あなたのマネジメントは本当にそれで大丈夫?チームの未来がガラリと変わる、明日から使えるマネジメント実践
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【理論だけじゃ戦えない。実際の現場での体験を通した実践知をあなたの糧に】をテーマに発信しています。
・部下が育たない。
・1on1が機能しない。
・心理的安全性がない。
・離職が多い。
・指示待ちになる。
・挑戦しない。
・チームがバラバラ。
・理念が現場に浸透しない。
・リーダー自身も疲弊している。
もし、あなたが一つでも当てはまるなら、この文章はきっと役に立ちます。
私は現場で試行錯誤を繰り返す中で、一つの結論にたどり着きました。
マネジメントには、多くの未来を変える力がある。
そして、その力を引き出す鍵が「利他的リードマネジメント」でした。
第一章:管理の強い会社でなぜ、人は育たないのか?
「考えが甘い。」
「何を言いたいのか分からない。」
「そんな計画じゃ何も変わらない。」
優秀な若手社員だった彼は、
その日、一週間かけて準備した資料を
握りしめたまま、 役員も参加する
営業会議で言葉を失った。
役員が悪者だったわけではない。
会社を良くしたい気持ちは
誰よりも強い人達。
数字への責任もあるし、
厳しくなる理由も理解できる。
勿論頭ごなしに否定することは
良くないとは思うが、
その場の誰かを責めたいわけではない。
「悪いのは構造であり
誤った構造が人を苦しめている」
ただ、一つだけ脳裏をよぎった。
また一人、「ボスマネジメント」によって
心が閉じてしまう。
そんな事を考えた瞬間、
この十数年間で辞めていった人たちの
顔が思い浮かんだ。
尊敬していた上司。
仲の良かった同期。
将来を期待されていた後輩。
皆、能力がなかったわけじゃない。
むしろ逆だった。
優秀だった。
真面目だった。
責任感も強かった。
一緒にいて楽しかった。
だから離れた。
私は入社して16年になる。
その間、何十人という仲間の静かな退職を
見送ってきた。
辞めていく理由は人それぞれだった。
給料。
家庭。
転職。
でも、本音を聞けば、
多くの人が最後にこう言っていた。
「もう疲れた。」
「変わらない。」
「未来がない。」
「人を大切にしない。」
ずっと違和感を持っていた。
なぜ、 頑張る人ほど辞めていくのか。
なぜ、 真面目な人ほど心を閉ざすのか。
なぜ、 主体的だった人が指示待ちになっていくのか。
個人の問題だと思っていた。
メンタルが弱い。
根性が足りない。
向いていなかった。
そんな中、ある考え方に出会います。
「水質管理理論」です。
組織には空気がある。
怒られないことが正義になる空気。
失敗しないことが評価される空気。
意見を言わない方が得をする空気。
誰かが困っていても、
見て見ぬふりをする空気。
挑戦するより、前例を守る方が安全な空気。
そんな水の中で、
「主体性を持て」
「もっと考えろ」
「成長しろ」
と言われても、 泳げるはずがない。
人を変える前に、
環境を変えなければならない。
という考え方です。
一つ問題がありました。
私は社長でもないし、
役員でもない。
人事でもないし、
店舗の管理職の一人。
大きな権限はなく、
人事制度も変えられない。
評価制度も変えられない。
ボスマネジメントが当たり前だった会社で、
「対話しましょう」
「信頼を作りましょう」
「人を理解しましょう」
そんなことを言えば、
結果は出るのかと問われるし、
前例のない理想論はすぐに止められる。
だから私は、 真正面から戦うことはやめ、
小さく始めることにした。
教育リーダーを数人だけ選んだ。
上司には、
「教育を強化して売上を伸ばしたい。」
とだけ説明した。
もちろん嘘ではないが、
本当の目的は違った。
人を育てる文化を作りたかった。
利他的な関わりを循環させたかった。
誰か一人が頑張る組織ではなく、
みんなが支え合うチームを作りたかった。
その上で結果も出せるチームを目指したかった。
第二章:本音で対話できる組織をつくる
教育リーダーを立ち上げると決めた日。
私は最初に、何を教えるかを考えた。
リーダーシップか。
面談のやり方か。
営業スキルか。
コミュニケーションか。
考えれば考えるほどしっくりこなかった。
今この組織に足りないのは、
知識ではなくもっと前に
やるべきことがあるのでは?
