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「金曜日の書店で」

彼女は、毎週金曜日の午後になると決まって古い書店に足を運んだ。そこは、街の隅にひっそりと佇む小さな店で、木の床が歩くたびにきしむ音を立てる。書店の中には、色褪せた本が天井まで積まれ、時間が止まったかのような静けさが漂っていた。

ある日、彼女がいつものようにお気に入りの一角で本を探していると、背後から声がした。

「それ、僕も読んだことがあります。すごくいい本ですよ。」

振り返ると、彼女と同じくらいの年齢の男性が、穏やかな笑顔で立っていた。彼は手に古い詩集を持っていて、彼女が手に取っていた本と同じシリーズだった。

「そうなんですか?まだ読んだことがなくて、これを手に取るか迷っていたんです。」彼女は少し緊張しながら答えた。

「きっと気に入ると思いますよ。言葉が丁寧で、少し寂しさを感じるけど、心に響くんです。」彼は本をそっと棚に戻し、彼女に視線を向けた。「実は、僕もよくここに来るんです。静かで落ち着く場所ですよね。」

彼女は彼の言葉にうなずき、少し心を開いた気がした。「そうですね。この場所には、なんだか不思議な安心感があります。」

それから二人は、何となく言葉を交わし始めた。彼は本が好きで、特に詩や短編小説を愛していることを話してくれた。彼女は、昔から本を読むのが好きだったが、最近は時間がなく、久しぶりにこうして本を手に取る機会が増えたことを話した。

その日から、二人は金曜日になると書店で会うようになった。時には一緒に本を選び、時にはカフェでその本について話し合った。彼女は、彼との会話がいつも心地よく、自然に笑顔になる自分に気づいていた。

ある金曜日、いつものように書店で待っていると、彼が少し遅れて現れた。手に一輪の小さな花を持っていて、少し照れくさそうに彼女に差し出した。

「これ、君に。」

彼女は驚きながらも、自然と微笑みが浮かんだ。「ありがとう…こんなこと、初めてされました。」

彼は少し顔を赤らめながら、「君と一緒に過ごす時間が、僕にとって特別なんだ。」と静かに言った。

その瞬間、彼女は自分の気持ちが彼と同じだと気づいた。二人の間に流れる静かな時間が、特別なものに変わっていくのを感じた。

それから、二人は書店だけでなく、街のあちこちを歩きながら時間を共有するようになった。本が二人を引き合わせたように、互いの心も自然と重なり合っていった。そして、いつの日か、二人が手を繋ぐようになったとき、彼女はふと感じた。

「ああ、これが恋なんだな。」

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