#05 プロジェクトを動かすために必要な「学問のすすめ」
これまで公共施設の課題というか「闇」の部分について触れてきたが、当然のことながらこのままで良いはずがない。
自治体の予算のうち、公共施設にかかる経費の予算繰りは常に頭の痛い話であるし、そもそも現状の老朽化具合などを考慮すると待ったなしというか、何らかの手を打たないとヤバい状況であることは明白である。
現状に目を背けて、とりあえず今をやり過ごそうなんて感覚でいると、自分のまちが破産(財政再建団体)なんてことも普通に起こりうる状況だ。
その公共施設をどうにかするために、全国で始まったのが総務省からの「公共施設等総合管理計画」の策定要請に端を発した、公共施設の面積削減や再編・統廃合などの議論である。
今から約10年くらい前のことである。
では、公共施設の量が計画どおりに減っているのか?
そんなことはない・・・
下の表を見ると分かるように、公共施設の面積総量は良くて横バイ、どちらかというとまだまだ上昇トレンドにある。

では、どうすればこの状態から脱却できるのか?
自治体ごとに戦略・戦術は違うだろうが、僕が考えうる攻略法は、FMとかPPPのプロジェクトベースによる実践を、同時多発的に、何発も何発も打ち、それを何年も継続するというものだ。
そこにキャプテン翼に出てくるような必殺技なんてある訳ないし、ましてやケンシロウやウルトラマンのような空想の救世主など、現実の世界には存在しないのだ。
とはいっても現在の行政システムにおいて、公共施設を「闇」から救うための必勝マニュアルなんて誰も持ってないし、ましてこれといった型や法律の定めのないFMやPPPを職場で教育するOJTだけに依存する・・・きっとこれにも無理がある。
つまり、マニュアルや決まった型がないからこそ、自分の頭で考えることが重要だし、ましてプロジェクトを動かすためには、自ら「学ぶ」しかないのだ。
そして大切なのは、やみくもに学ぶのではなく、学びの質を高めていくこと。なぜなら学びの質が実践の出口となるプロジェクトの質に大きく関わってくるからだ。
ではここからはプロジェクトを動かすために必要な「学問のすすめ」について書いていく。
人生100年時代におけるこれからの生き方
行政というのは(キャリアアップ転職のような)人材の流動性が極めて少なく、基本的には年功序列型の給与体系で、成功報酬がないこともあって、自ら「学ぶ」という力学が働きにくい組織である。
一般的にゼネラリストが多く、ある程度の経験さえあれば、大抵の事務仕事や業務をこなしていけるので、わざわざ時間を割いて、お金をかけて学ぶ必要にかられないのだ。
でも本当にそれで大丈夫なのか?
つつがなくキャリアを全うし60歳になれば晴れて定年退職となり、あとは平均寿命80歳で死ぬまでの第2の人生が始まる・・・といった標準型公務員の人生は完全に過去のロールモデルだ。
リンダグラットンさんの名著「LIFE SHIFT」によると、人生は100年時代に突入し、教育〜勤労〜引退モデルという3つのステージは崩壊し、マルチステージを生きる必要があると説かれている。
つまり60歳で定年・勤労終了でなく、そこから40年のライフステージを生き抜くために必要な学びと新たなネットワークの構築が欠かせないのだ。
まぁ、公共施設のこととかプロジェクトのこととか関係なく、健康で生きていくために「学び」は必要なのである。
「読書のすすめ」・・・本は重要なインプット源
さて「学ぶ」ことは人生を生き抜く上で必要不可欠であると書いたが、ここからはその「学び方」の話。
10年、20年前と違ってネット情報が氾濫した今では、デスクの上から、または様々なデバイスから欲しい情報に簡単にアクセスできるため、わざわざ本を読む必要はない・・・そういった考え方もある。
ただ、ネットの情報は比較的コンパクトにまとまっているので、「知る・調べる」ことには向いているが、そこから本質的な「学び」を得るためには、若干パンチが弱いように感じるところだ。
その点、著者の思想や経験が何百ページにも渡って詰め込まれている本という媒体は、「学ぶ」という意味ではまだまだ重要なインプット源である。
なので、僕的にはネットはどちらかと言えば「知る・調べる」ためのツールであり、本は著者の思想を自分の頭の中に取り込む「学ぶ」ためのツールという使い分けをしている。
