一杯の記録|第116話 上喜元 純米吟醸 仕込第41号 無濾過生原酒 「渾身」(山形・酒田)
一杯の酒から、その土地をたどる。
最上川を渡り、酒田へ。
山居倉庫、白壁。
冬を背負ったケヤキ並木。
まだ冷たさを帯びた風が、
木々の間を、静かに抜けてゆく。
酒田酒造、上喜元。
「第41号」
その無機質な数字が、かえって凄まじい熱量を放つ。

さて、本題。
抜栓。
香は、端正。
華美を削ぎ落とした本質が、鼻腔をなでる。
注ぐ。
落ち着いた、滴。
口に、含む。
完成。
豪胆さと、緻密さ。
一滴の中で交わされる、静かな握手。
迸る旨み。
生原酒ゆえの、瑞々しき湿り気。
抜ける。
一瞬の閃光。
鋭利でありながら、
柔らかな温もりを残して消える。
凪いでいる。
一切の言葉を拒むような、
圧倒的な充足。
語らずとも、すべては伝わる。
この沈黙こそが、最上の贅沢。
—— 芯。
この一杯は、
ただ真っ直ぐに自分を研ぎ澄ますための音。
そんな一杯として、ここに記録しておく。