だから最初のミーティングで
「今日は、最初に謝らせてください。」
と言った。
部屋の空気が止まり、
教育リーダーとして
集まってくれた数人が、
一斉にこちらを見る。
「最初に今まで、この店で
辛い思いをさせてしまったことを
謝りたくて。」
(えっ、なんの話?とざわつく。)
「教育を任せても任せっぱなし。」
「結果さえ出てれば経過は見ない。」
「相手の気持ちを無視した指導。」
「自己責任のみの評価。」
「どう変えればいいのか、
自分の中でも答えがなかった」
「本当に申し訳ないって今なら思う」
しばらく沈黙が流れた。
誰も何も言わない。
その沈黙が、妙に長く感じた。
やがて一人のスタッフが、
ゆっくり口を開いた。
「……正直、本当にしんどかったです。」
その一言で、 止まっていた空気が動いた。
別のメンバーも続いた。
「何度か辞めようと思いました。」
「このやり方には、
ずっと疑問がありました。」
「どうせ言っても変わらないと
思ってました。」
私は反論も言い訳もしなかった。
「でも会社にも事情があって」
「数字もあるし」
そんな説明はいくらでもできた。
でも、その場で必要だったのは
説明ではなく
受け止めることだと思った。
今振り返れば、 あの会議の時間は
ようやく、 本音を話せる場に
なった時間だったと思う。
全員が一通り話し終えたあと、
私は未来の話をした。
「今の組織って、健全じゃないと思ってる」
「誰かが困っていても見て見ぬふりをする」「どうせ変わらないと諦める」
「自分だけ守ればいいと思ってる」
「そんな空気が少なからずある」
私はホワイトボードに一つの言葉を書いた。
"無関心"
「組織で一番怖いのは、失敗じゃなく
無関心だと思う」
顧客に興味がない。
仲間に興味がない。
会社に興味がない。
未来に興味がない。
そして最後には、
自分自身にも興味を失ってしまう。
私は十六年間、 そんな空気を何度も見てきた。
だから変えたいと思った。
「利他が循環する組織を作りたい。」
「誰かが成長したら、みんなで喜べる。」
「困ったら自然に支え合える。」
「弱さも強さも認め合える。」
「でも、甘いだけじゃない。」
「成果も働きやすさも働きがいも求める。」
「そんな組織を作りたい。」
そして最後に言った。
「必ず未来に繋がることを証明する。」
「その為に今から説明するマネジメントを
一緒にやってほしい。」
「力を貸してほしい。」
また沈黙が流れた。
今度は、 さっきとは違う沈黙だった。
一人の女性スタッフが口を開く。
「私も、この店を変えたいです。
人は論理だけでは動かない。
理念だけでも動かない。
感情だけでも続かない。
論理が未来を示し、感情が人を動かす。
リーダーに必要なのは「真摯さ」
あの日、私が得た最初の仲間は、
理論に共感したのではなく、
完璧な計画に納得したわけでもない。
一人の責任者が、
逃げずに責任を認め、
本気で組織を変えようとしている姿勢に、
未来を重ねてくれたのだと思う。
あの数人から始まった小さな集まりが、
後に組織を少しずつ変えていく
「核」になっていきます。
第三章:教える前に「その人」を知る
早速、教育リーダーが動き始めた。
とはいえ、すぐに組織が
変わったわけではない。
むしろ、本当の苦労はここからだ。
教育リーダーという役割を渡されても、
ほとんどのメンバーは
「どう教えればいいですか?」と
聞いてきた。
当然だった。
これまで教わってきた教育は、
「仕事を教えること」だったからだ。
つまり魚の食べ方だ。
接客のやり方。
営業の流れ。
商品の知識。
注意の仕方。
評価の基準。
つまり、「何を教えるか」が
教育だと思っていた。
でも、私が伝えたいのは、
魚の捕り方である。
「教え方は、まだいいよ。」
「その前に、人を見よう。」
最初は意味が伝わらなかった。
人を見るとは何か。
仕事ぶりを見ることなのか。
