EdTechのカスタマーサクセスって何するの?7年以上やって見えた全体像
はじめに
「カスタマーサクセスって、何してるの?」
この質問、今までで何度聞かれたかわかりません。
特にEdTech(教育×テクノロジー)領域のCSは、SaaS業界の中でもまだまだ情報が少ない。BtoB SaaSのCS事例は増えてきましたが、「学習」というプロダクト特有の難しさを扱った話はなかなか出てきません。
この記事では、法人向けの学習サービスでCSを7年以上やってきた私が、EdTechのCSの全体像をお伝えします。
「CSに興味があるけど、EdTechのCSって具体的に何をするの?」という方や、「自分のCS経験がEdTechでも活きるのか知りたい」という方に向けて書きました。
EdTechのCSが他のSaaS CSと決定的に違うこと
まず、EdTechのCSには他のSaaS領域にはない特徴があります。
それは、「プロダクトを導入しただけでは価値が生まれない」度合いが極端に高いということです。
たとえば、経費精算SaaSなら導入すれば業務効率は上がります。でも学習サービスはどうか。導入しても、学習者が学ばなければ何の価値も生まれません。
つまりEdTechのCSは、「契約先の企業」だけでなく「実際に学ぶ人」の行動変容まで設計しなければならないのです。これが最大の特徴であり、最大の難しさです。
EdTech CSの主な業務領域
私がこれまでで担ってきた業務は、大きく3つに分けられます。
1. 法人クライアントの導入・活用支援
法人向けの学習サービスでは、契約してくれた企業の担当者(人事や研修担当)がまず最初のカウンターパートになります。
ここでやることは、一般的なBtoB SaaSのオンボーディングに近いです。導入の目的をすり合わせ、社内展開のスケジュールを一緒に引き、運用が軌道に乗るまで伴走します。
ただし、EdTechならではの難しさがあります。クライアントの担当者が成功を感じるポイントが「ログイン率」や「修了率」など、自分ではコントロールしにくい指標に依存することです。
だからこそ、導入時に「何をもって成功とするか」の合意形成がとても重要になります。
2. 学習データの分析・可視化
ここが私の一番の強みであり、EdTech CSの核だと思っています。
学習サービスには膨大なデータがあります。誰がいつログインしたか、どこまで進んだか、どこで離脱したか。このデータを分析して「何が起きているか」を可視化し、次のアクションにつなげるのがCSの仕事です。
私はSQLを使って、自分でデータを取りに行くスタイルでやってきました。たとえば:
修了率の推移を週次で可視化して、クライアントへのレポートに使う
学習ステータス(未着手/進行中/完了/離脱)を自動で付与し、フォロー対象を絞り込む
10日・30日の未学習者をリストアップし、アラートを自動化する
CSプラットフォームがなくても、SQLとCRMがあれば相当なことができます。このあたりは今後の記事で具体的に書いていきます。
3. 解約防止・リテンション施策
EdTechの解約には独特のパターンがあります。
一番多いのは、**「導入したけど使われなかった」**パターン。つまり「No Start」です。学習者がそもそもログインしない、始めたけど途中で止まる。その状態が続くと、契約更新時に「効果がなかった」と判断されて解約になります。
このパターンを防ぐために重要なのは、解約の兆候をいかに早く捉えるかです。
私の場合、ヘルススコアを設計して「Churn」と「No Start」を分けて可視化しました。「使っているけど不満がある」状態と「そもそも使われていない」状態では、打つべき手がまったく違うからです。
「先生」とCSチームを作るということ
EdTechの会社には、教育業界出身のメンバーが多くいます。私がマネジメントしてきたチームでも、元教員や教育系NPO出身のメンバーがCSチームに入ってくることがありました。
彼らは「学習者のために」という気持ちがとても強い。それは大きな強みです。一方で、CS的な数字の意識を持ってもらうことには工夫が必要でした。
「修了率が何%だからこういうアクションをする」という思考回路は、教育者にとって直感的ではありません。でもCSとして成果を出すには、感覚だけでなくデータに基づいた判断が欠かせない。
この「教育マインド × 数字で動くCS」のバランスを取ることが、EdTech CSのチームづくりで一番面白く、一番難しいところだと感じています。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートは何が違うのか
CSの仕事を説明するとき、避けて通れないのがこの問いです。社内でも社外でも「サポートと何が違うの?」と必ず聞かれます。
私はいつもこう答えています。
カスタマーサポートは、起きた問題を解決する仕事。カスタマーサクセスは、問題が起きるのを防ぐ仕事。
たとえば、学習者から「ログインできない」と問い合わせが来たら、それを解決するのはサポートの仕事です。一方で、「この企業の学習者は10日間ログインしていない。このままだと契約更新時に解約リスクが高い。今のうちにフォローしよう」と先回りするのがCSの仕事です。
サポートは「受動的」、サクセスは「能動的」。サポートは「問い合わせ起点」、サクセスは「データ起点」。この違いは、実際にやってみると明確ですが、外から見ると非常にわかりにくい。
なぜわかりにくいかというと、CSがうまく機能しているほど「何も起きない」からです。問題が起きなかった事実は目に見えない。だからこそCSの価値を社内に伝えるのが難しくなります。
社内でCSの価値をどう伝えるか
「問題を防ぐ仕事」の価値を証明するのは簡単ではありません。
CS経験のないマネジメント層に対して「まだ起きていない問題を防ぐこと」の重要性を伝えるのは骨が折れます。
直接売上を生む部門ではないため、意見が軽視されやすいという現実もあります。でも、クライアントと一番長い付き合いをするのはCSです。営業がニーズを聞き、CSが「できること」を提案していく。その循環がうまく回ったとき、CS部門の存在価値は明確になります。
これからこのnoteで書いていくこと
このnoteでは、EdTech領域のCSで実際に使ってきたノウハウを発信していきます。
たとえば:
SQLで作るオンボーディングの自動フォローアップ設計
ヘルススコアの設計と運用の実例
CS未経験メンバーに「数字で語る習慣」を身につけてもらう方法
CSの価値を経営層に伝えるための数字の見せ方
実務で試して、実際に効果があったものだけを書きます。
EdTechに限らず、「学習」や「行動変容」を扱うプロダクトのCS担当者にとって、何か一つでも持ち帰れるものがあればうれしいです。
フォローしていただけると、更新が届きます。よろしくお願いします。
だん|データで動くCS EdTech・Travel Tech領域でCS歴7年以上。SQLとCRMを武器に、オンボーディング設計・チャーン防止・ヘルススコア運用を実践中。
