『ドラクエⅢ』パンツ一丁の盗賊なのに、なぜか忘れられない男カンダタという名物悪党

『ドラゴンクエストⅢ そして伝説へ…』には、バラモス、ゾーマ、オルテガ、ルビスといった伝説級の存在が並んでいます。
その中で、どう考えてもスケールだけなら小物なのに、なぜか強烈に記憶に残っている男がいます。
それが、カンダタです。
『ドラゴンクエストⅢ』はファミコン用ソフトとして1988年2月10日に発売され、フリーパーティや転職システムなどを実現したシリーズの大きな到達点とされています。
そんな壮大な冒険の序盤で、プレイヤーの前に立ちはだかるのが、世界を滅ぼす魔王ではなく、王冠泥棒の覆面男だったというのが、いかにも『ドラクエⅢ』らしいところです。
カンダタは、勇者にとって最初に“物語を動かす悪党”だった

カンダタが最初に登場するのは、ロマリア周辺のイベントです。
ロマリア王の「きんのかんむり」を盗んだ盗賊として名前が出て、勇者たちはカザーブ西、シャンパーニの塔へ向かうことになります。
攻略情報でも、シャンパーニの塔の最上階でロマリア王の王冠を盗んだカンダタとのボス戦になり、倒すことで「きんのかんむり」を入手できるとされています。
ここが面白いのは、カンダタが単なる通過点ではないことです。
アリアハンを出て、ロマリアに着いて、初めて世界が広がったと感じた直後。プレイヤーは「魔王を倒す旅」の途中で、いきなり地方の盗賊退治を任されます。
つまりカンダタは、勇者にとって初めての“地域トラブル解決案件”なのです。
世界を救う前に、まず王冠を取り返す。
このスケールの落差が、妙にリアルで楽しいですね。
見た目はネタ、戦うと普通に強い

カンダタの魅力は、何といってもビジュアルです。
覆面で筋肉質ですが、マントの下はパンツ一丁という格好。
武器は意外にも斧を持った盗賊。
冷静に考えるとかなり危ない格好なのですが、ファミコンのドット絵になると、どこかコミカルで憎めない。
バラモスやゾーマのような威厳はありません。
けれど、一度見たら忘れられないインパクトがあります。
しかも、見た目のネタ感に反して、戦闘ではしっかり強い。
1回目のカンダタ戦は、カンダタ本人に加えてカンダタこぶん3体が同時に出現します。ファミコン版ではカンダタのHPは150とされ、まずはHPの低い子分から倒すのが基本とされています。
この戦いでプレイヤーは学びます。
「ボスだけを殴っていてはダメだ」
「取り巻きから倒すべきだ」
「スクルトやラリホーなどの補助呪文が大事だ」
つまりカンダタは、序盤のネタキャラに見えて、実は『ドラクエⅢ』の戦闘の基本を教えてくれる先生でもあるのです。
“きんのかんむり”を返すか、返さないか問題

カンダタを倒すと、勇者たちは「きんのかんむり」を取り返します。
普通なら、ロマリア王に返してめでたしめでたし。
……なのですが、ここに『ドラクエⅢ』らしい遊びがあります。
攻略情報でも、きんのかんむりを返さずにストーリーを進めることができ、兜として装備することもできると紹介されています。
さらに、王に返すと王位を譲られるイベントもあります。
この「返してもいいし、返さなくてもいい」というゆるさが最高です。
勇者なのに王様の冠を借りパクできる。
魔王討伐の旅なのに、ロマリア王になれる。
でも、王様になっても冒険は進まない。
この妙な脱線感こそ、ファミコン版『ドラクエⅢ』の味です。
カンダタは、その脱線イベントの起点でもあります。
まさかの再登場。しかも今度は人さらい

