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一杯の記録|第80話 菊姫 山廃純米 無濾過生原酒(石川・白山)

一杯の酒から、その土地をたどる。

石川・白山。
霊峰の清冽な水と、
加賀百万石の矜持が息づく土地。

菊姫が描くのは、
時代に流されることのない、
圧倒的な、不変の輪郭。

流行が、
どんなに軽やかさを求めても、
この蔵は、
ただ、重厚であることを恐れない。

磨ききらない、七十パーセント。
その数字に込められたのは、
米のすべてを、
この一滴に封じ込めるという、覚悟だ。

さて、本題。

注がれた液体は、淡い黄金。
それは、
時間が、重力を持って沈殿したような輝き。

立ち香は、力強い。
熟した穀物と、
どこか、冬の土の匂いが混じり合う。

口に含むと、
驚くほどの、質量。

甘み、酸味、旨みが、
渾然一体となって、
押し寄せるのではない。

そこに、「在る」のだ。

山廃がもたらす、
深い、奥行きのある酸。
それは、
書き換えられることのない、
絶対的な、一本の太い線。

削ぎ落とし、溶け、書き換わってきた旅。
その果てに辿り着いたのは、
揺らぐことのない、
巨岩のような、この豊かさ。

——   ここに、還る。

そこに在る輪郭。
この酒は、そんな一杯として記録しておく。

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