湯切りに失敗した夜🌃 私は「味ぽん香る焼きそば」に出会った!
やってしまった。
お腹が空いて、一刻も早く胃袋を満たしたかった。
手元には、お湯を入れて5分待つタイプの日清ソース焼きそば。
お湯を注ぎ、タイマーをセットする。
ここまでは完璧だった。
スマホを見ながら待つ5分間は、まさに至福の前奏曲。
しかし、鳴り響くアラームの音に、私の脳はバグを起こしてしまったらしい。
漆黒の液体を、ダイレクトイン。
何を思ったのか、私は「湯切り口」を開ける前に、ソースの袋を破り、お湯がタプタプに溜まった容器へとその漆黒の液体を注ぎ込んでしまったのだ。
「あ。」
気づいた時にはもう遅い。
お湯の上で、濃厚なソースが綺麗にマーブル模様を描いている。
一瞬、思考がフリーズした。
しかし、お腹は空いている。
人間、追い詰められると奇行に走るものだ。
私は何を血迷ったか、
「今からお湯だけを、うまいこと捨てればセーフなのでは?」
などという、物理法則を無視したロジックを叩き出した。
結果は火を見るより明らかだった。
シンクへ向かって傾けられた容器から、お湯と一緒に、美味しさのすべてを孕んだソースが、文字通り「サラバ」とばかりに流れ落ちていった。
残されたのは、ほんのり茶色く染まった、味のしない、ただの「ふやけた麺」である。
冷蔵庫の絶望、そして「奴」がいた
急いでリカバリーを試みるべく、冷蔵庫を開ける。
「ソース……ない。醤油……ない。マヨネーズ……全くなし」
終わった…
調味料という調味料が、我が家の冷蔵庫から綺麗に姿を消していた。
あるのは、からし蓮根のチューブと、使いかけの紅生姜くらいだ。
万事休すか!
そう諦めかけたその時、冷蔵庫のドアポケットの最奥で、一本のボトルが神々しい光を放っていた。
「味ぽん」である。
なぜお前がここにいる。
焼きそばに味ぽん? 正気か?
しかし、背に腹は変えられない。
私は一か八か、湯気立つ麺の上に、味ぽんを円を描くように回しがけた。
いざ、実食。
恐る恐る、麺を箸で手繰り、口に運ぶ。
ズズッ……。
……。
「まさに、味ぽん香る焼きそばだ。」
それ以上でも、それ以下でもなかった。
ソースのコクはない。
焼きそば特有の、あのジャンキーなパンチもない。
ただ、口いっぱいに広がる爽やかな柑橘の酸味と、醤油の旨味。
そして、紛れもない「味ぽん」の香りが、温かい麺に乗って鼻に抜けていく。
美味いか、不美味い(まずい)かで言えば、「……悪くない」。
むしろ、湯切りを失敗した私の荒んだ心を、味ぽんの優しさがそっと包み込んでくれるような、そんな錯覚さえ覚える味だった。
人生、湯切りに失敗しても
もしあなたも人生の湯切りに失敗し、大切なソースをすべて失うような夜があったら、ぜひ冷蔵庫の奥を探してみてほしい。
そこにはきっと、あなたを裏切らない「味ぽん」が待っているはずだから。

