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最終話|Link Webがなくなる日

春。

朝風市場。

一年前。

誰もWebという言葉を知らなかった街。

鍛冶屋は良い剣を作るだけだった。

パン屋は焼くだけだった。

花屋は待つだけだった。

橋はできても、

地図は古いままだった。

でも今は違う。

市場には笑顔が増えていた。


朝。

Link Webの事務所。

いつものように全員が集まる。

坂本社長が静かに立ち上がった。

「みんな。」

「話がある。」

神谷たちが顔を上げる。

坂本社長は笑っていた。

「今日で。」

「Link Webは終わりだ。」

部屋が静まり返る。

ゴブ助だけが口を開けたまま固まっている。

「え……?」

「倒産ですか?」

藤原が苦笑いする。

「お前はすぐそうなる。」

それでも誰も笑わなかった。


坂本社長は窓の外を見た。

「最近。」

「相談が減った。」

高橋が少し慌てる。

「それは困ります。」

「売上が……。」

坂本社長は首を横に振った。

「本当に困るか?」

その言葉に、

誰も答えられなかった。


神谷は市場へ出た。

ガルドの鍛冶屋。

今日も行列ができている。

看板を見る人はいない。

みんな、

「ガルドの店だから。」

そう言って入っていく。


マルコのパン屋。

常連が笑っている。

「いつもの。」

その一言で通じる。


フィオの花屋。

市場の屋台をきっかけに、

丘の花畑まで足を運ぶ人が増えた。


ルルの蜂蜜。

営業日は相変わらず少ない。

それでも、

毎回売り切れる。


ロトは今日も地図を書き換えていた。

「また新しい道です。」

誰に言われなくても、

歩いて確認している。


神谷は静かに笑った。

「みんな。」

「もう自分たちで考えてる。」


午後。

事務所へ戻る。

ゴブ助がまだ納得できない顔をしていた。

「でも。」

「困ったらどうするんですか?」

坂本社長は答える。

「困ったら。」

「また相談に来る。」

「でも。」

「何でも最初から聞く街には。」

「したくない。」

神谷もうなずく。

「答えを渡す仕事じゃない。」

「考え方を渡す仕事だった。」


夕方。

事務所の前。

ガルド。

マルコ。

リリア。

モルグ。

フィオ。

ルル。

ロト。

これまで出会った人たちが集まっていた。

ガルドが笑う。

「神谷!」

「新しい弟子が来た!」

「まず店を見ろって言っといたぞ!」

マルコも笑う。

「俺も。」

「常連を大事にしろって教えた。」

フィオは花束を差し出す。

「市場へ出る勇気をもらいました。」

ロトは新しい地図を広げた。

「更新は毎日しています。」

モルグは深く頭を下げる。

「必要な人に届ける。」

「今でも大切にしています。」

誰も、

「教えてください。」

とは言わなかった。

みんな、

自分の言葉で話していた。


帰り道。

ゴブ助が静かに歩く。

「神谷さん。」

「Link Web。」

「本当に終わるんですか?」

神谷は空を見上げた。

「会社は終わらない。」

「え?」

「役割が変わるんだ。」

ゴブ助は少し考える。

橋を渡る。

市場を見る。

笑う人たち。

働く人たち。

相談しなくても動き始めた街。

その景色を見て、

ようやく笑った。

「あっ。」

「だから。」

「仕事がなくなったんじゃなくて。」

「仕事が終わったんですね。」

神谷はゆっくりうなずく。

「その通り。」

高橋も静かに笑う。

「一番成功した会社は。」

「一番必要とされなくなった会社なのかもしれません。」

後ろを歩いていた小野寺が、いつものように短く言った。

「本当に良い仕事は。」

「人を頼らせない。」

「人を、自分で歩けるようにする。」

夕日が街を赤く染める。

一年前は、

何も知らなかった異世界。

今では、

誰もが少しずつ考え、

少しずつ工夫し、

少しずつ前へ進んでいる。

Link Webが変えたのは、

街ではない。

人の考え方だった。

そして、

その変化は、

きっとこれからも続いていく。


あとがき

この物語では、異世界を舞台にしながら、Web制作やマーケティングの考え方を描いてきました。

SEO、SNS、導線設計、ターゲット、ブランディング、リピーター、設計、運用。

どれも大切な技術です。

でも、36話を書き終えて、一番大切だと感じたのは技術ではありませんでした。

「相手を知ろうとすること。」

「なぜそうなっているのかを考えること。」

「一緒により良い方法を探すこと。」

結局、Webの仕事も、商売も、人との関わりの中で成り立っています。

だから、この物語の主人公はLink Webではなく、この街で暮らす人たちだったのかもしれません。

最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

おまけ

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