結果を見ることなのか。
私は首を横に振った。
「その人が、なぜその行動を取ったと思う?」
静まり返る。
「何に困っていると思う?」
誰も答えられない。
「何を大切にしていると思う?」
また沈黙が流れる。
「どんな未来を望んでいると思う?」
部屋は静かだった。
今までそんな問いを
投げかけられたことがなかったからだ。
私自身もそうだった。
長い間、人を「結果」でしか
見ていなかった。
仕事ができる。
仕事ができない。
積極的。
消極的。
売れる。
売れない。
指示を守る。
守らない。
いつの間にか、人ではなく評価を見ていた。
だから教育リーダーにも、
まずはそれに気付いてほしかった。
営業が終わるたびに、
一人ずつ面談をした。
「最近どう?」
そう聞くと、多くは業務の話を始める。
「売上が…」
「教え方が…」
「全然覚えてくれなくて…」
私は必ず質問を返した。
「その子は、何に困ってると思う?」
最初は返事が返ってこない。
「分からないです。」
それがほとんどだった。
でも、それでよかった。
分からないことに気付くことが、
理解の始まりだから。
ある教育リーダーは、
毎日のように悩んでいた。
責任感が強い。
誰よりも努力する。
だからこそ、相手にも同じ基準を
求めてしまう。
「なんでやらないんだろう。」
「なんで伝わらないんだろう。」
その言葉を何度も聞いた。
私は聞いた。
「もし君が、その子だったら?」
その子は黙った。
「今の君は、その子の努力を見れてる?」
「それとも結果だけ見てる?」
また黙った。
その沈黙は、考え始めた証拠だった。
数週間後。
その子は少し疲れた顔で笑った。
「難しすぎます。」
「一人理解するだけでも、
こんなに大変なんですね。」
その言葉を聞いて、私は少し安心した。
ようやく入口に立ったと思った。
人を理解することは、美談ではない。
想像以上に苦しい。
答えは一つじゃない。
昨日うまくいった関わりが、
今日は通用しないこともある。
正解が見えないまま、考え続ける。
相手の感情を受け止める。
自分の感情とも向き合う。
それは、教科書には載っていない
仕事だった。
私自身も同じだった。
妻を理解するのに十年かかってるし、
今でも分からないことはある。
人は、それほど複雑。
だからこそ、人を育てることが
簡単なはずがない。
ある日、その教育リーダーが
嬉しそうに報告してきた。
「今日、初めて向こうから
相談してくれました。」
それまで業務連絡しかしてこなかった
教育対象者が、自分から悩みを
話してきたという。
「なんでだと思う?」
そう聞くと、その子は
少し照れながら答えた。
「最近、仕事の話じゃなくて、
その子自身の話を聞くようにしてたんです。」
「何が好きなのか。」
「将来どうしたいのか。」
「最近何か困ってないか。」
「最初は全然話してくれなかったんですけど。」
「少しずつ、本音を話して
くれるようになりました。」
私は思わず笑顔になった。
「それが対話だよ。」
教えたから変わったんじゃない。
相手を理解しようとしたから変わった。
その違いは、とても大きい。
その後、その教育対象者が
こんなことを言ったと聞いた。
「ここまで自分に時間を使ってくれるなら、
期待に応えたいですね。
人は、管理されることで動くこともある。
評価のために頑張ることもある。
怒られたくなくて動くこともある。
でも、本気で成長しようと思えるのは、
「この人は、自分を理解しようと
してくれている」そう感じた瞬間だった。
教育とは、知識を教える技術じゃなく、
その人の可能性を信じ続けること。
そして不思議なことに、
人を理解しようと努力した
教育リーダー自身も、
大きく変わっていった。
相手を見る力は、自分を見る力にもなる。
人を育てることは、結局、自分を育てることでもあった。
第四章:"未来"で、なぜ人は動くのか?