FMやPPPをプロジェクトベースで回していくためには、マニュアルではなく広い見聞と深い知識が必要である。
常にイノベーション思考の広い視座を持ちつつ、実践するための深い知識を得るためには、本による継続的な学びとインプットが必須だと思っている。

ちなみに、同じ人が定期的に発信し続けているような情報も、本と同等の学びツールである。英会話のスピードラーニングみたいなもので、筋トレみたいに頭を毎日鍛えるというのも効果的な手段だ。
例えば木下斉さんのこちらのコンテンツを、僕は「学びのツール」として日々チェックしている。
「体験のすすめ」・・・現場に行くことで得られる体験値
近年ありがたいことに、様々なまちから声をかけていただき遠方に出かけることも増えてきたので、僕は全国各地の現場を直に体験する機会に恵まれている。(これは本当にありがたい)
もちろんそれとは別に、休みの日などに時間を割いてわざわざ出かけていくことも多い。
本やネットの情報だけでは知ることのできない、「現場」の空気感を体感するためだ。
どんなコンテンツがそこにあり、どんな値付けがされていて、どんな人がそこに集まり、どんな空間がそこにあり、それがまちとどう繋がっているかなど、自分自身の身体で体感することは、机上では知りうることができない重要なインプット源である。
僕自身、建築が専門ということもあり、そもそもリアルな空間体験が好きということもある。
ただこれは誰でも同じだとは思うが、自分が体感したことのない空間や未知なるものを、頭の中だけで作り上げていくことはきっと不可能な作業だ。
イケてるカフェに行ったこともない人間が、「公園にPark-PFIでオシャレなカフェを整備して・・・」みたいなことにはならないのである。
「旅費の予算がない」とか「そんな遠方に行く時間がない」とか「えっ、それって民間に考えてもらうことでしょ」とか言う人たち、正直そんな思考回路では、いつまでたってもイケてるプロジェクトは生まれませんよ。
「自己投資のすすめ」・・・自己投資による学びの深度・確度
最近ではオンラインセミナーなども増えてきて、出かけなくても学ぶ機会というのはコロナ前と比較すれば格段に増えている。
こういった機会を上手に使って学ぶ時間を増やすことは、確かに有益な方法であるが、無料で得られる情報というのはたかだか知れているというのも事実。
プロジェクトの質を高めていくためには、そこから先の「自己投資」がものをいうのだ。
本にしてもそうだし、現場に赴くことも「自己投資」の一つであるし、さらに学びを進化させていくために、社会人スクールのようなものにチャレンジするという「自己投資」の選択肢もある。
僕自身の経験で言えば、2019年に「都市経営プロフェッショナルスクール」に参加したことで、知見やネットワーク形成が大きく変わり、学びの深度や確度が格段に向上したと感じている。
このプロスクール、プロジェクトの実践が目的となっているため、別名「虎の穴スクール」と呼ばれるほど、徹底的に鍛え上げられるのだが、この分野における超一流のコーチ陣たちによる教えは、他では得られない価値がある。
自費で参加するには少々ハードルの高い値段設定ではあるが、ここから得られるリターン(金銭だけでない人脈やネットワークも含む)は計り知れないし、ここでの経験があったからこそ今の僕があると思っている。
根性に自信がある方、覚悟ができている方、ぜひこのスクールの門を叩いてほしい、今までと違った景色が見えるようになることは保証する。
最後に
人生には色んな「学び」はあるが、大学受験で学ぶことが終わっていると思っている人が多いのではないだろうか。
日本の教育は今でも偏差値志向が強く、18歳までは日本人のほぼ全員が同じような教育を受けているが、社会人になってからは、そのベースの上にどれだけ実践力を積み重ねられるかにかかっている。
そのためには、常に「学び」が必要であるし、学ぶ人間と学ばない人間の差は乗数的に差がついてくるということは明白である。
さて今週末は、都市経営プロフェッショナルスクールの集合研修(岡山)に参加する予定なので、次回はそのプロスクールでの学びや経験について深掘りしていこうかな。
