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面接で「サポートとCSの違い」を答えられなかった話の答え合わせ

7年前のある日、私は都内のオフィスで面接を受けていた。

EdTech企業の中途採用、面接官は2人。一人は社長、もう一人は役員。年齢はそれぞれ40代と60代くらいだったと思う。
履歴書の話、今までの経験の話、ひと通りの自己紹介が終わったあと、社長がこう聞いた。

「カスタマーサポートとカスタマーサクセスの違いは何だと思いますか?」
——その瞬間、私は気づいた。
「あ、違うんだ」と。

それまで私は、サポートとサクセスは呼び方の違いだと思っていた。同じ仕事に新しい名前がついただけだろう、くらいの認識だった。サポートの経験があるのだから、自分はカスタマーサクセスも「経験あり」と言えるんじゃないか、と思っていた。

でも、その質問が出た瞬間、面接官の表情と空気の重さで、
「これ、ただの言葉の違いを聞いているわけじゃない」と察した。
何を答えたかは、正直あまり覚えていない。たぶん、しどろもどろだったと思う。

それから7年が経った。今ならもう少しまともに答えられる気がする。あの面接で社長に渡せたらよかった答えを、ここに書いておく。当時の自分への、少し遅い答え合わせとして。


当時、私が誤解していたこと

「サポート」と「カスタマーサクセス」。当時の私の頭の中では、ほぼ同じ箱に入っていた。
求人票で「カスタマーサクセス」という言葉を見ても、心の中では「ああ、サポートのことね」と読み替えていた。違うアウトプットが必要な仕事だとは、思っていなかった。

サポートは何年もやってきた。お客様対応の経験もある。クレームのさばき方も、温度感の読み方もそれなりに身につけてきた。

だから、自分は「経験者」だと思っていた。

——でも、本当はカスタマーサクセスは未経験だった。
そのことを、面接の質問ひとつで自覚することになった。

聞かれた瞬間に「違う」と気づいた話

不思議なもので、答えを持っていなかったのに、「違う」ということだけは聞かれた瞬間にわかった。
社長と役員、二人とも私の答えを待っている。質問は短いのに、空気がやけに重い。

「ただの呼び方の違いです」
そう答えれば、たぶんこの質問の意図を真っ向から外すことになる。それくらいは、表情でわかった。

そこで初めて、
「サポートとサクセスは、何かが本質的に違うらしい」と認識した。

頭の中では「違うらしい」と思っているのに、その違いを言葉にできない。経験もない。だから、何かそれっぽいことを言って、その質問は終わった。
面接の帰り道、電車の中で、しばらく「やっちゃったな」と思っていた。

入社してから違いが見えてきた

ありがたいことにその面接は通り、私はEdTech企業のカスタマーサクセスとして働き始めた。

入社して数ヶ月、現場で動きながら、私はようやくサポートとサクセスの違いを身体で理解していった。

1つめの違い:サポートは、起きた問題に応える仕事。サクセスは、起きる前にこちらから動く仕事

サポートの仕事は、お客様が困ったときに「助けてください」と言ってくれるところから始まる。困っているのはお客様で、こちらは応える側。
サクセスは、そうじゃない。

お客様の学習状況を、こちらが能動的に確認しにいく。「最近ログインが減っていますね」「進捗が止まっていますね」「このままだと修了が難しそうですね」と、まだ向こうが問題視していない段階で、こちらから声をかける。
そしてここが、サポート経験者がいちばん戸惑うところだった。

2つめの違い:危機感の温度差

サポートでは、危機感はクライアント側にある。困っているのは向こう。こちらは冷静に応じる側。だから、温度感を読んで合わせれば仕事になった。
サクセスは逆だ。クライアントが問題視していない段階で、こちらが先に危機感を持つ。

「まだ大丈夫だと思っていますよね?でも、このペースだと厳しいですよ」
——という話を、まだ余裕のあるお客様にしないといけない。

最初これを「不快なお節介ではないか」と感じた時期があった。問題が起きてもいないのに、なぜわざわざ電話するのか、と。
でも、サクセスはこの「適切な危機感を、こちらから持つ」ことが核なのだと、後からわかった。

問題が起きてから動くのでは、もう遅いケースが多い。学習が止まってから1ヶ月経って動いても、もう習慣は崩れている。だから、止まる前に動く。それが、サポートとは別の仕事だった。

7年経った今、あの面接でこう答えたい

もし今、あの社長にもう一度同じ質問をされたら、私はこう答えると思う。

サポートは、起きた問題を解決する仕事です。クライアントが困ったときに、こちらが応じる仕事です。

カスタマーサクセスは、効率的にクライアントの状況を判断して、必要なアクションを取る仕事です。クライアントがまだ問題視していない段階で、こちらが先に動きます。

もうひとつ、サクセスにはサポートにはない仕事があります。期待値コントロールです。クライアントに、適切な状況の理解と危機感を共有して、ゴールに対する期待値をすり合わせる。動くだけではなく、動いた結果を相手の認識とそろえるところも、サクセスの仕事だと思っています。

——たぶん30秒くらいで言える。
7年前の自分には、これがまるっと見えていなかった。「能動的に動く」という観点も、「期待値コントロール」という観点も、サポート時代にはほぼ意識していなかったから。

「期待値コントロール」が、いちばん大きな違い

私が一番強調したいのは、最後の「期待値コントロール」のところだ。

サクセスをやっていると、たまに「こちらは頑張っているのに、お客様が満足していない」という場面に出くわす。これ、よくよく分解すると、期待値がずれていただけ、ということが多い。

たとえば、決裁者は「修了率100%」を期待している。それどころか当たり前だと思っている。でも現場の学習者は、業務が忙しくて週に1回ログインするのがやっと、という温度。

このとき、こちらが頑張ってフォローを増やしても、修了率は上がりきらない。すると決裁者から「期待していたのと違う」と言われてしまう。
これを防ぐのが、期待値コントロール。

最初に「100%は前提ではないこと」「現場の現実」を共有しておく。途中で進捗を一緒に見ながら、「このペースなら、ここまでが現実的なゴールです」と認識をそろえる。

つまり、サクセスは「動く仕事」であると同時に、「相手の頭の中の景色を、現実とそろえていく仕事」でもある。
新人CSの頃の私には、ここがまったく見えていなかった。動けば動くほど評価される、と思っていた。

あの日、電車に揺られていた自分へ

——たぶん、あの面接の帰り道、「やっちゃったな……」と思っていた。

社長の質問にうまく答えられなかった。サポート経験者だと思っていた自分が、実はカスタマーサクセス未経験だったと、面接の場で気づいてしまった。少しだけ恥ずかしかったし、少しだけ悔しかった。

その自分にひと言だけ伝えられるとしたら、こう言いたい。

「サポートとサクセス、全然違ったよ。でも私の知らない世界はまだまだ広がっていて、学習の毎日だよ」

7年経っても、CSは正解が1つに決まらない仕事で、毎月のように新しい気づきがある。「サポートとサクセスの違い」も、たぶんこれからもアップデートされていく。今書いたこの答えだって、3年後にはまた違って見えるかもしれない。

それでいいと思っている。違いがアップデートされ続けることそのものが、この仕事の面白さだから。


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