教育リーダーたちが
少しずつ変わり始めた頃。
一人だけ、どうしても気になる存在がいた。
彼は誰よりも優秀だった。
仕事は早い。
飲み込みも早い。
責任感もある。
若手でありながら店長候補として
期待され、周囲からも
一目置かれる存在だった。
だから最初から思っていた。
「この子は、
必ず会社を引っ張る人材になる。」
しかし同時に、彼の目には、
ずっと同じ色があった。
上司を信じていない目だった。
最初は、私にも心を開かなかった。
「結局、何がしたいんですか。」
「これをやると何が変わるんですか。」
「なぜ教育リーダーなんですか。」
「どうしてこのメンバーなんですか。」
「それって理想論じゃないですか。」
質問は鋭かった。
時には痛いところも突いてくる。
でも、不思議と
嫌な気持ちにはならなかった。
むしろ嬉しかった。
本気で考えているからこそ、
納得したいのだと分かったからだ。
だから私は、毎回逃げずに答えた。
ある日、彼に聞いた。
「そんなに組織を
信用できない理由って何?」
少し黙ってから話し始めた。
入社二年目。
店長から突然声を掛けられた。
「来月の営業会議、出てみないか?」
若手では異例だった。
期待されている。
そう思った。
だから彼は、一週間かけて資料を作った。
営業数字を調べた。
現場を見た。
改善策も考えた。
何度も作り直した。
寝る時間を削って準備した。
そして迎えた営業会議。
役員を前に緊張しながら説明を始めた。
発表が終わる。
沈黙。
次の瞬間だった。
「考えが甘い。」
「店長は何を教えてるんだ。」
「意味が分からない。」
「そんな計画じゃ何も変わらない。」
次々と厳しい言葉が飛んできた。
彼は何も言えなかった。
必死に準備した一週間が、
わずか数分で否定された。
もちろん、その言葉には
悪意はなかったのだと思う。
会社を良くしたい。
成長してほしい。
だから厳しく伝えた。
そういう時代を
生きてきた人たちなのだろう。
でも、相手は令和で
育った入社二年目だった。
経験も違う。
育ってきた時代も違う。
受け止められる器も、
まだできていなかった。
その日を境に、彼は変わったという。
「どうせ頑張っても否定される。」
「期待されても最後はこうなる。」
「だったら期待しない。」
そうやって少しずつ、
自分を守るようになった。
人は外発的動機付けでは
自己防衛が強くなる
彼の話を聞きながら、
私は何度もうなずいていた。
なぜなら、その姿を何度も見てきたから。
私は会社に入って十六年になる。
その間、何人もの仲間が辞めていった。
尊敬していた上司。
一緒に笑った同期。
可愛がっていた後輩。
能力がなかった人ではない。
むしろ逆だった。
真面目だった。
責任感が強かった。
期待されていた。
だからこそ、離れていった。
彼に言った。
「今の君を見てると
昔辞めていった人たちと、
同じ空気を感じる。」
彼は黙って聞いていた。
「尊敬していた上司もいた。」
「同期もいた。」
「部下もいた。」
「本当に力がある人ほど、
疲れて辞めていった。」
「それをもう見たくないんだよね。」
そこで初めて、
彼の表情が少しだけ変わった。
「会社を変えたいからやってるんじゃない。」「君たちの未来を守りたいからやってる。」
「十年後、二十年後。」
「管理職になった時に、
同じことを繰り返してほしくない。」
「だから今、この考え方を残したい。」
沈黙が続いた。
彼はしばらく下を向いたままだった。
そして、小さく頷いた。
「……そこまで考えてるとは
思いませんでした。」
勿論この話をしたのは彼が初めてである。
私自身の本音だった。
その言葉を境に、
彼は少しずつ変わっていった。
質問は相変わらず多かった。
でも、その質問は疑うためではなく、
一緒に考えるための質問へと
変わっていった。
現場では誰よりも発言するようになった。
周囲にも自分の考えを伝えるようになった。
もちろん、一度閉じた心は
簡単には開かない。
信頼は、一回の面談では生まれない。
第五章:なぜ私は利他的マネジメントを選んだのか?
