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一杯の記録|第96話 玉川 雑酒 山廃 無濾過生原酒 白ラベル 2017BY (京都・久美浜)

一杯の酒から、その土地をたどる。

眩い光のあとに訪れる、静かな闇。
それは、すべてを隠すためではなく、慈しむための深淵。

騒がしい季節が、遠ざかっていく。

京都、久美浜。
冬の海が鳴り、時の澱が静かに積み重なる。
蔵で眠り続けた、2017BYという歳月。

八年という時間が、鋭利だった若さを、
重厚な思索へと変えていく。

急がない。
ただ、熟成という沈黙に身を委ねる。

さて、本題。

立ち香は、もはや酒の域を超えている。
干し葡萄、あるいは古い書庫の匂い。
記憶の奥底に触れる、重厚なプロローグ。

口に含む。
もはや、重力そのもの。

それは、深淵。

山廃の酸は、時間の海に磨かれ、
圧倒的な旨みのうねりとなって、舌の上で重なる。

「雑酒」という名の自由。
枠組みを笑い飛ばすような、規格外の密度。
この複雑さこそが、生きてきた証。

急ぐことをやめ、止まっていた時間に、深く、潜る。

やがて、
揺るぎない充足感だけを残し、喉の奥へと溶けていく。

あとに残るのは、確信。
積み重ねてきた日々は、決して裏切らない。

——   刻む。

この一杯は、
時の重みを愛で、自分を肯定するための深淵。
そんな一杯として、ここに記録しておく。

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