成城の喫茶店に舞い降りたお婆さまたち 〜老後に必要なのは、健康とユーロ建て預金?〜
こんにちは、しんいちです。
先日、打ち合わせ帰りにふらりと喫茶店に立ち寄りました。
その日の気温は35℃。あまりの暑さに駅前のスタバまで我慢が出来ず、たまたま目に入った小洒落た喫茶店に飛び込んだのです。
場所は成城学園前。はい、あの“成城”です。地名だけで、なんだかコーヒーが5割増しで香り立つような気がします。
お婆様カルテット現る
注文を済ませて、ぼーっとしていたその時。隣のテーブルから聞こえてきたのは、なんとも華やかな笑い声。見ると、上品な白髪まじりのおばあちゃんたちが4人。どうやら、昼下がりの女子会帰りのようです。
「美味しかったねー、あのお店。また行きたいわぁ」
「そうそう。こないだ行ったポルトガルのお魚料理もすごく美味しかったのよ」
「お魚はスペインも美味しいわよ。日本にも負けてないわ」
「ポルトガルって、ヨーロッパの中で一番好き。ギリシャも食べ物が良いのよねえ。私、最近は全部やってくれるツアーが好き。若い時みたいに自分で動くなんて、もうできなくなったわ。うふふふふ」
──あ、これは見つけてしまったかもしれません。
世に言う「成城マダム」。その生態をつぶさに観察できる、またとないチャンス。
聞き耳を立てようなどという気はなかったのです。でも、声が大きいんですよ。あと、語彙に「庶民」が出てこない。これはもう、情報として耳が自然に吸い寄せられてしまう。
100万円の旅行
「最近はどこ行ったの?」と聞かれたマダムAの答えは、
「この前はスイスね。電車がすっごく綺麗で感動したの。あと、チーズがね…」
そこへマダムBが重ねて、
「私たちの年齢になると、やっぱり安い旅行はダメよ。疲れるだけ。若い人はそれでもいいけど、私たちは“サービス込み”じゃないとねえ」
──その“サービス込み”って、まさかコンシェルジュのアテンドレベルでは?と、心の中でツッコミを入れながらも、彼女たちのトークは止まらない。
「最低でもね、やっぱり100万はかけないと楽しい旅なんてできないのよ」
「そうそう。一通りお願いすると100万くらいにはなるわね」
ええと、海外旅行の話ですよね。桁、間違ってませんよね。100歩譲って、ご夫婦2人分ですよね。それでも十分あれだけど。
先日の飲み会で、「ふるさと納税の返礼品で行った城崎温泉」の話を嬉々として話す我が友人の顔が浮かびました。我々は「2泊3日で行く蟹フルコースプラン」2万円相当の話で感動していたというのに…。
その隣で「100万の旅が最低ラインよね?」なんて話を聞かされるこの地層の断絶感。すごい。地球のマントルくらい厚い。
素晴らしき人生とは
いやしかし、なんだか彼女たちはとても元気そうで、艶やかで、快活でした。見たところ皆さん70代半ばくらいでしょうか。背筋もピンと伸びていて、持っているバッグも靴も、いちいちいいモノです。
自分がその年齢になった時、果たして、同じようにヨーロッパ旅行に100万円出せる体力と財力があるだろうか…。いや、そもそも80代まで働かずに生きていけるのか。
きっと彼女たちは「時間もお金も、そして同じ生活レベルのお話ができるお友達も」しっかり持っているのだと思います。老後に必要なのは健康と年金…だけではなく、ユーロ建て預金と上質な交友関係なのかもしれません。
でも、あまり羨ましくはなかったのです。不思議と。半分妬みですけど。
もちろん、彼女たちのような余裕があれば最高でしょう。ですが、孫の成長について、月に一度のカフェでうれしそうに語る、近所のおばあちゃんたちだって、きっとそれなりに人生を楽しんでいる。
要は、どこに価値を見出すか、なんでしょう。
帰り際、マダムたちは楽しそうに言っていました。
「来月はまた、どこかで集まりましょうね」
「そうだ、あそこ行かない?フジイさんがこないだ言ってたフレンチの」
──いいですね。どうかお元気で、次のランチでも、100万の旅でも、思いきり楽しんでください。
私は明日は、新発売のスタバのグラン マスカット フラペチーノでちょっとだけリッチな午後を過ごす予定です。
そして、涼しさを求めて入った喫茶店で、私が考えていたのは、
さて、今度の選挙はどこに投票するべきか‥。