ここまで読んでくださった方は、
こう思われたかもしれない。
「結局、人を変えたものは
何だったのだろう。」
謝罪だったのか。
対話だったのか。
教育リーダーだったのか。
実は、ここまで実践してきたことには、
一つの土台があります。
それが「リードマネジメント」
という考え方。
この取り組みを始める前に
リードマネジメントを学びました。
なぜ真面目な人ほど辞めていくのか。
なぜ管理を強くするほど
主体性が失われるのか。
なぜ成果だけを追い続ける組織ほど、
人が育たないのか。
その答えを探していたときに
出会ったのが、この理論でした。
学び始めて最初に感じたのは、
「理想論」ではなく、
「現場で起きていたことを
説明してくれる理論」
だということ。
共感したのが、
水質管理理論。
魚が元気に泳げないからといって、
魚だけ良くしても意味はない。
本当に見るべきは、水。
挑戦すると否定される。
失敗すると評価が下がる。
本音を言えば煙たがられる。
そんな環境の中で、
「もっと主体性を持て」と言っても、
動きませんでした。
だから変えるべきは、
人ではなく環境。
第一章で私が書いた
「魚ではなく、水を変える」という
考え方は、ここから生まれています。
そして現場で実践を続ける中で、
一つの流れがあることに気付きました。
すべての始まりは、
「利他的な関わり」であるということ。
相手を変えようとするのではなく、
相手の未来へ関わる。
その積み重ねが、少しずつ
信頼関係をつくっていく。
信頼関係が生まれると、
本音を話しても大丈夫という
心理的安全性が育つ。
心理的安全性があるから、
人は初めて挑戦できる。
挑戦を繰り返すことで、
「私にもできる」という自己効力感が育つ。
成功だけでなく失敗も
受け止めてもらえる経験を
重ねることで、「私はここにいていい」
という自己肯定感へとつながっていく。
そのような人が増えていくと、
組織全体に新しい空気が生まれる。
最初は自信がなかった新人が、
後輩を育てるようになった。
教育に悩んでいたリーダーが、
人を信じて待てるようになった。
「どうせ変わらない」と言っていた人が、
「一緒に変えていこう」と
口にするようになった。
信じてもらえた人は、
今度は誰かを信じようとする。
育てられた人は、
今度は誰かを育てようとする。
利他は、人から人へ循環していきます。
この理論があったからこそ、私は迷わず実践し続けることができた。
そして、その実践が、少しずつ組織を変えていきました。
第六章:成長は、循環する
リードマネジメントを学んでから、
現場で最も大切にしたことがある。
それは、対話を増やすことではない。
未来に対して、一緒にアクションを
起こすことだった。
世の中では、「目標を持とう」と
よく言われる。
でも、現場で多くの人と関わってきて
最初から明確な目標を持っている人は、
決して多くない。
「将来どうなりたい?」
そう聞かれても、
「分かりません。」
そう答える人のほうが圧倒的に多い。
だから私は、無理に目標を
決めさせることはしなかった。
その代わり、一緒に未来を考えた。
その人が大切にしたいものは何か。
どんな人生を送りたいのか。
どんな人になれたら、
自分自身を誇れるのか。
その未来を、一緒に描いていった。
ある日、一人の教育リーダーと
面談をしていた。
その子は、新人スタッフを担当していた。
最初は仕事を教えることばかり
考えていたが、少しずつ相手を
理解することを意識するようになり、
新人スタッフも以前より笑顔で
働くようになっていた。
私はその話を聞いて、こんな質問をした。
「最近、あの子変わってきたよね。」
「〇〇さんが関わったからだと思わない?」
少し照れながら、
「そうだったら嬉しいです。」
と答えた。
私は続けた。
「この一つの経験って
すごく大事だと思ってる。」
「もし〇〇さんが、
この先三年、五年、十年と
