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(お題ss落とし物)ハートの封緘

 落とし物を拾った。
白い封筒に、ハートの封緘。
「これは━━拾っちゃいけないやつだ」
けれど、落ちていた場所が悪かった。
ちょっと気になってる、あの子の机の下。

「あの子の手紙だったらどうしよう」
「いやいや、きっとたまたまだよ」
もしかして、と、いやまさかがせめぎ合う。

 人生で一番悩んだあと、そっと表側を見ようとする━━、が、そんな勇気はない。
「う〜〜ん」
と大きな声で唸っていると、『ドドドドド』っと駆ける音が廊下に響く。
 思わず音のした方を見ると、教室の扉が乱暴に開いた。
ポニーテールを揺らし、肩で息をしながら、彼女は教室に飛び込んできた。

 こちらには気づかず、そのまま床を見ながら何かを探し始める。
僕の目の前まできて、足から順に目線が上がり、手元で止まった。
 そのまま、彼女はしばらく固まっていた。
数秒の沈黙の後、彼女の喉からゴクリと音が聞こえる。
口元を震わせながら、口を開いた。
「あ、あの〜。その手紙って……」
彼女はそこで一旦止まり、深呼吸をして続ける。
「見ちゃったり…しました?」

 「え、え〜っと、ミナミさん、だよね?」
僕はうろ覚えを装おって名前を尋ねる。
ミナミは真剣な顔のまま、頷いた。
正確を期すならば、いつもより顔がほんのり紅く見えた。
きっと、急いで走ってきたからだろう。

 僕は真剣な顔に気圧されるように、一歩身を引く。
「見、見てませんよ。な〜んにも。今拾ったんですが、ミナミさんのですか?」
とミナミに向かって手紙差し出した。

 ミナミは下を向きながら手紙を指先で掴む。
しかし受け取りはせず、固まっている。
僕とミナミの真ん中に手紙がある。
ハートの封緘が西陽に照らされ、金色に輝いていて、少し綺麗に見えた。

 「ふぅ〜〜〜っ!」
突然、ミナミは大きく息を吐いた。
そして、顔を上げ、僕の方を見る。
気のせいか、さっきより顔が赤く見えた。
オレンジ色の西陽は、教室を赤く染めている。

 「あの、あのね!ニシ君が拾ってくれた手紙。ありがとう。それ私の、なんだ」
そこで一拍置く。
光が目に入ったのか、少し目を細めてミナミは続ける。
「…それでね。返してもらおうと思ったんだけど、そのまま受け取ってくれないかな?」
ミナミは僕を見ながら、少し恥ずかしそうにはにかんだ。
「あのね、私、ニシ君のことが好きなの」

 窓から射し込む西陽が、ミナミの背中から見えた。
彼女のポニーテールが光の中で揺れている。
まるで彼女が輝いているように見えて、僕は思わず、手を差し出した。

 そうして、僕とミナミは、手をつなぎながら街を一緒に歩く。
まだ、彼女の片思いのまま。

片方のハートは埋まっている。
僕のハートが埋まるまでは、あと僅か。
ハートの封緘で閉じるまで。
━━ひとときの、片思い。

青春劇ですね、甘酸っぱい!
お題、ありがとうございました♪

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