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26歳、小学生の算数から灯した未来。


リーマンショックの波に呑まれ、工場での仕事を失ったのは26歳の時だった。

明日が見えなくなり途方に暮れていた時、一冊の本に出会った。そこには、リーマンショックで職を失い、「30歳手前で、資格も何もない」という人の話が書かれていた。その一文は、自分の人生を見透かされたようだった。

「このままではいけない」

自分の足で生きるため、手に職をつけようと決意した。

そこで目を向けたのが電気工事の世界だった。資格と技術を身につければ、これから先も自分を支えてくれる力になると思ったからだ。

しかし、電気工事は決して簡単な道ではなかった。私は昔から勉強が苦手で、数学や物理はもちろん、電気という分野にも苦手意識があった。専門知識が必要な仕事に挑戦できるのか、不安もあった。

それでも、まずは第二種電気工事士の資格取得を目指すことにした。喫茶店でアルバイトをしながら、空いた時間を使って勉強を始めた。

だが、教科書を開くと、そこには見たこともない数式や、計算の山が広がっていた。


このままでは前に進めない。

そう思った私は、プライドを捨てて書店へ向かった。


手に取ったのは、小学生向けの算数ドリルだった。


レジへ向かう数歩が、妙に長く感じた。
26歳の自分が小学生向けのドリルを買うことに恥ずかしさもあったが、未来を変えるにはここから始めるしかなかった。

分数や小数点の計算を一つずつやり直す。「なんでこんなことも分からなかったんだろう」と、悔しさに押しつぶされそうになった夜もある。それでも鉛筆を握り続け、算数から中学数学、そして電気の専門知識へと、一段ずつ階段を上っていった。

努力は実を結び、第二種電気工事士の資格を取得。その後、電気工事会社へ就職した。
初めて自分の手で配線をつなぎ、明かりが灯った瞬間、自分の未来にも小さな灯りがともった気がした。

あれから年月が経ち、現在は機械組立の仕事に携わっている。職種は変わったが、あのとき必死に身につけた電気の知識は、制御盤を操作する場面で今も私を支える確かな技術となっている。

職種が変わっても、あの日に灯した明かりが消えることはない。

小学生向けの算数ドリルを開いた一歩は、決して遠回りではなかった。

あの日、26歳の時に開いた一冊の算数ドリル。
その小さな一歩が、暗闇だった私の未来を照らす、最初の灯りだった。

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