経験を積んでいったら、
どうなると思う?」
その子は少し考えていた。
「今は一人の新人を導けた。」
「でも将来は、十人かもしれない。」
「二十人かもしれない。」
「上の立場になれば、
もっと多くの人と関わることになる。」
「その人たちが成長したら、
その人たちもまた誰かを育てていく。」
「そう考えたら、〇〇さんが
成長することって、
自分のためだけじゃないと思わない?」
その子は静かに頷いた。
私はさらに続けた。
「〇〇さんが成長すれば、
その分だけ幸せにできる人が
増えると思っている。」
「関われる人の数も増える。」
「その人たちに与えられる影響の
深さも変わる。」
「つまり、〇〇さんが
人を幸せにできる量も、質も、
高まっていく。」
「その未来って素敵だと思う。」
その子は、しばらく何も話さなかった。
そして、小さく笑って言った。
「そんなふうに考えたこと、
ありませんでした。」
人は、自分のためだけでは、
苦しいときに踏ん張れないことがある。
でも、自分の成長が、未来の誰かの
幸せにつながると分かったとき、
人は強くなれる。
だから私は、対話の最後には
必ず未来への一歩を決める。
「次は何をやってみようか。」
「誰に声を掛けてみようか。」
「どんな関わりをしてみようか。」
未来につながる、小さな行動でいい。
そして次の面談で、その行動を
一緒に振り返る。
うまくいけば、一緒に喜ぶ。
失敗しても、責めない。
「次はどうしてみようか。」
また未来を考える。
この繰り返しが、少しずつ人を変えていく。
この積み重ねこそが
利他的マネジメントの核だと思っている。
利他とは、自分を犠牲にすることではなく、
相手の未来を信じ、
その未来のために関わること。
そして、その人が
今度は誰かの未来を
支える存在になっていくこと。
その連鎖が生まれたとき、
一人の成長は、一人で終わらない。
組織を変えるのは、
制度でも、命令でもない。
未来を信じて行動する、
一人ひとりの利他的な関わりである。
そして、その一つひとつの関わりが、
未来で誰かを幸せにする人を育てていく。
それこそがマネジメントの本質だと思う。
第七章:弱さが組織を強くする
そんな頃、組織に
もう一つ大きな転機が訪れた。
長く休職していたベテランスタッフが
復職することになった。
その人は、現場では誰もが認める
ハイパフォーマーだった。
成果は出す。仕事も早い。責任感も強い。
しかし同時に、恐怖やプレッシャーで
人を動かすタイプでもあった。
まさに、私たちが変えようとしていた
「ボスマネジメント」を体現している
存在だった。
復職の話が出たとき、
現場には緊張が走った。
「また前みたいになるんじゃないか。」
「変わってなかったら辞めるかも。」
そんな声まで上がっていた。
ただ、私は違う見方をしていた。
この数か月、教育リーダーと一緒に
利他的マネジメントを実践し、
組織の土台は少しずつ変わり始めている。
そして何より、その人には
高い能力があった。
もし仲間として巻き込めたなら、
これほど心強い存在はいない。
だから私は、復職前の研修で
真正面から向き合うことにした。
リードマネジメントと
ボスマネジメントの違い。
利他的な関わり。
自己効力感や自己肯定感。
人を恐怖で動かすのではなく、
未来への希望で動かすという考え方。
一通り話したあと、その人は静かに言った。
「……今までの私のやってきたことって、
ボスマネジメントだったんですね。」
肩を落とし、落胆した表情をしていた。
否定したかったわけではない。
「今までそれで評価されてきたんだよね。」「他のやり方を教わる機会が
なかっただけだと思う。」
そう伝え
そして続けた。
「でも、そのままだと人は変われない。」
「変わらなければ、未来で誰かを
幸せにすることも難しくなる。」
「〇〇さんには、これだけの能力がある。
だからこそ、すごくもったいないと
思ってる。」
