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シアンの秋想曲🍁Autumn Data Stream

極彩色の枯れ葉が舗道に舞う錦秋の薄暮。それからの長い夜はグリッチするシミュレーションの地平線と無限に続く高層ビルのテクスチャバグ。三日月は軌道上に漂う破損したステーションの破片。 廃棄された衛星の残骸のような三日月の錆びた回路が反射する月光は小惑星プシケにまで届く。フェロコンクリートの亀裂から銀杏のホログラムが過去の残像のごとく黄金色のデータフォグを撒き散らす。灯油に濡れた石畳の路地裏に明滅するネオンの血が乱反射する。アスファルトの隙間に突然変異したススキの群生のガラス繊維の穂先が行き交うエアカーの風に揺れその一本一本が失われた魂のIDタグのように光る。機能不全のプロジェクターのようなビルのディスプレイに映し出されたノイズだらけの焼きイモのVR映像は焦げた甘い香りの合成フェロモンをアロエの植木鉢ならぶ路地裏に漂わせ老婆の過去の記憶を呼び覚ます。隣家のブロック塀から舗道にはみ出した柿の木のカキが勿体ないとアンドロイドの翁が右往左往する。コオロギの鳴き声こだまする路地の奥で光学センサーの瞳を持つクローンの黒猫が突然ドローンに変形し古い童謡を再生する。松茸狩りの歌の断片を再生する黒猫ドローンの内蔵チップにはコクトーの詩と失われた四季のデータが混在している。街灯のかわりに広告サイネージが熱波を放つコンクリートの壁を覆うはビルを絡め取る寄生的なバイオファイバーケーブルとなりその生体発光がまたシーレが描いたようにデカダンスの壁を這い上がる。地下のカフェバーやラウンジのドアは時折妖怪が勝手に開閉しテーブルに置かれた二十世紀ナシを持ち帰る。店内でフィルターをかけられ遅延した音源で永遠にループしているグノシエンヌが電子音でリミックスされその静謐な不協和音が地下街のノイズを飲み込んでいく。誰もいないバーカウンターにならぶ影たちはシルクハットを深々と被った詩人のアバターになりクロムとカーボンで編まれたハットの下の顔はノイズで潰れている。義手は肉の感触を忘れの固い殻を割る感覚をシュミレーションでしか思い出せない。書いたポエムは感情の過負荷によってネットワークに強制的にダンプされる詩のコードストリーム。この街は美しいメロディのようなレリックで出来ている。フェードアウトしない秋想曲の残響は増幅されすぎた嘆きが低周波の振動となり生体認証システムを麻痺させる。過去の感情データを食らう幻影であるシルクハットの男は時折ハッキングされた監視カメラを指差しそこでソースコードが漏洩していると声にならないデータパケットを吐き出す。廃棄されたディスプレイに映る富有柿の生成画像転がるこの街は季節のデータレムナントで構築されている。春海が作った天球儀のごとくコスモス畑のホログラフィックイメージが廃墟の天蓋に咲き乱れてもその可憐な薄紅の花弁には土の匂いも蜜の甘さもなく過去へのノスタルジアだけがコードとして残る。魔術師のような絵師のペンは錆びた空気の中に幻の松茸の香りを描き出し嗅覚センサーが捉えた失われた豊穣の時代の記憶を想起させる。今宵もまた集積回路のごとき巨大都市がノイズの海に沈んでゆく真夜中この街のすべてがボードレールの夢想の残像ならば郷愁こそレイテストテクノロジー 。クローンの黒猫が静かに電源を落として反閇しながら歩けば街路樹のイルミネーションがギンナンのように散らばり消えてゆく。 残されたのはわずかなキャッシュと失われた季節への偽りの郷愁。アキアカネ乱舞する錆びた回路の底でこの都市のすべてが一編の詩であるならば孤独こそがコスモスの真理だと鈴虫が言った。ノイズキャンセリングの奥でわずかに聞こえる秋想曲の終わりは来るべき夜明けではなく永遠に繰り返される夜のためのピリオドに過ぎない。錦秋の公園からまたセピアの風吹く晩秋の薄明。噴水中のミトコンドリアのナノチップを内包した極彩色の枯れ葉が舗道に舞い上がる。🍠🌰


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