叫んだ。
