見出し画像

一杯の記録|第55話 七水 純米吟醸55 五百万石 生酒(栃木・宇都宮)

一杯の酒から、その土地をたどる。

栃木・宇都宮。
日光連山からの水が、
この町の地下を静かに流れている。

虎屋本店の敷地には、
名水と称えられた「虹の井」がある。

水はやわらかい。
けれど、芯は揺るがない。

その水で、
米の旨みをまっすぐ引き出す。

飾らない。
無理をさせない。

酒はここで、
静かに形を整えていく。


さて、本題。

立ち香は、穏やか。
りんごやメロンを思わせる、
やわらかな果実の気配。

口に含むと、
かすかなガスが舌先に触れる。

瑞々しい。

澄んだ旨みが、
すっと広がる。

軽いのではない。
濁らない。


透明な甘みの奥に、
五百万石の潔い芯が、静かに立っている。

後半、
鮮やかに辛口へ。

余計なものを残さず、
きれいに切れる。

軽やかさと、
奥にある厚み。

その二つが、
無理なく並んでいる。 

透明な旨み。

この一杯は、
そんな記憶として、ここに記録しておく。

いいなと思ったら応援しよう!