ボンゴレロッソ
私は平川談治(だんち)。40歳。
病により休職中。酒は禁止されてない。
どうにもこうにも、やる気が出ない日というのはある。
フライパンを出すのも億劫で、包丁に触れる気すら起きない。
だが、腹は減る。これはどうにもならない。
そんな日のために、私は過去の自分に仕込みをさせている。
以前、「太陽のトマト風そうめん」で使ったトマトソースがある。
あれの余りで作っちゃう。
そして、あさり。
これもまた、未来の自分を助ける食材だ。
あさりは買ってきたら、まず砂抜きをする。
塩水(だいたい3%くらい)に浸けて、暗いところに置く。新聞紙でもかぶせてやればいい。
2〜3時間、できれば半日ほど。
口を開けて、静かに「生きてるぞ」と主張してくる。
砂抜きしたあさりは、そのまま冷凍できる。
水気を軽く切って、ジップ袋に入れて冷凍庫へ。
これでいつでも使える”旨味の爆弾”が完成する。
しかも、冷凍したあさりは加熱したときに身が外れやすく、出汁も出やすい。
むしろ都合がいいくらいだ。
そしてもう一つ。水パスタ。
乾麺を水に浸けておくだけの、あのズボラ技術である。
これも事前に仕込んでおけば、火を入れる時間は一気に短縮できる。
ここまで揃えば、勝ちだ。
フライパンにオリーブオイルとにんにく(チューブでもよし)を入れて火をつける。
香りが立ったら、冷凍あさりをそのまま投入。
蓋をして、じわっと蒸し焼きにする。
あさりが口を開いたら、トマトソースを投入。
そこに水パスタを入れて、少し煮る。
パスタがちょうど良い柔らかさになったら完成だ。
塩加減はあさりがなんとかしてくれる。
こっちはただ、混ぜているだけでいい。
気づけば、ちゃんとした料理が皿の上にある。
しかも、やったことは大したことではない。
過去の自分が仕込んだストックを、今の自分が雑に使う。
それだけで、面倒くさい日は乗り切れる。
もう酒もパックの白ワインで十分。
今日もまた、その仕組みに救われている。
さあ、明日は何が食べたい?
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