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koreatterunokana
一杯の記録|第51話 花巴 山廃純米吟醸 うすにごり 無濾過生原酒(奈良・吉野)
一杯の酒から、その土地をたどる。
奈良・吉野。
山に囲まれ、湿り気を含んだ空気が流れる土地。
古くから、発酵と祈りが重なってきた場所。
花巴を醸す美吉野醸造は、
速さを選ばない。
山廃という、菌に委ねる時間のかかる仕込み。
酵母を添加せず、その場の空気を醸す。
過度に整えない。
澄ませることより、
発酵の気配を残す。
削りすぎない。
作り込みすぎない。
酒はここで、
自然の呼吸と同じ速度で進んでいく。

さて、本題。
グラスの中で、やわらかく揺れる。
立ち上がりに、ほのかな乳酸。
静かな酸の気配。
含むと、かすかな弾み。
活きた空気が、舌先を打つ。
酸が先に立つ。
柑橘の皮を思わせる、ほろ苦い輪郭。
甘みは控えめ。
けれど、澱の甘みが広がらず、寄り添うだけ。
やがて、終いに苦み。
乾いた余韻が、低く続く。
酸が、最後まで引かない。
低く響く酸。
この一杯は、
そんな記憶として記しておく。
