【エッセイ】意識の低い「マイボトル」生活
エッセイ本文

「マイボトルを持ち歩いています」
そう言うと、なんだか地球環境に優しく、丁寧な暮らしをしている「意識の高い人」のように思われるかもしれない。
だが、最初に断言しておきたい。僕にそんな高尚な志は一ミリもない。エコや脱プラスチックを意識して水筒を買い求めたことなど、生まれてこの方一度だってないのだ。
そんな僕が今、家の中でいくつもの水筒を「コップ代わり」に使い倒している。
リビングのテーブルには、グラスでもマグカップでもなく、大小さまざまなサイズと色をした水筒たちがズラリと並んでいる。
外出先ではなく、自室のデスクやソファでカチッと蓋を開けてはゴクゴクと飲む。
見た目だけなら、家の中でもすこぶる「意識が高そう」に見えるかもしれない。だが、これを始めた理由は実に単純で、ちょっと情けない。

我が家に、元気いっぱいのワンコをお迎えしたからだ。
部屋中を弾丸のように駆け回る愛犬。机の上のグラスなんて、彼らにはお構いなしだ。
振られた尻尾の一撃で、テーブルにジュースの海が完成する。
目を離した隙に「なになに?」と鼻先を突っ込んで、僕のお茶を舐めようとする。
「こぼされるのも、ワンコが誤飲するのもマズイ」
その惨事を防ぐための緊急避難として、棚の奥から引っ張り出してきたのが水筒だった。
フタさえ閉めておけば、倒されようが蹴られようが中身は一切漏れない。
完全なる防御壁としての導入だった。
ところが、この「消去法」で始まったおうち水筒生活が、僕の日常を劇的に変えてしまった。
使ってみて、その圧倒的なメリットに愕然としたのだ。
ガラスのコップならとっくに氷が溶け、デスクが結露の水滴でビシャビシャになる時間でも、水筒の中はキンキンに冷えたままだ。
温かいコーヒーも、数時間経っても淹れたての熱さを保っている。
おまけに最近の水筒の進化は凄まじい。
シュワシュワの炭酸水を入れられる専用ボトルもあれば、手のひらサイズのミニサイズ、氷がゴロゴロ入る広口タイプまで揃っている。
気づけばコップを一切使わなくなり、用途に合わせて水筒を使い分ける「おうち水筒マニア」になっていた。

「外出先で使うもの」「エコのためにペットボトルを控えるもの」。
そんな固定観念を捨て、ただの「フタ付き最強保温グラス」として家の中で使ってみた結果、生活の快適さが何倍にも跳ね上がったのだ。
本来の目的から一歩外れた場所に置いてみるだけで、その道具は思わぬポテンシャルを発揮し始める。
だから、画面の向こうの君たちに聞いてみたい。
僕がまだ知らないだけで、君の家にも「本来の用途とは違うけれど、実はこんな風に使うとめちゃくちゃ便利な道具」が眠っていないだろうか?
もしそんな隠れた才能を持つ日用品を知っていたら、ぜひ僕にこっそり教えてほしい。
今日も足元ですやすや眠るワンコを横目に、冷えた炭酸水を水筒から一口飲む。
僕の部屋の「意識の低いマイボトル」は、今日も完璧な仕事をしてくれている。
【コラム・エッセイ】」日常系まとめ
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