中国の飲酒文化に鍛えられた
昔は酒が嫌いだった。
父は完全な下戸。母は酒が強い。そんな二人の間に生まれた私は、なんとも中途半端な体質になった。
元々、ほぼ下戸だった。大学時代でもビール1杯を半分飲めば顔は真っ赤。2杯目にはもう酔っぱらっていた。しかも私の場合、酔うと頭が痛くなるか、気持ち悪くなって吐くか、眠くなるか。全然楽しくない。だから酒は好きになれなかったし、大学時代の飲み会にもほとんど参加しなくなった。
社会人になった20代も基本は同じだった。飲まないといけない機会は増えたので仕方なく飲む。でも、待っているのは頭痛と吐き気。そんな中で、たまに10回に1回ぐらい、「なんか気持ちいいな」と思える感覚を知るようになった。
酒に対する印象が大きく変わったのは、中国に来てからだった。
中国は日本以上に酒を飲み、飲ませる文化が残っているように感じる。会社の飲み会や会食ではアルコールはつきもの。飲める人はひたすら飲む。
前職の社内飲み会で、私は洗礼を受けた。青島ビールを小さいグラスに注ぎ、まずは全員で乾杯。その後は食事をしながら、一人一人と乾杯をしていく。当時、新人だった私は、その場にいた15人ぐらいの同僚全員と乾杯した記憶がある。しかも小さいグラスなので一気。もちろん、それで終わりではない。一人1回ではなく、酒の強い人とは何度でも乾杯する。
今思えば、完全に新人潰しである。
私は言われるがまま飲み続け、吐きまくり、最後は倒れるように眠った。それが最初の洗礼だった。
そこからは毎月のように同僚との飲み会やお客さんとの会食が続いた。ビールだけでなく、中国名物の白酒(バイジュ)、紹興酒、ハイボール、焼酎、日本酒など、いろんな酒を飲み、そして吐いた。
余談だが、私は二日酔いになることが少なかった。多分、限界まで飲むと先に吐いてしまい、そのまま眠るからだと思う。次の日は体が怠くても、動けないほどではなかった。
でも1年もすると、自分の許容量が分かるようになった。逃げ方も覚える。泥酔するまで飲むことも少なくなった。
そして、酒を飲むことが人間関係を円滑にするものだと、中国に来てから感じるようになった。普段なら言えないことを話せたり、相手の本音が見えたり、多少の失敗も「酒のせい」で笑って済まされたりする。もちろん、それが本当にいいことなのかは分からない。
でも、酒は便利だ。人と人との距離を近づける力がある。
ただ、その副作用が強い。飲んでいる時は楽しい。でも次の日は体が重い。睡眠も崩れる。年齢を重ねるほど、その代償も大きくなっている気がする。
だから最近は思う。酒は薬みたいなものなのかもしれない。うまく使えば助けてくれる。でも、使い方を間違えると、自分の体力や時間を前借りしているだけなのかもしれない。
そして毎回、飲み過ぎた次の日になると思う。適量を、適度に、楽しく飲めたら一番いいのにな、と。
でも、それができる人ばかりなら、「飲み過ぎた」「記憶がない」「もう二度と飲まない」なんて言葉は存在しないのだろう。
結局、今回もまた同じことを思いながら、しばらくすると普通に酒を飲んでいるのだろうな。