その言葉のあと、少しずつ本音が出始めた。
「実は、極度の人見知りなんです。」
「別に冷たくしたいわけじゃなくて。」
「頑張らなきゃっていう
不安がずっとあって……。」
周囲からは「強い人」と見られていた。
しかし、その強さの裏には、
誰にも見せられなかった弱さがあった。
「話してくれてありがとう。」
「今って、そういう弱さも支え合いながら
成長できるチームを作ろうとしている。」
「私もフォローする。
だから、少しずつでいい。」
「まずは相手を理解すること。
そのために、自分のことも
少し知ってもらうこと。
そこから始めてみない?」
復職後、その人は驚くほど変わった。
もちろん、本人にとっては
小さな一歩だったと思う。
しかし、かつて恐怖を知っていた
スタッフたちから見れば、
それは劇的な変化だった。
自分から声を掛ける。
相手の話を聞く。
表情を和らげる。
以前なら考えられなかった関わりが、
少しずつ増えていった。
その日の終わり、すぐに声を掛けた。
「今日、めちゃくちゃ意識して
頑張ってくれてたの、
ちゃんと伝わったよ。ありがとう。」
すると、少し驚いたように笑った。
そのとき、改めて確信した。
人は、責められて変わるのではなく
理解され、未来を信じてもらえたときに
変わり始める。
そして、その変化は一人で終わらない。
かつて恐怖で人を動かしていた人が、
今度は誰かを支える側へ変わっていく。
それこそが、私が目指していた
利他的マネジメント。
最終章:マネジメントには、多くの未来を変える力がある
この十六年間で、
私は色んな人と出会った。
辞めていった人もいる。
成長して巣立っていった人もいる。
ぶつかった人もいる。
心を閉ざしてしまった人もいる。
そして、自分には変えられないと
思っていた人もいた。
人は簡単には
変わらないと思っていた。
性格だから。
価値観だから。
経験が違うから。
どこかで線を引いていた。
でも今は違う。
人は変われる。
ただし、変えようとしても変わらない。
理解されようとしたときに、
少しずつ変わり始める。
その瞬間を何度か見てきた。
心を閉ざしていた若手が、
自分の未来を語るようになった。
教育に悩んでいたリーダーが、
人を信じて待てるようになった。
恐怖で組織を動かしていた人が、
自分の弱さを打ち明けられるようになった。
どの変化にも共通していたものがある。
誰かが、その人の可能性を
信じ続けていたこと。
人は、「正しい言葉」で変わるのではなく
「自分の未来を本気で信じてくれている」
そう感じたとき、初めて一歩を踏み出す。
マネジメントとは
管理ではない。
評価でもない。
人の未来を信じる仕事なんだと思う。
もちろん、企業である以上、
利益は必要。
成果も求められる。
数字から目を背けることはできない。
でも順番だけは
間違えてはいけない。
利益を目的にすると、
人は手段になる。
人を目的にすると、
利益は結果としてついてくる。
利他的マネジメントは、
優しいマネジメントではない。
甘いマネジメントでもない。
未来に責任を持つ
優しくも厳しいマネジメントである。
もし、この文章を読んでくださった
あなたが、明日、一人だけでも
誰かの未来について話す時間を
つくってくれたなら
その人の可能性を信じ、
未来への一歩を一緒に考えてくれたなら
その対話は、きっとその人だけでは
終わらない。
その人が未来で出会う、
まだ見ぬ誰かへと受け継がれていく。
未来を変える仕事は、目の前の一人の未来を信じることから始まる。
もし少しでも心に響くものがあれば、必要な人に届けてもらえると嬉しいです。
最後まで読んでいただきありがとうございます😊
実際のマネジメント手法や型、具体的なコーチング内容などお役に立てることは何でもお伝え出来ればと思います🙋
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