一杯の記録|第111話 聖 山田錦50 純米吟醸 無濾過生(群馬・渋川)
一杯の酒から、その土地をたどる。
一が、三つ。
結ばれた光が、ゆっくりと水へ還る。
風は、川をなぞる。
けれど、冷たくはない。
群馬、渋川。
利根の流れ。赤城の稜線。
夕暮れ。
水を張った田が、空を映している。
茜色。
揺れるたび、
世界の輪郭が、ほどけていく。
聖酒造。
古い流れのなかに、新しい火を灯す。

さて、本題。
抜栓。
微かな、目覚めの音。
香りは、瑞々しい。
白葡萄。夜へ向かう果実。
口に、含む。
走る。
無濾過生の、鮮やかな熱。
弾ける。
繊細なガスが、静寂を揺らす。
ひらく。
山田錦の品格。瑞々しい輪郭。
甘みは、やわらかい。
けれど、決して濁らない。
やがて、
夕焼けが夜へ沈むように、静かに引く。
残るのは、澄んだ熱。
空白だった場所に、新しい風が通る。
—— ひらく。
この一杯は、
静かに次の景色へ向かうための灯。
そんな一杯として、ここに記録しておく。