カンダタは一度倒して終わりではありません。
物語が進むと、今度はバハラタ方面で再登場します。
この時のカンダタは、王冠泥棒どころではありません。
人さらいのアジトに関わる悪党として登場し、倒すことで後に「くろこしょう」入手へつながります。
くろこしょうはポルトガ王に渡すことで船を入手するための重要アイテムです。
ここがカンダタの面白いところです。
一見するとただの盗賊なのに、彼を倒さないと船入手の流れに進みにくい。
つまり、カンダタは世界の広がりをふさいでいる男なのです。
ロマリアでは王冠を盗み、バハラタでは人さらいに関わり、結果として勇者の冒険の節目に立ちはだかる。
魔王軍の幹部でもないのに、妙に重要な場所にいる。
この“ちょうど邪魔なところにいる悪党感”が、カンダタのキャラクター性を強くしています。
実は2回目のカンダタは、かなりの難敵

バハラタ方面で戦う2回目のカンダタは、1回目より明確に強くなっています。
攻略情報では、2回目のカンダタはカンダタこぶん2体と出現し、ファミコン版ではカンダタのHPが400、さらに毎ターン50ずつHPが自然回復するとされています。
これがかなり厄介です。
こちらの攻撃力が低いと、ダメージを与えているつもりでも、裏で回復されてなかなか倒せない。

ファミコン版のボス戦特有の「なんか硬い」「全然倒れない」という感覚は、こうした見えない回復仕様による部分もあります。
カンダタは、見た目はギャグ寄りなのに、システム的にはプレイヤーに“火力不足”を突きつける存在でもありました。
ファミコン版ならではの自由度もカンダタを面白くした

ファミコン版『ドラクエⅢ』では、シャンパーニの塔のイベントは必須ではないとされています。
一方、リメイク版など他機種では、後のバハラタのイベント発生条件に関わるため、シャンパーニの塔のカンダタ討伐が必要になると説明されています。
この違いも、ファミコン版らしいポイントです。
当時の『ドラクエⅢ』は、今のゲームほど親切に道順を固定しません。
「どこへ行くか」
「どの順番で進むか」
「イベントをどこまで律儀にこなすか」
その余白が大きかったですね。
だからカンダタも、単なるボスではなく、「倒してもいいし、後回しにしてもいい存在」として、プレイヤーごとの思い出に残りやすかったのです。
HD-2D版で“声”を得たカンダタ

ちなみに近年のHD-2D版『ドラゴンクエストⅢ そして伝説へ…』では、カンダタのキャストとして森川智之さんの名前が公式サイトに掲載されています。
ファミコン版では、当然ながらカンダタに声はありません。
しかし、あの覆面パンツの盗賊に森川智之さんの声が乗ると考えると、妙に豪華です。
声だけ聞くと野原ひろしが悪党キャラになった感じで、ネタキャラなのに存在感が増してますね。
これもまた、カンダタというキャラクターが長く愛されている証拠でしょう。
カンダタ初対面と戦闘シーン
森川智之さんの関連動画です。
カンダタは、“世界を救う前のドラクエらしさ”そのものだった

カンダタはラスボスではありません。
魔王軍の大幹部でもありません。
やっていることは、王冠泥棒と人さらい。物語全体から見れば、あくまで地方の悪党です。
それでも、カンダタは忘れられない。
なぜなら彼は、『ドラゴンクエストⅢ』が壮大な神話になる前の、“旅の手触り”を象徴しているからです。
知らない町に着く。
困っている人がいる。
近くの塔や洞窟に悪党がいる。
倒すと、少しだけ世界が広がる。
この積み重ねが、やがてバラモス討伐へ、そしてゾーマとの決戦へつながっていく。
カンダタは、その最初の一歩にいる男です。
パンツ一丁の盗賊。
でも、勇者の冒険をちゃんと前へ進めた男。
だからこそ、カンダタはただのネタキャラではなく、ファミコン版『ドラクエⅢ』を語るうえで外せない名物キャラクターなのです。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
